一陽来復の娘 8
↑の続きとなります。
「…もう、大丈夫?」
私は、しばらくして、笑顔を取り戻してくれた、少女姿の祖母に話しかけました。
祖母は、ニコッと可愛らしく笑い、
「私はね、歌を歌うのが本当に大好きだったんだよ。
学校の先生から褒められて、みんなで歌ったり、楽しかったなあ…」
私の聞いたことのない歌を上手に口ずさみながら、
それに合わせて、楽しそうに、
くるくる、くるくる、と、回り始めました。
こんな祖母の姿を見るのは初めてでした。
私の知っている祖母は、いつも着物姿で和室に正座していたり、割烹着でお台所にいたり、お仏壇に手を合わせている人でした。
(こんな明るい顔が出来る人なんだ。
これが祖母の本当の姿なんだ…)
そう思ったら、また、目が潤みました。
今まで、どれだけ自分を押し殺して、
鎧を纏って「いい子」として生きてきたんだろう、
どれだけの、そうならざるを得ない出来事達が、
祖母を襲ってきたんだろう、と。
(そりゃあ、死後何十年も、闇々しくもなるか…)
そう、思いました。
「ああ、楽しいな…!
これからは、ずっとこうできるんだよね?」
「そうだよ。もう、自由だよ。」
「嬉しいなあ、嬉しいなあ…お母さんにも、私のお歌、聞いてもらえるかな?」
「…大丈夫だよ。」
私は、少しためらいながら、
心にもないことを言いました。
亡くなってから人生を振り返り、穏やかになる方も多いのですが、中には、性格が変わりにくい人もいる、と、経験上、知っていたからです。
曾祖母が、祖母の事を、心のどこかでちゃんと大切に思っていてくれていても、もしかしたら…と。
でも、
曽祖父母が、せめて、あちらで祖母と会う、ほんのわずかの時だけでも、変わっていてくれる事に、かけようと思いました。
そして、
もし、あちらの世界で、曾祖父母と会って、祖母が可愛がられなくても、
きっと、それ以外の方々が、
祖母を大切にしてくれる、
あちらにも、私のように、
祖母のいじらしい気持ちを知って、抱きとめてくれる方がいるだろう。
そう、信じました。
「先生に褒めて貰った事も話したいな。話せなかったから…喜んでくれるかな?お父さんにも話したいな…
あっ!」
祖母の学生時代のお友達たちが、大勢、お迎えに、来てくれました。
皆、お揃いの可愛らしい制服を着ています。
「どうしてたの?」
「みんな待ってたんだよ!」
「…ごめん…ごめんね、私…」
「いいよ、歌おうよ!」
「何にする?」
みんな、とても無邪気で、明るく、
こちらまで、明るい気持ちになってきました。
「…じゃあねえ、○○がいい!」
「いいよ、得意だったもんね。」
「難しい歌なのにね。」
「じゃあ、歌上手3人組で歌ってよ。私達合わせるから。」
「…いいよ、任せて!」
祖母達は、キャッキャとはしゃぎながら手を繋ぎ、
「じゃあ、いくよぉ…!」
歌に合わせて、嬉しそうに、
その繋いだ手を、大きく前後に振り、
みんなで、元気に、大きな声で、歌いながら…
あるべき所へ「かえって」行きました。
「…はぁ〜〜…( ´Д`)=3
私は、みなさんを見送って、一気に気が抜けました。
お腹も空きすぎて、もう力が入りません…((( ;∀;)))
✨お疲れ様。大変だったね(^_^)✨
そうでした。
キラキラ光るお兄さんが近くで見ていてくれたのでした。
「…そうですね!三( ;∀;)
何故かここぞとばかりに勢いづく私(^.^;
✨…でも、どうだい?「楽」になったろう?(^_^)✨
「…そうですねえ。」
私は、キラキラお兄さんの言葉通りに、痛みがなくなり、「楽」に動かせるようになった自分の身体を、確かめるようにさすりながら、
(そういえば、祖母は晩年、リウマチを患っていたなぁ…)
と、ぼんやり、思い出しました。
続きますm(_ _)m ↓
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