音楽に対して抱いていたコンプレックス


ポルノグラフィティの生歌を聴いた。とある音楽イベントでサウタージを歌っていた。はっきりいって、圧巻だった。びっくりした。心臓がきゅっとつかまれた。冒頭に暗闇からアカペラで「わぁぁぁたぁぁあああしはあああ」だけで本当にすごかった。歌っている姿がきらきらしていてかっこよかった。その日から毎日YouTubeでポルノグラフィティのMVを観ている。

音楽を聴くことに、特別な関心はなかったむかしむかしのその昔。私は大変に活発なおなごであって、外にでて走ったり、バスケしたり、などを大変に好んでいた。そんな日常で音楽は、例えばランニングのお供にリズムを作ってくれるもの。ドラマとかアニメとかで印象的な場面で流れてエモを誘う装置のこと。誰がたのしそうに歌うので、一緒に高揚してしまうもの。

少し転換があったのは、ボーカロイドに出会った高校の某日。鏡音リンの炉心融解を聴いた。一聴して引き込まれた。高音を信じられないほどのばす。口もげるほど早口で歌詞をまくし立てる。機械だから可能。歌詞もなんというか、世界があった。

街明かり 華やか エーテル麻酔の冷たさ
眠れない 午前二時 全てが急速に変わる
オイル切れのライター 焼けつくような胃の中
全てがそう嘘なら 本当によかったのにね
君の首を絞める夢を見た
光の溢れる昼下がり
君の細い喉が跳ねるのを
泣き出しそうな眼で見ていた
核融合炉にさ 飛び込んでみたいと思う
真っ青な光 包まれて奇麗
核融合炉にさ 飛び込んでみたら そしたら
すべてが許されるような気がして

これが炉心融解の歌詞の一部である。小説とか詩みたい。美しくて綺麗だと当時のいたいけな少女は思っていた。そこからニコニコ動画の住民として色々なボーカロイドを聴いた。すると、一種のゲーム感覚に陥った。歌詞やテーマは難解であるほど、メロディーとかリズムが人間離れしているほど面白い。そんな風に楽しむ感性が育ち後戻りができない感じになっていた。きちんと音楽が好きで、であるからにして歌も上手だった友人からの「機械の音聴いて、何が楽しいの?」には本当にそれな、と思って恥じていた。

人並みにちゃんとCDを買ったりYouTube、ストリーミングとかで聴いてもいた。(順番にいけば、ORANGE RANGE、宇多田ヒカル、Superfly、aiko、GReeeeN、RADWIMPS、いきものがかり、スピッツ、くるり、エレファントカシマシ、銀杏BOYZ、あと親の影響で尾崎豊と中島みゆき。)でもやっぱりなんかちゃんと聴けているかわからず、コンプレックスを感じていた。

だったのだが、その長い間のコンプレックスを払拭したのがあのポルノグラフィティのサウタージだっただろう。本当にかっこよかった。何事も一番の近道は本物に触れることなのだな。音楽性とかその素晴らしさみたいなものがあの会場に溢れていたのを簡単に合点した。これなんだと思った。ひとびとはどうしてライブとかに行きたがるのだろうと思っていた。田舎に住んでいて無理だったのもあるが、CDを買えば音楽を楽しめるし、いまやYouTubeでMVも観ることもできるし、ストリーミング時代である。手軽に音楽を聴けるから、深く聴こうという態度がなかったようだった。

これはポルノグラフィティに恋をしました記念として書かれたものである。まじかっこいい。MVを何回の繰り返し。こんなに飽きずにみられるのは、やはりまじかっこいいからだろう。

ライブにいきたいという欲望以外が消えた。

夢に向かって頑張ります‼