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アマゾンの夜、ワニを探しに行って見つけた大切なもの


「怒り」と聞いて、何をイメージするでしょうか?

イライラ、ムカムカ、もやもや…
溜めこんだすえに爆発するもの。
出来れば感じたくないもの。
表情や態度に出すのは大人げなくて、人として未熟な感じがする。

私もこれまで、アンガーマネジメントを学んで怒りをコントロールしようとしたり、なんとかイライラを感じなくなるように散々努力して来ました。
嫌な気分になる事は避けたいし、人との円滑なコミュニケーションをはかる際の妨げにもなる…
怒りってそんな存在なのではないでしょうか?

けれどもその一方で、怒りを抑えつけたり見て見ぬふりをしていると、自分にとって本当に大切なものを見落としてしまうかもしれません。

今回は、心理学からみた感情のお話です。



アマゾンの夜、ワニを探しに。


唐突に話変わりますが、何年か前、夏に一人でブラジルに行ってきました。
なぜブラジルかって、人生で一度はアマゾンに行ってみたかったから!

マナウスという街から船に乗り込み、アマゾン川を下ってジャングルの奥深くに進んでいくと、川沿いに建てられたロッジ型のホテルが木々の隙間から見えてきました。
ここにのんびり滞在しながら、ジャングル探索に行ったり、ピラニア釣りに行ったり出来るのです。


ジャングルの奥深くで、周囲に街も道路もないので、日が暮れると当然あたりはとっぷりとした闇に包まれます。
ロッジ前の簡素な船着き場に集合した私を含む数人は、川面に浮かべられた小さなボートに乗り込みました。
案内役のガイドさんがエンジンをふかすと、ボートはゆっくりと角度を変えて川岸を離れます。
アマゾンで出来る夜のお楽しみ、それは「ワニ狩り」
(狩るわけではなく、夜行性のワニを見に行くだけですが)
ボートを走らせながら、ガイドさんは闇の中に向かって腕を伸ばし、遠くの川面をライトで照らします。
川面にワニが顔を出している場合にワニの目が光を反射して光るので、その光るワニの目を探しているのです。

漆黒の広々とした川の両脇には、真っ暗なジャングル。
川と森と空の境目も分からないほど黒々とした闇と、深い静寂が広がる中を、ためらいもなく突き進んでいく小さなボート。
自然の中では人間はなんてちっぽけで無力なんだろう…
もしボートひっくり返ったらどうなっちゃうの私…(涙目)
ワニやアナコンダ、ピラニアがうようよしている深い川の中を想像して、それはそれは恐ろしい気持ちになり、身をすくめて身震いしました。



感情は、生存に不可欠な「センサー」だった


そう、厳しい自然界の中では人間はとてもちっぽけで無力です。
だからこそ恐怖や不安、怒りなどのネガティブ感情は、私達の祖先である人類が野生の自然の中で生き抜いていくには必要不可欠なものでした。

恐怖心を抱くからこそ、闇の中にうごめく気配に注意を払うし、猛獣に出くわした時に瞬間的に逃げる体勢を取る事が出来る。
不安を抱くからこそ、慎重に安全を確保したり、未知のものには不用意に近づいたりしない。
怒りを感じるからこそ、自分や仲間を守るためにいざという時に戦う事が出来る。

こうしたネガティブ感情を持った人間の方が自然界では生存確率が高かった。
そして、そんな生存競争の中を生き残っていった人間の子孫が私達現代人です。
だから、私達が日々イライラや不安を感じながら生きているのは、そもそも遺伝子に書き込まれているのだから、いたって仕方ない事なのです!



現代社会ではオーバースペック


ただ、現代社会の中では、闇の中から毒蛇が飛び出してくる事もなければ、寝ている時に猛獣に襲われる危険性もないし、初めて食べるもので毒にあたって死んでしまう可能性もほとんどありません。
命を脅かすような具体的な脅威はほぼ無くなった一方で、「将来お金が足りなくなったらどうしよう」「仕事で失敗したら」「上手くいかなくてみんなにバカにされるのが怖い」などなど、目に見えない頭の中の脅威に対して私達はネガティブ感情を出しまくって日々モンモンとしている事が多いのではないでしょうか?

