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探究学習のマインド形成 1 

 講義型の授業から生徒さん主役の授業ということを言語化できたのは、医療系希望者の小論文指導からです。正確に言うと、医学部の入試問題に内在する「医療の変化」を知ったこと。
 医療に関する従来型のイメージは「白い巨塔(山崎豊子)」。教授が権勢をふるい、医師も患者も教授には逆らえず、その指示に従うのみ。患者は自分の正確な病名も治療法も薬も知らずに…というもの。
 そこから、告知、インフォームド・コンセント、QOLという概念が入ってきます。痴呆症は認知症と名称が変わり、治療方針も「医療モデル」から「生活モデル」に変化します。
 あまり適切な例えではないのですが、「白い巨塔」から「ブラックジャックによろしく」になるんですね。医療の主役が「医師から患者に」「教授主導からチーム医療に」ということ。
 
 この概念を、教育・学校にあてはめました。
 主役は「生徒さん」、授業は「体験モデル」、論理思考・コミュニケーション・倫理観などを踏まえた「ジェネリックスキル」によって学びを進めるということ。大学の初年度研修みたいですけどね。
 
 これを小論文で試してみました。私が担当する生徒さんに集まってもらい「Aさんの希望校の過去問をみんなで考えるスタイル」にしました。そこで、出題の意図は何か、論点は何か、根拠は何かなどについて発散と収束とを繰り返し、「チームで考える・集団知を構築する」ことを進めました。
 教員・生徒の1対1・個別指導のデメリットは「入試対策というその場しのぎ、その場限りの考察」に終始する可能性の内在です。これを複数の生徒さんが集まった場の力で「本質的な考察」に近づけたい、体験的に身に付けて欲しいと考えました。
 結論から言えば、以降面白いように合格するようになりました。集まった場で文章は書きません。書いた文章は生徒さん同士で共有・添削。私の出番がなくなればなくなるほど、生徒さんの考察は深まり合格率が高まります。
 
 しかし、このパターンを通常の授業でと試みるとうまくいかないのです。
 これをいかんせんです。
                       (つづく)

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