2021年11月17日 西加奈子/夜が明ける
これは世相に対する強烈な批判だ。いま人間は無意識によりよく生きようとしている。貧乏よりは金持ちに。不細工よりは美人に。馬鹿よりは優秀に。なぜだろうか。よりよく生きるのは人生を充実させるようで、実は窮屈で、不幸せで、虚しいことがあるのに。あるいは、ある一線水準を下回った時点で、二度と救われず、壊れていく予感に誰しもが怯えている。一度壊れたら、数珠繋ぎのように次の絶望が待っている。一線を超えないように、人々は日々怖がりながらも努力し、自分は「そっちにはいない」と主張しているのかも