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川柳

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2021年5月の記事一覧

この手があった

この手があった

秒針は砂漠の中にとけていく

夜行バスのように星を抱える人

いつも、この手は温かさ放ってる

やわらかいカーテンと世界がゆれる

青く流れる

青く流れる

青色の携帯電話で撮った空

風のように心がまだ動いてる

雲のあいだを歩いてる人と犬

立ち止まっては朗らかに青く澄む

泥だんご転がした

実感から生まれた空のはしっこ

意味もなく地味に一味を探してる

知らないよ 一字一句の一の字も

思考の渦を泳いでる金魚の眼

光の香り

タワレコのCDの匂い吸いにいきたい

ピックじゃなくパンツを投げるミュージシャン

まったく輝いていない謎の明かり

スーパースターが光速で飛んでいく

心像

抽斗で抽象的な像になる

雨上り 昼下りの坂道下る

記憶から見ると光になる笑顔

目を瞑るように箱の中をあるく

足した日々のこと

虚無感と実感混ざって複素感

歩くという行為がわたしの家だった

良い酔いの宵、いよいよよ よよいのよい。

時計みたいなメトロノームだけ鳴っている

鰓呼吸

水槽に流れるおだやかな時間

他者だったことを忘れて声になる

春色の初夏 黒板へ吹いた風

思い出せない想い出を持っている

うんとほんとう

ベランダの風が本体の人だった

あの時代自体が次第に時代劇

甘いお菓子は
甘い記憶になった

過去と陸続きの海が鳴っている

評論がひょろーんと長く伸びていく

轟々と煌々と動く

立ち止まり止まらない川を見ていた

太陽のおかげで日蔭ができている

風が吹きクジラのように動く影

自転車と同じ速度の夏が来る

バス停の透明

誰もいない町に佇んでいる言葉

つめたさに目覚めた朝の冷めた夢

有限の湯気が光になっていく

ここにない声を再生している風

何もないただ大切な季節だった

自然数

一秒ごとに散っていく桜たち

雨粒のひとつひとつに町がある

絶滅した場所に手紙を書いている

ワカメたち一秒ごとに増えていく

数年の呼吸 だれかとともにいた

夕焼けのタイトル

夕焼けが寝転んでいるニ年前

何も知らないから知らない場所にいる

俯くと五臓六腑も俯いた

夕暮れが立ち上がるまで影と待つ

うまれる

校庭の日かげで涼しい風浴びた

いつまでも響く十七音だった

雪解けのように時間が解いた問い

読んだ人それぞれにうまれるフィクション

その週に周囲の鯛を調べたい

旅人のビートが日々に響くんだ