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"手紙の上で眠る文字”
最後に手紙を書いたのは一昨年の夏の終わりだ。
静寂を求められる喫茶店でお気に入りの鳥の形のカードにブルーのインクのペンで書いた。
私たちは恋人でも友達でもなかったからその時は手紙を書くなんて半分大それている気がしてプレゼントの包みの見つかりにくいようなところにそれを隠した。
”私はあなたの目で世界を見てみたいと思うよ”とそこには書かれていてそんなことをきちんと実体のある人間に思ったのは初めて
”あんなどうしようもない例え話 他の誰にもしないでいて”
まだ半分、冬の気配が残る真夜中の公園で「君を好きだけれど幸せにする覚悟がない」とあの子が言った。私は何と答えたのだっけ。たしか笑ったんだ。
恋人がいても、例え結婚したとしてもかまわないだ何て言うから困ったふりをして「ここにいるから大丈夫だよ」と言った。今こうして一緒にいることがすべてだった。私が最後に誰かの前で泣いたのはまだ君のままだ。
また冬がくるなんて当たり前のことなのに、ただ頬にあたる風