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探究学習のマインド形成 7(理論と現実)

 経験と勘ではなく、理論に基づいたデザインが必要でした。
 そこで、ICEモデルに基づいて授業デザインをしてみました。
 これも最初はうまく進むのですが、少しずつ崩壊していきます。
 ただし、生徒さんの動きを観察する余裕が私にありました。
 観察した結果、「こちらの授業デザイン通りの動きではないが、生徒さんの動きには一定の法則がある」ということに気づけました。生徒さんたちの動きは、当時の私の知識の中ではU理論に近いものという印象でした。
 
◆崩壊の始まりを読み取る
 生徒さんたちの様子を見ると、テーマの分析や理解までは順調です。
 崩壊の始まりは「視点を変えてみようとするタイミング」「テーマを自分ごととして捉え直そうとするタイミング」「全体が解決に向かって前向きに進もうとしたタイミング」で発生します。
 これをU理論の言葉にあてはめると「自己開示への恐怖」「未知の世界に進む恐怖」になるでしょうか。この恐怖から回避するために「テーマの分析・理解ができたら、既存の知識と結び付けて解決策とする発言」が出てきます。この発言によって集団全体の思考が停止するのです。

先入観に気づく、既成概念を手放すことが必要
 「既存の知識を結びつけて解決とする段階」にいる生徒さんを、「未知の領域に進めることが必要」という考えました。
 となると、「問いを立てる」「仮説・論点を設定する」というのが定番の進め方になります。ただ、その前に「先入観に気づくこと」が必要と考えました。思い込みからの解放ですね。
 先入観を言語化するワークをやってみると、結構面白かったです。

二項対立的な整理ができない生徒たちに
 
評論文の多くは「筆者の主張」「一般論」の二項対立構造になっています。入試現代文だと、そういう箇所を切り取ってくることが多いですね。
 一般論とは「既知のもの」です。筆者の主張とは「未知のもの」です。
 現代文が苦手な生徒さんは「筆者の主張=未知のもの」が理解できない、読み取れないということのようです。もう少し踏み込んで言うと「未知の主張」に対する恐怖・警戒・猜疑・反発という感情が無意識に立ち上がると言ってもよいかもしれません。その結果、こんなパターンが生じます。
・理解・共感できる「一般論」を筆者の主張と思い込んでしまう。
 (認識の混乱)
・「筆者の主張として最も適当なものを一つ選べ」という問いで、筆者の主張を述べた正解の選択肢を見極めることはできるが、その主張に感情的な反発があるため正解として選択することができなし。
 (感情による理性の喪失)
 
認識や感情の混乱による失点という仮説を生徒さんに提示する
 つまり、未知の発想を受け容れること、他者の思考を理解することなくして「最も適切な選択肢を選ぶこと」も「小論文で求められる独自性の高い思考を示すこと」もできないということです。
 こういう言い方はしたくないのですが、既知の世界に留まるだけではセンターテストの得点も伸びないということですね。指定校推薦だって小論文が0点なら不合格になります。
 ここに「コピー」と「クリエイト」との境界線があるのではないか。
 「知ること」と「考えること」との違いも同じ。
 「自分の頭で考える=主体性」とは、未知の世界の扉を叩くこと、自己開示の扉を開くことがその入口とも言えます。過去の経験からだけでは適切な解決策が見出せないものもあるわけで…、そうなるとこれが現代文だけの問題ではなく、自分の将来を考えることや自己理解などにも派生していきます。

                もう少しつづく


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