高校教員だった人がつぶやきます

大学院で研究に挫折し、予備校講師を経て高校教員になりました。昨今、学校批判が高まり、職…

高校教員だった人がつぶやきます

大学院で研究に挫折し、予備校講師を経て高校教員になりました。昨今、学校批判が高まり、職員室は多忙を極め、教員希望者が減っています。それはいつから、どのように始まったのか…を個人的な体験から書き進めます。少し前、2度目の転職をして教員は辞めました。 #学力崩壊

マガジン

  • 講義型ネイティブの授業改善(生徒さんが主役の授業へ)

    40歳を過ぎたころ、進学校における講義型授業に疑問と限界を感じました。ALや探究という言葉が出始めたこともあり、生徒さんが主役の授業への移行を試みました。そんな試行錯誤の日々の記録です。

  • 突然吹奏楽部の顧問となる

    指揮の経験のない、和音もわからない教員が、ある日突然吹奏楽部の顧問になった時のいろいろから、現在の「部活動顧問問題」の原点を考えたいと思います。

  • 多数決は正しい結論を導くのか

    多数決について疑問を示すと多くの生徒さんから反発がきました。これは、先入観による思考停止ではないでしょうか。

  • 都内私立高校出身者が、地方の公立高校の教員になりました

    東京⇔地方、私立⇔公立…という、自分が育った環境と全く異なる環境で先生になりました。そこで見聞きしたのは…。

  • 逆説が理解できない高校生

    国語力・読解力の低下…と言われますが、その一つの側面について考えてみました。

最近の記事

閑話休題(古文は役に立つのか)

 中堅クラスの進学校に勤務すると生徒さんから必ず頂く質問。  ちなみに、職員室内でもカリキュラム編成で「そんなに時間必要?」と教務あたりから言われたりもする不憫な教科。  「古文では食えない」という主張には、「古文で食ってます」と返します。その生徒さんの机上には、大学受験用の古文の参考書があったりするわけで、「古文を稼ぎにする、ビジネスにする」という発想が必要ではないかな…と返します。それは「古文」だけでなく、数学や英語も、能力も特技も同じ。この構文をたとえば「野球を稼ぎに

    • 探究学習のマインド形成 5(キーワードは苦悩)

       探究学習とは、生徒さん主役の学びの可視化でもあります。  そのためには、今まで生徒さんの指導・管理・授業の主役であった教員側に大きな価値観の変更、そして自己の再構築が求められます。これが、教員側のマインド形成ということ。  では、生徒さんに、自己が学びの主役であるというマインド、さらにいえば「自走」を可能にするマインドはということになります。 ◆国語の授業から考えてみる  キーワードは「苦悩」です。  現代文の小説、古典の物語の主人公・登場人物の心境にフォーカスしてみまし

      • 探究学習のマインド形成 4

         探究学習の成立には、私自身のあり方の確立が必要…ということに気づきました。確かに…学生時代のゼミで教授は具体的に何をするわけでもないのですが、教授によって「行き詰るゼミ」「深まるゼミ」にわかれます。  「あり方」なんですね。 ◆探究が討議・創造までは進まなくても…  私の力量では書籍や実践で示されているような学びには到達できないことがわかってきました。生徒の問題ではないのです。教員側の問題。  では、今の力量ならどこまでいけるかです。  いろいろ考えてみると「集団知の形成

        • 探究学習のマインド形成 3

           主体的に行動するためには動機が必要です。  生徒主役の学びの実践について教員側には動機があります。しかし、生徒さんにはありません。「先生に言われてやる生徒主役の学び」では…。 ◆参考にしたもの  小林先生、西川先生、本間先生の本を読んだり、セミナーに参加したりしました。ワークショップデザインやファシリテーションのあり方を学び、生徒主役の学びの概念をつかみ、その目的とするところの理解ですね。  また、現場ではどのように実践しているかの情報も集めました。  いろいろ調べている

        閑話休題(古文は役に立つのか)

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        • 講義型ネイティブの授業改善(生徒さんが主役の授業へ)
          7本
        • 突然吹奏楽部の顧問となる
          22本
        • 多数決は正しい結論を導くのか
          5本
        • 都内私立高校出身者が、地方の公立高校の教員になりました
          5本
        • 逆説が理解できない高校生
          5本
        • 荒れる学校で過ごした1年のこと
          14本

