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閑話休題(古文は役に立つのか)

 中堅クラスの進学校に勤務すると生徒さんから必ず頂く質問。
 ちなみに、職員室内でもカリキュラム編成で「そんなに時間必要?」と教務あたりから言われたりもする不憫な教科。

 「古文では食えない」という主張には、「古文で食ってます」と返します。その生徒さんの机上には、大学受験用の古文の参考書があったりするわけで、「古文を稼ぎにする、ビジネスにする」という発想が必要ではないかな…と返します。それは「古文」だけでなく、数学や英語も、能力も特技も同じ。この構文をたとえば「野球を稼ぎにする、ビジネスにする」にすれば、論点は「古文」ではなく「価値創造」になります。
 
 ただ、センターテストの配点では、古文50点、漢文50点です。
 ここに時間をかけすぎると他の教科の勉強に響くのも事実。
 しかし、これはセンター国語の特徴なのですが、一問当たりの配点が6~9点と大きい。古文の問5を間違えたことで、中堅国公立大学の合否判定が下がり、出願校に影響することもある。

 というわけで、授業では「日本人の宗教観、価値観」から考察する流れを意識しました。たとえば「わび・さび」という感覚を本文から掘り起こし言語化するという作業、問いは「春はあけぼの」なのはなぜか。
 俯瞰的な問いを設定すると、それに答えるためには本文の正確な読み取りが必要なわけで、そうすると単語・文法を確認しながら読むことになります。この部分は知識の取得。
 わび・さびの理解は思考力、ここはグループで進めてもよい。
 平安時代・鎌倉時代の文章・感覚を現代社会と結び付けた考察ができれば価値創造と言ってもよいでしょう。あとはこの考察を検証・証明できればレポート評価としては最高点になります。

 この手順、他の教科で応用してくださいと伝えていました。
 古文を学ぶ理由の説明にはなっていませんが、古文の学びにも価値創造があることを導ければ…ということ。
 いずれ、事実を正しく理解することから価値創造までを主体的に進めることが「食う」ことの条件、稼ぎはその対価。
 
 就職に有利だからと、人文社会系・理系を選択する(選択させる)人もいますが、本質はそこではないというのが本日のオチ。
 論点は古文ではない、価値創造です。はい。

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