「事業譲渡」スキームを理解しよう|M&Aアドバイザー超初心者向け基礎知識!③
こんにちは。かきもとみさです。私は世の中に少ない女性M&Aアドバイザーとして仕事をしています。M&Aの仕事はめちゃくちゃ面白いです!なので、これからは女性M&Aアドバイザーを育てたいと考えており、「超初心者」向けにノウハウを発信しています。
今回は「事業譲渡スキーム」について勉強します。前回の記事で株式譲渡スキームについて説明していますので、まだ読んでない方はこちらから読んでみてくださいね。
1. 事業譲渡とは
事業譲渡とは、ある一部(もしくは全部)の事業一式を他者へ譲ることです。
では、「事業一式」とはなんでしょうか。
一般的には下記のようなものが考えられます。
買い手がその対象事業を引き継いだ後、旧オーナーがやってきた通りの収益を稼ぐために必要となるもの一式を譲り受ける、というイメージです。
2. 株式譲渡との違い
株式譲渡との違いから、この「事業譲渡スキーム」への理解を深めていきましょう。
株式譲渡は、対象会社の株主になることで、基本的に対象会社が保有する資産・負債(権利・義務)を自動的にすべて継承するスキームでした。(前回の記事を参照くださいね)
これに対して事業譲渡スキームでは、引き継ぐ資産・負債を特定して引き継ぐ、という特徴があります。
つまり、株式譲渡のときには譲渡対価が株式の価値(資産・負債をすべて引き継ぐ想定で、会社の株価をいくらとするか)であるのに対し、
事業譲渡では、引き継ぐ事業に必要となる資産・負債を特定し、その継承資産・継承負債の価値がいくらなのかを算定して譲渡対価を決めるというイメージです。
従って、最終契約(事業譲渡契約)の時点で、継承する対象物を契約書に明記するため、株式譲渡のように「見えない簿外債務を知らぬ間に引き継いでしまう」というリスクは少ないと考えるのが一般的です。
3. 事業譲渡スキームの注意すべき点
「見えない簿外債務を知らぬ間に引き継いでしまうリスクは少ないのだから、事業譲渡スキームの方がよいのでは?」と思うかもしれませんが、果たしてそうでしょうか。
よく考えてみましょう。
事業譲渡スキームであれば、なんでもかんでも引き継いでしまうリスクが無いということは、言い換えれば「その『会社』に紐づいているものはそう簡単に引き継げない」ということです。
だから、事業譲渡スキームを起用すると、「引き継ぎたいものも引き継ぐ」ハードルがぐんと上がります。
例えば、ビジネス上必要な許認可や特許、そして顧客との取引契約、仕入れ先との取引契約…。事業譲渡になると、これらすべてを認可取得し直したり、契約締結しなおしたりしなくてはいけません。
とくに契約関係については、非常にセンシティブです。事業のビジネスオーナーが変わるため、契約名義人が全く変わるわけです。取引先が同じ条件で契約をしてくれるかどうかの保証がないままに譲渡を実行するのは非常にリスクが伴います。
200社の顧客があったとしたら、200社と契約を巻きなおすことが前提です。許認可など省庁や保健所などの管轄への申請もやりなおしです。土地建物など不動産に係る賃貸借契約書なども、すべて基本的には巻きなおしです。
考えただけで、ちょっと頭が痛くなりますね。
しかも、きちんと無事に元の会社と同じ事業運営環境に整うかどうか未知数だし、手間もコストもかかります。
これが事業譲渡スキームのデメリットのひとつと言えると思います。
4. 結局、株式譲渡と事業譲渡どちらがいいの?
ではどちらのスキームが良いのでしょうか。
当然、案件によります。
というか、ここでベストなスキームを提案して売却計画を組み立てるのがアドバイザーの仕事です。
ではベストなスキームはどう考えれば良いのでしょうか。
例えば、会社に紐づく許認可や契約自体に価値があるビジネスであれば、株式譲渡スキームを望む買い手が多くなるでしょう。「確実に会社ごと譲ってもらえる」という方が安心します。
或いは、多数の事業を保有している会社を考えてみましょう。多事業のうちの特定の1つの事業だけが収益性が良かったり、会社に紐づいている借入金が重くて、不採算事業が足を引っ張っているケースなんかは、採算事業だけを切り出して、事業譲渡スキームで譲受できる方が好まれるでしょう。
大切なのは、その会社(もしくは事業)の「どこに価値があるのか?」をよく考えて、また同時に「どこにリスクがあるのか?」を考慮して最適なスキーム設計することです。
他にも、売主の税務メリットを考慮してスキームを決定しくパターンもありますし、廃業した場合との比較で決定していくこともあります。スキームに関しては、実は株式譲渡と事業譲渡の方法だけではなく、様々な手法があります。(別のスキームについては、またどこかで書きますね。)
M&Aアドバイザーは、ビジネスの特性や財務状況、売り手目線・買い手目線で、様々な要素を考慮して一番良い譲渡スキームを考えられるようになることが求められます。
本日はここまでです。
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ではまた♪Adiós❤
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