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勝つことができる -欧風カレー ボンディ-


よく晴れたその日、いやよく晴れすぎてしまったその日とも言えるのかもしれない。梅雨の明けをはっきり感じられた蒸し暑く日差しの強かった去る六月二十六日。神保町にあるカレー屋ボンディを訪れた。青天。本当に空が青く澄み渡っていた。

場所は路地裏の細い路の二階に在る。大人気カレー屋がこんなところに在るのである。(知らなかったが50席ほどの小さな落ち着いた店内である)目印は、沢山並んでいるひとびとである。たとえ迷ったとしても、大量の人の気配を感じて捜索すれば、たどり着くのは楽勝だ。これは重度の方向音痴の私が言っている。

10:30開店、11:00過ぎに列に並んだ。開店と同時に集合は勘弁した結果である。12:00ちょうどくらいに入店。久方ぶりの友人と話してたら、あっという間だった。例えば先日上野で飲んだときに、散歩がてら夜の大学に侵入したこと、図書館が美しかったこと、そのさいにテンション上がって電話した無礼を詫びさせてほしいこと、などしていたら、もう店内間近に通されていた、ようなタイムラインだった。

カレーは美味しかった。語彙がなくて美味しいとしかいえないが、誰でも美味しいというと思う。食べたことのない味わい、工夫、アイディアがつめこまれた、まさにカレーの王者。(写真をご覧にいれてください)

・小じゃがいも2個とバター
・チーズonごはん300g おつけもん添え
・ビーフカレーwithポット

このボリューム。食べれないと思うだろ?ペロリだった。これは結構小食で皆に迷惑かけがちな私が言っている。涼しい店内。旧友との会話。おビール。(正直余計ではあった)食べた瞬間だれもが「勝った」とおもうだろう。


店内はレトロでモダンなカフェみたいだった。赤いソファ、薄暗い照明、木製のテーブル。カレー屋というより、地下とかにあるバーのような雰囲気もあったかもしれない。

くるくると入れ替わりに入ってくるお客さんたちが一様に美味しそうな顔をしていて、店内には美味しいものが人間にもたらす幸福感の雰囲気に満ち溢れていた。

神保町は古書のまち。カレーは本を読みながら食べるのに最適であるから、カレー屋さんが発達した、という逸話を聞いたことがある。

少しだけ古書街を散歩した。小奇麗でスタイリッシュな本屋さんもあれば、サブカル寄りの尖った目の本屋、老舗の本屋、昔の映画のパンフレットやポスターなども手掛けるようなマルチ古書店など、その種類も雰囲気もさまざまで、町の本屋ではお目にかかれないような、忘れていた知的好奇心をこれでもかと刺激する、素敵な古書を発見することができる。例えば、私が最も興奮したのは「ルネサンス期のイギリスにおける演劇の統制令について」みたいなやつで、そのテーマの絞り、マニアック、誰が読むねん、のような点に感激するなどしていた。(定価12,000円、売値4,000円だったので、入手するのは普通に諦めた)

その日、家が傾きそうな古書店の、そとの本棚に野ざらしでおかれていた、美しい本を手に取った。私はその作者も作品についても何も知らなかったが、一目見て気に入ってそのまま購入した。(いま最も面白く読んでいて、新たな世界を発掘したthank you)

何もかも電子版に置き換わる今日この頃だけど、大量にまかれた実物を散策し、これだとおもう自分のお気に入りを見つける途方もない偶然を楽しむ機会は神保町で叶えることができると知った。


夢に向かって頑張ります‼