この世で唯一の人と二人でお城に閉じこもって生きたい
雨が降った。
心の中に。
私はずっと泣いた。私には誰もいない。こんな暗い世界に閉じ込められている。そう思った。
愛が、愛が、愛が足りない!!!
という気持ちが猛烈に暴走した。
泣きながら朝まで眠れず、愛される感覚を得たくて夢小説ばかり読んだ。
想像の人から「愛してる」と言われて抱き締められる想像ばかりをした。
想像の人の繰り出す愛の言葉は壊れたレコードみたいに同じなのに、私はその言葉にいちいち痺れていて、体の中にオーロラ色のラメが広がるみたいな感じがした。どんだけ愛されることに飢えてるんだよと。想像だけでこんなに?
私はB型作業所に通っているが、昨日は休んだ。目が腫れていたし、体も重かったから。
二度寝して、起きたら昼の2時を過ぎていて、布団から出たらもう日は傾き始める頃だった。母は宗教の集まりに出かけていて家には私ひとり。昨日のイザコザはしこりを残したままだった。
虚しい気持ち、孤独な気持ち、何もない気持ちがあった。私は空っぽだった。窓は夕方の色をしていて、寂しさを掻き立てる。でもそれでいて誰とも話したくないような気持ちで、心の中が無だった。
胸の中がほんとうに、ほんとうに静かになってしまって。寂しささえ静かで。
寂しい気持ちは奥底にはあるんだけど、自分の気持ちは絶対誰にも分かってもらえない、何をどうしても無駄だという気持ちになってしまい、他者や外の世界と繋がることができなくなってしまう。諦めてしまう。ほんとうに外の情報を一切なんにも自分の中に入れたくなくなってしまう。閉じこもってしまう。
私はこの状態を自閉モードと呼んでいる。定期的にこんな状態になって、人との関わりやSNSを見ることをシャットアウトしてしまう。長いと一ヶ月二ヶ月続くことがあるので、その間に人との関係が切れてしまうことが多い。
私としては一ヶ月二ヶ月、一年やそこら話さないくらいでその人のことを忘れたりはしないし、特に関係が変わるとも思わないのだが、そうでない人も多いらしい。かなしいけど、しかたない。
長く関われる人が欲しいなと思う。私は人と縁が切れたらなかなか立ち直れない。みんなすぐに忘れて次へ行けるみたいだから、それが不思議で、わからない。
100円ショップをウロウロしながら、いろいろなことが浮かぶ。私は依存し合うような関係が理想なんだと思う。
一人だけ、自分と感覚の合う気に入った人を見付けて、その人と結界を張ったお城の中にでも閉じこもってしまいたい。俗世も、他の人間との関わりも全て捨てて、さらってほしい。
私はさ、昔から誰ともあんまり感覚とか、考え方とか共有できなかった。話してもどうせ誰にも分かってもらえない、自分だけ異界人だと思ってた。
だから同じような異界人と結ばれて、お互いだけがお互いのことを分かり合えるような、そんな関係に憧れた。
どこにでもいる普通の人じゃなくて、どこか遠くの星からこの世界に落とされてきた人。私も自分のことそんなふうに思ってるから、そういう人と出会いたい。
「捨ててくだされ、名前も過去も。阿古夜だけのものになってくだされ」
これは漫画「ガラスの仮面」の中の劇中劇、紅天女の中に出てくるセリフだ。
こんな感じの気持ちなのかもしれない。私からするとこれはすごくときめくセリフだと思う。素敵すぎる。
お互いに全部捨ててしまって、二人だけの世界に閉じこもって、お互いにしか分からない言葉で話して、お互いの息だけを吸って生きる。それが私の理想。
分かってる。こんなの全然健全じゃないし、非現実的だし、子供じみてるよ。笑われちゃうよ、こんなの。大人なのに。
でもさ、一度だけそんな夢を、ほんとうに見てしまったから。そういう人が私にも一度だけいたから、だからこそ苦しい。毎日毎日思い出してさ。前に進めなんて言われてさ。前ってどっちだよってね。
ねえ、愛されないなんて、愛せないなんて真っ暗と同じだよ。私はそれをいつも誤魔化して、いろいろささやかな好きなもののことを考えて、どうにか自分をこの世界に繋ぎ止めているよ。
確かに寂しいさ、寂しいけど、ただ誰かといたら埋まるだけの孤独なんて孤独じゃないぜ。誰でもいいわけないんだよ。
私は馬鹿みたいに運命とか、神話みたいなものとか信じちゃってるから、私を見付けてくれる、私が見付けなきゃいけない人がどっかにいるんだと思っちゃってるよ。
だって私にしか分かってあげられないことが絶対あるもの。私にしか見えないものがきっとあるんだもの。
全然大人になれないし、私はいつも百均のおもちゃコーナーでとぼとぼ歩いてる。子供みたいにあやしてもらいたくて、母親みたいな恋人みたいな人の夢を見る。寝ても覚めても夢の中にいる。
愛してるって言ってみたいな。
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