まるで恋をしているよう

首都高のカーブを曲がるときにiPhoneから流れてきた曲を「1番好きな歌だ」と言った。

どこかで聴いたことのあるジャズスタンダードのその曲は「ライクサムワンインラブ」だと教えてくれた。キアロスタミの映画のことを思い出しながら私は東京の夜景を眺めて「ライク・サムワン・イン・ラブ」と唱えてみる。

観覧車の前の横断歩道を渡りながら手を繋いで夜景を見ながら甘い缶コーヒーを飲んで(自動販売機の前で好きなのをどうぞと微笑んだ)誰もいない真っ暗な公園で対岸の工場の明かりを見つめているときも私たちは恋人じゃなかった。

それでも私たちがまるで恋をしているかのように今夜は見えますように。

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