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柴田元幸 ケンブリッジ・サーカス

私に翻訳の楽しさを知らせ、アメリカ文学へいざなった柴田元幸氏のエッセイ。最近追いかけていなかったのですが、先月の文学フェスタ以来また彼の文章にときめいています。
キレイな日本語、とても標準的な日本語を使っているのですが、内容でユニークさを滲ませているので読んでいて飽きない。的確という意味での"正しい"日本語を使える数少ない人。

本書で1番笑った&頷けた表現は"フォークをスコップとしてではなく槍として使う"というフレーズ。"槍"!!そうきたか!!と目から鱗の落ちる思いをした。

"面白い"文章というと、下手をすると文法めちゃくちゃ、今様の言葉遣いの乱発、擬音語擬態語カタカナ語、といったものを思い浮かべる人も少なくないと思います。でも、それは"音"としての面白さであって、"文章の"面白さではないのです。
面白い文章は、英語で書かれていても古文で書かれていても面白い。もちろん、日本語特有の言い回しや美しい表現、言葉があるのはその通りですが、それだけならず内容の伴った文章に出会えた時、本当に幸せを感じます。

生徒にもいつも言っているのですが、読書が好きじゃない人は、まだ自分が面白いと思える本に出会えていない証拠。つまらない本を読む必要はないから、面白いと思える本に出会えるまでちょっと読みを続けてみなさい、と。つまらない本を最後まで読む必要はない!
だけど、本当に面白いと思える本に出会えたら、読書が嫌いだなんて言わなくなると思います。
世の中には数多の本が出版されているんだから、そのうちの1冊ぐらいは心にビシビシ響く内容であるはずです。役に立つとかそういう観点じゃなくて、あーーもうこの本書いたの私かも!!というぐらい共感できる。

柴田元幸の翻訳した、ポール・オースターのムーンパレスが、私にとっての"そんな本"第1冊目でした。
私もいつか、そんな文章が書けるようになりたいなぁ。
#本
#読書
#エッセイ

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