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詩『Rock’n roll butterfly』

暗い羽根を翻して
夜を誘いこむから
身体が冷めてゆく
あつい昼間の光が和いで
肺のなかで夕闇を育てる

時間が萎んだり膨らんだりしながら
すずしい風の波が寄せては返すもの
紺色の空を口に含んで咀嚼そしゃくしてゆく
硬質な青がだんだん湿り気を帯びる
したたる、滴ってゆく、よるに浸水して
温度が下がるから眠りの畔をあるく

水辺の孤独をたぐり寄せて
ちいさい頃の母を捜査する
液体に溶け出した想ひ出は
深度を掘り下げてゆく触手
あの日の母親はまほろばの
とおいひかりに透けていた 
あたたかい掌のぬくもりも
今では色褪せたネガとポジ

誘蛾灯がぼんやり萌芽した
虫が渦巻いてひかりを遮っている
とぎれとぎれの蛍光灯の賛美歌だ
マリアさまの綴じられたまぶたが
しずかに信者たちに伝染してゆく
祈りなさい眠りなさい子羊たちよ
満月が足元を照らしてくれるから
彷徨さまようたましいも帰り道をあるく

ギザギザに集められた信仰心は
タクトを振られる前の演奏者だ
抽象的な注視と規格外の群衆よ
ひとつ、ひとつ、の頭を数えろ
我々は整えられた野菜ではない
不揃いな靴を踏み鳴らしている
神はそれぞれの胸に棲んでいた

傾いた耳を清掃しようよ
左胸の弦をかき鳴らして
しゃがれた羽根震わせて
閉塞した帳を破りながら
Love is like a butterfly

ささむけた指ではじいて
整列した隊列を乱したい
変則的なリズムで揺れて
夜の向こうのカーニバル
Happiness is like a butterfly

Rock’n roll butterfly,
I wanna fly like a butterfly……
賛美歌で生まれてロックで育った
血液は16ビートで流れてゆく
胸に蝶々のタトゥー揺らして
いつかこの街から飛び立つ 朝


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、鰯崎友さん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾


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