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BOOK REVIEW

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#読書

原田マハ『独立記念日』

珈琲屋で豆焙煎してもらってる間に、向かいのBOOKOFFで何気なく買った1冊…が、超ハイパー良かった!!

タイトルの通り、老若を問わず女性が小さな"独立"を果たしていく話のアンソロジー。有川浩の『阪急電車』よろしく、ひとつひとつの短編が登場人物を介して緩やかに繋がっているのもまた良い。
それも、密な関係ではなく、日常的な行きずりの関係だから、余計に、どこにでもある出来事に思えてくる。(つまひは

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銀河鉄道の父 書評

銀河鉄道の父 書評

"父親"の気持ちは、きっと"父親"にしかわからない。でも、この本を読んで少し父親を慮れるようになった。

宮沢賢治がどーのこーのとは関係なく、"ある父親の一代記"として読んだら、とてつもなく読んで良かったと思えた。(もちろん、賢治の伝記のスピンオフ的な感じでも楽しめる)
明治〜大正期の父親像。家長であり、社長であり、厳格であらねばならぬ。そういう"父としてのプライド"と息子への愛情のフラストレ

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森絵都 みかづき

森絵都 みかづき

友人S氏の推薦本。
灰谷健次郎の『兎の眼』にも通ずるテーマをガルシアマルケスの『百年の孤独』の手法で物語る、"教育"をテーマにした三代記。

"不条理な世の中を行きぬくための、たしかな知力を子供たちに"

どこかで聞いたことのある言葉だけど、この言葉を出発点に物語は始まる。明子と吾郎は志を同じくして八千代塾を立ち上げ、結婚する。
"塾"を舞台にありとあらゆる教育の問題に立ち向かい、時に飲み込

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あのこは貴族

あのこは貴族

素晴らしいとしか言いようがない…!
今までずーっと心の片隅で燻ってた部分が、この本を読んだらスカーーーーッと晴れた感じ。.

東京生まれの箱入り娘v.s.地方生まれの雑草系女子という文言が帯にはあるけれど、実際に描かれているのは、"生粋のお嬢様の、マジな悩み"。その、お嬢様ライフの描き方もリアルだし、おぼっちゃまたちの嫌らしさも如実に描かれてる。(『軽薄なパステルカラーのポロシャツ着て、バミュー

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内田樹を読む理由

内田樹を読む理由

少し出遅れつつも、内田樹の生存戦略読了。
彼の本はほぼ全てに目を通しているので、(読者ならわかると思うけれど)新刊だからといって新しいオピニオンが散見できるというわけではなく、(もちろん新しいトピックもあるけど、だから買ってるけど)長きにわたって首尾一貫した主張をし続けているので、そのオピニオンに賛同できるか否かは別として信頼できる。

これだけブレずにコンスタントに考えを発信し続ける人って、案外

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橋本治 「巡礼」

橋本治第3弾、近隣に迷惑をかけまくるもゴミを(本人はゴミだと思っていない)集めまくる下山忠市の生涯を描いた作品。序盤はゴミ屋敷を巡る「現在」に焦点を当て、近隣の住民がどのようにその「ゴミ屋敷」を見つめ、その側で暮らしているのかが、住民の心理描写を中心に描かれていた。だから、最初は「ゴミ屋敷を巡るトラブルの全容」を描いた、ワイドショー的作品なのかと思ったが、読み進めていくうちに内容はその「ゴミ屋敷の

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橋本治『橋』

私は同じ作家の本を立て続けに読む習性があるので、またしても橋本治。前回は、「結婚」という現代のワーキングガールに寄り添った内容(とはいえおそらく対象はニッチ)だったけれど、「橋」は2人の女の一代記だ。

「2人の女」と言ってもその二人に接点はほとんどなく、物語の終盤で明らかになる、「あることをした」という共通点があるにすぎない(そして母親同士が同級生だということ)。

内田樹が橋本治のことを「説明

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柴田元幸 ケンブリッジ・サーカス

柴田元幸 ケンブリッジ・サーカス

私に翻訳の楽しさを知らせ、アメリカ文学へいざなった柴田元幸氏のエッセイ。最近追いかけていなかったのですが、先月の文学フェスタ以来また彼の文章にときめいています。
キレイな日本語、とても標準的な日本語を使っているのですが、内容でユニークさを滲ませているので読んでいて飽きない。的確という意味での"正しい"日本語を使える数少ない人。

本書で1番笑った&頷けた表現は"フォークをスコップとしてではなく槍と

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