可視化されるバカ達


「スシローペロペロ事件」をご存知だろうか?

回転寿司チェーン大手「スシロー」の店内で、醤油ボトルや湯呑をなめて元の場所に戻すなど、客による迷惑行為が映った動画がSNSで拡散された。テレビ、新聞含むメディアが大々的に報じ、SNSでは当事者の個人情報が拡散されるなど収拾の兆しが見えない騒動と化した。

この動画が投稿されると、SNS等では「スシローペロペロ事件」という名で話題になり、またたく間に拡散され、流出元になった動画は2月2日時点で3800万回以上再生され、スシローの株価は1月31日だけで145円下落し、時価総額は170億円近く下落。

スシローのみならず、回転寿司という業態そのものへの消費者の安心感とイメージを悪化させる重大な事態となったのだ。

これには様々な声が上がっている。
「もうスシロー気持ち悪くて行けない。」
「バカガキとその家族に制裁を!」
「昔からバカは居て、それがネットで炎上するようになっただけっしょ!」


①私も後者だと思っている。元々迷惑行為をするバカというのはありふれていて、育ちの良い人間たちにはソイツらが見えていなかった。ぬるま湯に浸かって育った人間たちは未だに性善説を信じており、"彼ら"のような人間がいることを理解できてなかったのだ。だけれど、インターネットが普及し、万人がSNSを扱えるようになった結果、周りには存在しないようなバカ達をワンクリで観察できるようになってしまった。今の疑心暗鬼社会にも通じてるね。知らなくていいことも、知れてしまう悲しさよ。

②似つつも少し違ったパターンもあるだろう。"心のどこか"では、自分の知らない場所で、信じられないことが起きていることを理解しつつ、それをあえて可視化させないことによって平静を保てていたケースだ。例えば、人間の生涯浮気率は50%を越えるという。つまり、小学校のクラスに30人の生徒が居るとしたら、その半分は平気で人を裏切ることができるクズ予備軍なわけだ。でも、そんなこと考えもしなければ人は人を信じれるでしょう?でも結局パートナーが浮気した現実を知ってしまった時、ショックでご飯が喉を通らなくなり、一生モノの傷を背負うことになる。50%が浮気経験者なんだけどね?うん。

つまりこういうことだ。理想と現実は程遠く、皆目を背けて生きている。"あえて現実を見ない"でいれた理想論者の大人たちに現実の厳しさを教えてあげた高校生は、糾弾に値する。なぜなら現実を彼らに思いださせてしまったからだ。

本当は、うまい寿司を安い値段で食ってる裏で、ロシアとウクライナは戦争している。中国が台湾を攻めようとしている。北朝鮮がヒステリックになっている。でもその現実は辛い。考えるだけで胸が裂ける。だから人類は平和であるはずだ。と見てみぬフリをする。そしてとうとうそれに目を背けられなくなった時、人間は泣き叫び、発狂し、現実を教える人たちを次々と集団でボコボコにする。お前のせいで!汚い現実を思い出した!メルヘンにいるのに!俺らは!無理やりポジティブになっていたのに!とでもいうかのようにね。笑

現在、高校生とその親は賠償金100億円の恐怖に怯えて号泣しているだろう。現実を見てしまった大人たちの怒りに追い込まれながら。

経済という土台が怪しくなってる今、スシローペロペロ事件は氷山の一角のさらに一角にすぎないだろう。この事件で時価総額170億下落させている人間たちは、"他にも"様々に存在する辟易する現実にどうやって立ち向かうのだろうね。笑

実はキリがない。絶望というのは、希望に溢れている青年のすぐ隣に存在している。どうしようもなく没落した人間、そしてそれに中指を立てる人間、そしてそれを信じようとはしない人間。様々な捉え方、高尚と陳腐なカオスフィールドが地球なのだ。

それでも信じる以外道はない。という人がいるなら、それは美しいことだ。ならば、信じたものが崩壊した時、もうちょっと寛容になってやったらどうだろう。

冷静に考えて、回転寿司のシステムで、スシローのような死角が多い間取りで、今まで同様の事件が起きなかったのは奇跡に近いとさえ思う。例の高校生はロシアンルーレットを当てただけにさえ思えてくるよ。

"見せしめに潰された高校生がいるおかげ"で、同様の事件が減ったのだとしたら、むしろ激安回転寿司屋の欠陥を、高校生が自らの人生を代償にして補ったことになる。スシローの社長もテンパってるだろうけど、高校生の行動を反面教師に出来たら、"長期的な目線では"かえって好都合になるかもしれないよね。まぁ、どんどん治安が悪化して同じようなバカ達で溢れたら全くの逆効果だと思うけど。笑


まとめるなら、私もやはり、ちょっと生理的に微妙な気分になった。でもそれは、本来見てみぬフリした現実を知ってしまっただけにすぎない。こんなんでスシローの価値が没落するなら、スシローに限らず全ての万物が簡単に崩れ落ちるツミキのようなものじゃないか。

ならば、ツミキを崩そうとするバカな高校生の人生を奪うのではなく、そのツミキがどういった苦労を経て積み上がってきたか、その高校生に直に教えてあげるべきではないだろうか。社長も暇ではないだろうけど、現場を案内して、なぜそれを"崩してはならないのか"、心で教えるべきではないだろうか?(ドキュメンタリーにしたらイメージアップ+利益になるかもしれないし。)そう。大人たちが、右も左もわからない子供たちに、教えてあげるべきだ。

なぜ大人たちが必死にバカな高校生の人生を奪おうとしているのか考えたよ。「どうせ、バカは変わらない。だったら、思い知らせてやろう。ルールを破ったらどうなるかを。人様に迷惑をかけたらどうなるかを。」といった具合のヤケクソだろう。一理あるけど、結局ありふれた現実の一部をモグラ叩きして、本質的な解決になるわけではない。残された感情は。終わらないモグラ叩きへの強迫観念と、深まる分断と疑心暗鬼だ。そして今より薄い。心が痩せ細った人間社会に突入していくんだろうね。


日本は、随分余裕のない国に成り下がってしまった。もちろん、私も含めて。



Mr.J-Boy

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