人間の脳の進化は、文明社会の猛烈な進化のスピードについて行けていません。

自然界の中では生存のためにお役立ちだった敏感な感情センサーは、現代社会の中ではちょっと過剰な働きになってしまい、私達は持て余してしまいがちなのです。



感情は、自分という存在を知るための大切なツール!


ただ自己理解という観点からみた場合に、感情というものは自分自身を知るための欠かせない手がかりになります。

その中でも実は肝となるのが「怒り」。

怒りをおぼえるポイントって、意外と人によって異なります。
そして怒りの奥には、自分自身の大切にしている価値観や、願いが隠されています。
デリカシーの無い発言を聞くと特に腹が立つ!という人は、人の心を何よりも大切にしたいという価値観を持っているかもしれません。
横暴で支配的な人が特に許せない!という人は、何よりも自由を重視しているかもしれません。

また、怒りを感じる時に心の深い部分では「私を認めてほしい」「愛してほしい」「受け入れてほしい」「分かりあいたい」というような切なる願いが常に横たわっています。

怒りは、自分の願う世界を実現させようとするエネルギー、情熱です。
これまでも多くの人々の怒りが情熱を生み、世界を変えて来ました。

日常生活の中でイライラかっかとした時は、怒りの対象や相手に注目するよりも、自分自身の内側に目を向けてみて下さい。
怒りの感情を抑えつけようとしたり見て見ぬふりをする前に、じっくり感じて味わってみて、その奥にどんな自分の情熱があるのかを探索してみて下さい。
正しく取るべき行動や、相手に伝えたい本当の想いが見えてくるかもしれません。



感情は、道しるべ


それぞれの感情は自分自身を知るための扉です。
また、自分が目を向けるべき方向を示す道しるべとなってくれる物です。
そう、あのアマゾンの夜に、ライトを当てると闇の中でキラリと光って居場所を教えてくれたワニの目のように…。
いやそれよりも、ボートから見上げた頭上一面に光り輝いていた無数の星たちのように…の方が適切な例えでしょうか。
キラキラと瞬きながら、どこに居たって向かうべき方向を教えてくれる道しるべ。
赤々と燃える星も、冷たい青に光る星もありますが、全ては大きくきれいな星空を構成する一部です。


・・・・・・・


ワニを探して真っすぐに走っていたボートはしばらくして浅瀬に乗り上げると、ガイドさんが茂みの中へと入っていき、ワニの赤ちゃん4匹を手に抱えて戻ってきました。
握ると手の平に胴体がおさまり、下からはすらりとした尻尾が、上からは頭がちょこんとのぞくくらいのサイズ。
右手と左手で1匹ずつ持たせてもらって、写真を撮ってもらったりしてキャッキャしていましたが「さ、そろそろ戻さないと。親ワニが近くにいるから。」と言われて、速攻でガイドさんに返却。
水面に放された赤ちゃんワニ達は、深い闇の中にスッと音もなく消えていきました。


翌朝、今度は日の出を見るために、夜明け前に再びボートに乗って出発!
川幅の広く開けた穏やかな場所まで行き、ボートを浮かべて、群れで飛びながら鳴く鳥たちの声を聴きながら静かに待っていると、向こうに連なるジャングルの木々のてっぺんから、ゆっくりとオレンジ色の太陽が顔をのぞかせました。
白々と冷たい朝の空気が広がっていた川面や森の中が、太陽の差す暖かな光で満たされていき、みるみる世界全体が鮮やかな色を取り戻していきます。
つい数時間前まであんなに真っ暗で何も見えず怖かったジャングルだけど、見えるようになると怖かった事もすっかり忘れ、胸いっぱいに朝の森の空気を吸い込みました。


「心の中」と聞くと、なにか得体のしれないものが潜んでいるようなイメージを持つ人もいるかもしれません。
でも自分を理解するという事は、内面の世界に光をあて、色鮮やかで豊かな世界の輪郭を浮かび上がらせる事だと思っています。
見えてくる世界は、凛と澄み渡った海の上でしょうか。
活気に満ちた都会の街でしょうか。


あなたの中には、どんな世界が広がっていますか?



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