        記事

          探究学習のマインド形成 2

           「生徒が主役の学び」は、良心的な先生や学校環境の中では意識されていました。しかし現実には「先生が何でもする、何でもしろ、教育のプロだろ!」というのがサイレントな価値観。時期的にはゆとり教育が始まり、総合学習が設置され、アクティブラーニングという言葉が遠くから聞こえてきた頃。  それでも、大学入試の小論文指導で「生徒主役の場」を形成することで面白いように合格するようになると、これを「教室」でもと思うようになります。 ◆最初はうまくいく  当時の私は高校3年生を連続して担当し

          探究学習のマインド形成 2

          探究学習のマインド形成 1 

           講義型の授業から生徒さん主役の授業ということを言語化できたのは、医療系希望者の小論文指導からです。正確に言うと、医学部の入試問題に内在する「医療の変化」を知ったこと。  医療に関する従来型のイメージは「白い巨塔(山崎豊子)」。教授が権勢をふるい、医師も患者も教授には逆らえず、その指示に従うのみ。患者は自分の正確な病名も治療法も薬も知らずに…というもの。  そこから、告知、インフォームド・コンセント、QOLという概念が入ってきます。痴呆症は認知症と名称が変わり、治療方針も「医

          探究学習のマインド形成 1 

          探究学習の必要性を確信した個人的できごと その3

           今日のキーワードは「心の痛み」です。  評論でも小説でも、古文でも漢文でも、社会課題でも地域課題でも、学びの対象に内在する「心の痛み」を読み取ることを意識しました。 ◆生徒さんの考えは「道徳的二分法」に帰着することが多い  たとえば、「舞姫」(森鴎外)を読むと、エリスへの同情から太田豊太郎への批判で頭がいっぱいになってしまう生徒さんがいます。そして、舞姫という作品の感想や学びも、そこで終始してしまうこともあります。  これは、「羅生門」(芥川龍之介)でも、「こころ」(夏目

          探究学習の必要性を確信した個人的できごと その3

          探究学習の必要性を確信した個人的できごと その2

           平成7年頃「学力崩壊」と言われるできごとが高校で起きました。  学力底辺校では、高校入試で「数学0点、国語0点」の受験生が出てきて、合格するようになりました。進学校では、今までは合格して当たり前の地元国公立大学への合格者が0名になりました。  このような状況において、底辺校では「学力が低い生徒にあわせた授業+ゲタを履かせやすい成績の出し方」によって、留年・退学を防止し、とにかく卒業まで手厚く指導することが求められました。  進学校では、「勉強は生徒がするもの」という理念を捨

          探究学習の必要性を確信した個人的できごと その2

          探究学習の必要性を確信した出来事 その1

           教わる立場でも、教える立場でも、「講義型授業」でした。  つまり、私の思考・授業は「講義型ネイティブ」なわけです。  大学のゼミや、予備校・教員になってからの小論文指導は「探究型・対話型」になりますが、これは私にとっては第二言語と言えるでしょう。  また、トップ進学校になると、授業形式は講義型でも、生徒さんが勝手に探究的発想で考察を進めてくれるということもありました。40人の一斉授業でも、大学の少人数的ゼミの空気感になるんですね。そして、ゼミ的・探究的・対話的空気感の強い授

          探究学習の必要性を確信した出来事 その1

          講義型ネイティブの授業改善(評価のこと、ルーブリックとの出会い)

           平成の最初の頃のことです。  教員になって、先輩の先生から「成績の出し方」を学びました。 ・点数(100点満点)で出すこと。 ・それを、一定の枠組みで「5段階評定」にすること。 ・100点満点の内訳は「考査点・平常点」であること。 ・平常点の内訳は「提出物、授業時の小テスト」「授業中の態度や出席状況」などであること。  ここで腑に落ちなかったのは「授業中の態度・出席点」です。これは、教員側の主観になります。私には「授業中の態度」を客観的に数値化する方法が思い浮かびませんでし

