見出し画像

“シュ”の起源 #3

シューゲイザーの起源について書いてますが、これまではシューゲイザー前夜、そして当時のイギリスのシーンについて書いてきました。
今回からはシューゲイザー成立に直接影響を与えたバンド達を紹介していきます。

Cocteau Twins(コクトー・ツインズ)

ロビン・ガスリー、ウィル・ヘッジー、エリザベス・フレイザーによって1979年に結成されたCocteau Twins(コクトー・ツインズ)。
ドリーム・ポップのイメージが強いかも知れませんが、初期はジョイ・ディヴィジョン、バースデー・パーティー、スージー・アンド・ザ・バンシーズ等のニュー・ウェイヴ、ポスト・パンクの影響を受け、かなりダークな音楽性で活動していました。

4ADと日本のアーティストとの意外な関係

Cocteau Twinsのキャリアがニュー・ウェイヴ、ポスト・パンクから始まるのは当時の4ADのレーベルカラーなので必然なのですが、それを全く知らない日本のリスナーも実はこの影響を受けた音楽を耳にしている可能性があります。
当時の4ADのアーティストと言えば、Bauhaus(バウハウス)、The Birthday Party(ザ・バースデイ・パーティ)、IN CAMERA(イン・カメラ)等で、これらのバンドは日本のアーティストにも大きな影響を与えています。
例えばゴシック、ポストパンクの先駆者AUTO-MOD、そのメンバーでもあった布袋寅泰がギタリストとして活動したBOØWYBUCK-TICKなども、音楽性だけでは無くファッション面でも強くBauhausの影響を受けています。
そして当然その流れはその後90年代に活躍するヴィジュアル系バンド達にも受け継がれて行きます。
因みに海外だとMarilyn Manson(マリリン・マンソン)はこれらのバンドからかなり影響を受けています。

ただオリジナルのニュー・ウェイヴ、ポスト・パンクは日本では特に馴染みの無いジャンルなので“少し変わった音楽”と言う印象を受ける人が多い事でしょう(苦笑)

ドリーム・ポップへの転身

レーベルカラーに沿って活動していたCocteau Twinsでしたが、1983年にベーシストのウィル・ヘッジーが脱退すると音楽性が変わります。
幽玄なエリザベス・フレイザーのヴォーカルスタイルにエフェクトを強くかけた独特な浮遊感を作り出すギタースタイルが強調され、バンドはついにドリーム・ポップ路線を確立。
また、ウィル・ヘッジーの抜けた穴は所属レーベルである「4AD」の社長兼プロデューサーでもある、アイヴォ・ワッツ・ラッセルによる企画プロジェクト、This Mortal Coil (ディス・モータル・コイル)への参加を通じて出会ったサイモン・レイモンドの加入で埋めます。

そして1984年にサードアルバム "Treasure"を発表。このアルバムとシングル"Aikea-Guinea"は高い評価を受け支持されました。

1990年代になるとバンドは成熟し、セールスの面でも成功を納めます。
しかし所属する4ADとの関係は悪化。レーベルを移籍し活動を継続しますが、音楽性は4ADのイメージから離れたかったためか、よりポップで聴き易いアレンジへと変化していきます。

1996年に8枚目のアルバム "Milk and Kisses"をリリースするとツアーを行います。しかし翌年の1997年、9枚目のアルバムのレコーディング中に突如として解散。バンドの歴史に幕を下ろしました。

引き継がれるCocteau Twinsの遺伝子

LUSH(ラッシュ)

直接的な後継者はやはり同じ4ADのLUSH(ラッシュ)でしょう。
LUSHはハンガリー人と日本人のハーフであるミキ・ベレーニとエマ・アンダーソンが中心となって1987年に結成されたシューゲイザーバンドです。
ファルセットを多用したボーカルスタイルに、ツイン女性ヴォーカルと言う個性的なバンド形態でロックと言うよりはポップで耽美で透明感のあるイメージを全面に押し出した曲調はまさにCocteau Twinsの後継者と言って良いでしょう。

因みに余談ですがミキ・ベレーニの母親は元女優の永積靖子で、Cornelius(コーネリアス)として活動する小山田 圭吾とは親戚だそうです。
LUSHは2015年に再結成を発表。現在も活動中です。

Blonde Redhead(ブロンド・レッドヘッド)

1993年結成。活動当初は4人組でしたが、現在は3人で活動しています。
初期はソニック・ユースのドラマー、スティーヴ・シェリーのレーベルに在籍していた為か、オルタナティブでソニック・ユースライクな音楽性だったBlonde Redheadですが、2004年に4ADに移籍すると音楽性に変化が見られ、ついに2007年に発表したアルバム「23」The Billboard 200で初登場63位の快挙を達成します。

Cocteau Twinsにそっくりと言うわけではありませんが、そのスタイルや耽美で幽玄な雰囲気、透明感は確実にCocteau Twinsの遺伝子を感じます。
またヴォーカリストのカズ・マキノは日本人女性、ギター、ボーカルのアメデオ・パーチェとドラムのシモーネ・パーチェは双子の兄弟(ツインズ)と言う所もまた象徴的ですね。

Cocteau Twinsはこのように後のシューゲイザー・ムーブメントにドリーム・ポップの先駆者として影響を与えた事は間違いありません。

その他のバンドは次回#4で。

また不定期に記事を書いていきますので良かったらフォローと☆スキをお願いします!

こちらの記事も合わせてどうぞ

“シュ”の起源 #2
“シュ”の起源
#1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?