"ごめんね だけどいつの日かみんな忘れるはず"

22時半にゴミを出しに玄関をドアを開けると少しだけ冬の匂いがした。秋をとばして冬の匂い。

彼と出会ったのが2つ前の冬でそれから夏がくるまで本当によく2人でお酒を飲んだ。

さっきの冬の匂いで思い出したのはもうすっかり熱も冷めた2回目の冬のことだ。私はその冬、たいそう元気がなくてその日も半ば無理矢理に友達との予定をすまして部屋に戻って、もう一度ゴミを出しに外へ出た。

その姿を見かけた彼から「さっきゴミ出してた?」とメールがきて「そうだよ。恥ずかしいね!声かけてよ」と返すと「急いでたんだよ。ごめん。ゴミ出すときもかわいい格好でえらいね」と返事がきた。

そのとき「この子はまだ私のいいところを見ていてくれるんだな」と何だか泣きたくなるくらい嬉しかった。さっきの冷たい風でその瞬間の気持ちを思い出してもしかしたら涼しくなってあの子から急に連絡がきたのもそんな季節のせいなのかなとぼんやりと考えた。

君が言っていた私の魅力をいつか知りたくて今日も丸まった背筋を伸ばしてみる。もう会うことがなくても私が願わなくてもきっと幸せになれる大好きだった男の子。


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