          講義型ネイティブの授業改善(評価のこと、ルーブリックとの出会い)

          講義型ネイティブの授業改善(論点の設定)

          ◆今回の前提の整理 ①人口増の時代の価値観  「根拠はないが、結論はある」  「根拠はなくても、未来に希望を持つことができた」 ②人口減の時代の価値観  「根拠はあるが、結論はない」  「社会課題を解決しなければ、未来に幸福はない」  昭和の高度経済成長時代は、「根拠はなくても希望を持てば幸福になれる」という価値観があったようです。この延長に「よい大学に行って、よい就職をして…」という言葉もあるのかもしれません。  すでに現在進行形になっている人口減少・低成長時代は、「根拠

          講義型ネイティブの授業改善(論点の設定)

          講義型ネイティブの授業改善(前提の整理ということ)

           今となっては、生徒主体の授業構築が市民権を得るようになりましたが、私が授業改善に取り組み始めた頃、先生方は「アクティブラーニングって何?」、生徒さんは「予備校みたいに大学進学のための効率的な授業をしてください」が主流でした。そういうわけで、「前提を共有すること」がとても大事…。 ◆「正解がない」を整理する ①人口増加時代、工業社会の価値観  ・間違いはないけど、正解はある。 ②人口減少時代・脱工業社会の価値観  ・正解はないけれど、間違いはある。  少し前のセンター試験

          講義型ネイティブの授業改善(前提の整理ということ)

          講義型ネイティブの授業改善(生徒さんの意識を確認する) 

           十年以上前ですが、講義型授業を少しずつ改めていきました。  生徒主体ということですね。アクティブラーニングとかそういう言葉が少し出始めたころ。  個人的には、講義型の限界を感じたことが大きいです。時代の変化ですね。そして、義務教育の方が「教育方法での進化」が早く、そういうことに自分が追い付いていないという気づきがありました。  とはいえ、教える仕事を予備校で開始し、講義型の授業を突き詰めてきた身としては、なかなかしんどく、迷いと試行錯誤の日々でした。 ◆それっぽい形になっ

          講義型ネイティブの授業改善(生徒さんの意識を確認する) 

          講義型ネイティブの授業改善(少し前進編)

           今では当たり前のことでも、少し前は「当たり前ではない」。  系統的な知識ではなく、場当たり的な勉強とアイディアに飛びついただけで、振り返ると「アクティブ型」ではまったくない授業をしていました。ただ、アクティブラーニングは手法・手段であって、そもそもの目的が明確でないと悪影響の方が…。というわけで、そもそもの目的を明確にしつつ、「自分のできる範囲・生徒さんが理解できる範囲」での実践となります。 ◆個人~ペア~グループ~チーム  要するに段階を経て「知識の定着×思考の深化」を

          講義型ネイティブの授業改善(少し前進編)

          講義型ネイティブの授業改善(きっかけ編)

           「アクティブラーニング」という言葉が出てきた頃。  その言葉に影響を受けたわけではありません。講義型の限界を感じるというか、疑問を感じる場面が増えてきたのです。生徒さんが主役になるようにということ。教員である私より、生徒さんの方が賢く、倫理的で、未来への可能性を無限に秘めています。講義型では、そういう能力をつぶす可能性があるということ。というわけで、見様見真似で始めましたがうまくいきません。さてどうするか…です。 ◆きっかけは「事実の確認」から  国語の授業は、「今日の授

          講義型ネイティブの授業改善(きっかけ編)

          講義型ネイティブ教員の授業改善(失敗編) 

           生まれも育ちも「講義型授業世代」です。  これが「生徒の主体性を引き出す」「生徒が主役」「対話で考察を深める」に挑戦。舞台は、県庁所在地の中堅進学校。学年8クラスの大規模校で、国公立現役合格100名が目標という感じ。つまり、「国公立2次の記述」がポイント。しかし、センター対策で時間がかかり、2次対策が追い付かない。このあたりが、「主体性・対話・書く」ことについて、「教員×生徒」に共通する動機になります。  しかし、「下手なファシリテーションで進める授業」より、「がっつり講義

          講義型ネイティブ教員の授業改善(失敗編)