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講義型ネイティブの授業改善(評価のこと、ルーブリックとの出会い)

 平成の最初の頃のことです。
 教員になって、先輩の先生から「成績の出し方」を学びました。
・点数(100点満点)で出すこと。
・それを、一定の枠組みで「5段階評定」にすること。
・100点満点の内訳は「考査点・平常点」であること。
・平常点の内訳は「提出物、授業時の小テスト」「授業中の態度や出席状況」などであること。

 ここで腑に落ちなかったのは「授業中の態度・出席点」です。これは、教員側の主観になります。私には「授業中の態度」を客観的に数値化する方法が思い浮かびませんでした。

客観的な数字で評価を出すことを生徒さんに提案する
 最初の授業で、生徒さんに成績の出し方を説明しました。
 初任校は学力的にはかなり低めの高校です。赤点は40点未満。
 「考査点60%+平常点40%」という割合でした。
 私は、授業時に漢字・ことわざの小テスト実施することを告げました。
 担当は高校3年生、ほとんどの生徒さんは就職する学校です。就職試験には漢字・ことわざ・四字熟語などを含む一般教養や作文があります。その対策として実施する。テキストはすでに配布されているテキストを活用し、漢字検定の対策も兼ねるということを告げました。
①小テストは「漢字の読み書き(書き取り)10問」「ことわざ・四字熟語10問(選択肢)」で20点満点。
②この平均を2倍した40点満点を平常点とする。
③平常点(40点満点)と、定期考査(100点満点を60%に圧縮した数値)とを足したものが「あなた成績」になる。

 この方法だと、私が出す成績と生徒さんが出す成績とが一致するはずです。極論すれば、授業中ずっと寝ていても、授業をサボっても減点にはならない。ただし、定期考査と小テストの点数を足して40点に達しない時は無条件降伏。
 学校不信・教員不信を強く持つ生徒さんが多い中、「完全客観評価・結果がすべて」という方向性を明示したことになります。

◆ノート提出の評価は?
 私は「ノート提出は不要」という考えなのですが、生徒さんたちには「ノートを取ることを評価して欲しい」という考えや、先生方には「ノート提出をさせないと授業参加しない」という考えもありました。
 そこで以下のような提案をしました。
①ノート提出は任意とする
②提出は、現代文の考査が終わった日
③直接成績評価にはつながらないが、ノート提出をした生徒さんには以下のような場面で配慮(加点)を行う。

・5段階評定に直す際、「80点以上が5」という基準があったとする。
・Aさんの1学期の点数が「79点」だとする。79点だと「4」になる。
・その時、任意のノート提出をしている場合、これを「ノート点」として加算し、評定を「5」にする。この配慮は「39点」の場合も有効とする。
 この点についても、生徒さんから合意を得ました。現実的には、ほとんどの生徒さんがノートを提出してきました。他の科目より提出率が高かったです。

読書感想文の評価をどうするか
 当時はまだ3学期制でした。問題は「夏休みの課題としての読書感想文の評価をどうするか」です。ノートと同じように「任意提出」としたかったのですが、これは「図書部主催の全校行事(読書感想文コンクール)」ですから、私の判断で任意にはできません。また、就職試験の面接で「最近読んだ本は?」という問いがあったという事情もあります。
 そこで、読書感想文を「2学期の平常点」に加えることにしました。
①提出した読書感想文は5段階で評価する
②「①」の評価を2倍した10点を、2学期の平常点に加える
③つまり、2学期の平常点のみ「小テスト30点+感想文10点」とする

 そして、読書感想文そのものの評価基準を夏休み前に明示しました。
 基本は「提出日に提出したものは4」です。これを基準として、以下のように点数化すると提示しました。
5 提出日に提出しており、クラス代表として図書部に推薦できる
4 提出日に提出しており、書式・文字数などの条件を満たしている
3 提出が遅れた、書式・字数などの条件を満たしていない
2 「3」より提出が遅い、条件を満たしていない
1 「2」より提出が遅い、条件を満たしていない
0 提出がない、内容に引用・盗用・代筆などの不正がある

 要するに、普通に出せば4点(倍にして8点)です。
 一方で、「不正行為」は厳しくとりました。いわゆる「あらすじ書いて面白かった」だと、感想文のほとんどが「引用」なわけで、これは「学問的不正行為」としました。盗用・代筆も同じです。友達と同じ本を読んで、同じ感想を持ったという主張も認めないと明言しました。読書感想文には「自分の考え、オリジナリティー」があることが評価の前提です。もし、同じ本を読んで、同じ感想だったとしても、それを掘り下げる・比較する・共通点や差異点を見つけることで「自分の考え」を示さないと、「4」という評価にはならないと明言しました。

この体験から学んだこと
 客観性の証明の一つに「再現性」があります。
 教員と生徒さんとが、それぞれ出した成績が一致することを再現性というのはやや強引かもしれませんが、学校不信・教員不信の強い生徒さんには納得度が高かったようです(職員室的は不評でした)。
 また、レポートや読書感想文など「主観性の高い課題」について、事前に「評価基準を明示すること」の有効性に気づきました。「評価基準に沿って書いてくる生徒さん」が増えたということです。先ほどの評価基準は、やがて「客観的根拠が明示されている」「誤字脱字がない」など文章の書き方のガイドへと進化していきました。
 また、担任になった際は、「教室清掃の評価基準」を作成し、項目を満たした段階で清掃終了としました。
 そんなことを続けていくうちに、「ルーブリック」という概念に出会います。
                          つづく…

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