詩『カフェ「月の色」へ』#シロクマ文芸部
月の色ーーー、お気に入りの穴場カフェ。扉を開けると、寡黙な店主がドリップの珈琲を淹れている。軽く会釈する。運ばれてきた檸檬水の酸味が風を起こす。なびく肌の表面、ざわついて、夏。降り頻る透明な粗目糖が瞳にぶつかって、弾ける。わたし、は早摘みの果実。腐るか程良く熟すかの微調整中。温度、湿度、ひかり、条件を精査してゆく。ゆっくり、ゆっくり、手塩にかけて。美味しいか美味しくないかは、主観的なもの。それをどれだけ共有できるか、もしくは作り手が計算した味をどれくらい享受できているか。味覚をふるいにかけて、細かく分析してゆく。
感覚的なものを事後に言語化してゆくプロセスは、ひとつの論文の裏付けみたいなものだ。左脳と右脳、感覚と理性。私はいつも両方使う。全身で感じながら、脳内コンピューターで分析したり、とりとめのない思索を巡らせたりするのが楽しい。カフェ巡りは、自由研究のフィールドワークみたいなものだ。それぞれ個性や差異があって、興味は尽きない。そしてカフェや喫茶店の店主と客の会話、または客同士の交流から生まれてくるもの。それらによって果実はより熟してゆく。さあ、今宵もカフェ『月の色』へ。
photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、コバヤシさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾
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