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探究学習のマインド形成 5(キーワードは苦悩)


 探究学習とは、生徒さん主役の学びの可視化でもあります。
 そのためには、今まで生徒さんの指導・管理・授業の主役であった教員側に大きな価値観の変更、そして自己の再構築が求められます。これが、教員側のマインド形成ということ。
 では、生徒さんに、自己が学びの主役であるというマインド、さらにいえば「自走」を可能にするマインドはということになります。

◆国語の授業から考えてみる
 キーワードは「苦悩」です。
 現代文の小説、古典の物語の主人公・登場人物の心境にフォーカスしてみました。フォーカスするのは「苦悩」です。
 羅生門の下人、山月記の李徴、こころの先生、舞姫の太田豊太郎は、どんな苦悩を抱えているか、その苦悩はどこからどのように生じるのか、それはなぜそれぞれの人物にとって苦悩になるのか、その苦悩に解決はあるのか…などです。
 この視点で、羅生門の「老婆」、山月記の「袁傪」、こころの「K」、舞姫の「エリス」も捉えなおしました。そうなると、それぞれの作者の人生・価値観・時代背景などまで自然に踏み込んでいくことになりました。
 つまり、苦悩という論点の提示~本文の読解×調べ学習~自身の考察・解釈(仮説)~仮説の検証という流れになります。

◆苦悩という言葉を総合的探究の時間のキーワードにしてみる
 社会課題をテーマとする時、格差・貧困を取り上げる生徒さんは多いです。都会の生徒さんだと「アジアの貧困」という国際的な考察を示すケースもあります。
 なぜ「貧困」をテーマとして選択したのかを確認すると、多くは「同情・怒り」という感情になります。救済、平等・公平の実現という大義名分もあります。ただ、こうしたモチーフをなぞるだけでは考察は深まりにくいです。なぜなら、貧困と言われる状況にある人が、何に苦しんでいるのか、なぜ苦しんでいるのか…という視点が弱いから。
 一方で、他者の苦悩にフォーカスするという視点は、テーマへの共感を導き「自分ごと」として理解・考察を深めるという効果がありました。
 

◆大学入試の小論文過去問から「苦悩」を取り出してみる
 一つの単元が終わった時、過去問に触れてみるという授業を挟むことがあります。その時、小論文問題を使ってみました。
 すると、羅生門と大学入試小論文とが「苦悩」というキーワードでつながることに気づいてくれる生徒さんが増えてきました。
 社会課題=貧困という単純なつながりからの脱却です。
 人々の苦しみ=社会課題であり、その一つに貧困という現象があるという意識です。そうなると、人々の苦悩・社会課題を構造的に捉えることができるようになってきます。このあたりから「集団知の形成」が見えてきました。
 少し前進です
               (もう少し続く)

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