MinaminoSaika

専ら、ふと浮かんだ気持ちや情景を短文で書き起こしています。つまり、特に意味のないことを…

MinaminoSaika

専ら、ふと浮かんだ気持ちや情景を短文で書き起こしています。つまり、特に意味のないことを書き散らしています。

マガジン

  • 600字書房

    書き終えた時、文字数が十の位で四捨五入して600字くらいだったらここに追加。もともと長い文章は書かないので、大抵ここに入ることになる、かも。

  • 秋の夜長の夢のようなもの

    (寝てる時に見る方の)夢、みたいなものを書いたら追加します。

最近の記事

生まれる

良いことか悪いことか、あるいはそこに善悪があるのか、何もわからないけれど、私は自分が書いた文章を読み返すことがある。 記録としてつけている日記を読み返すのと同じ行為だと捉えれば、別に変なことでもなんでもないのかも知れない。 そんなわけで、今日は自分が去年書いた文章を読み返した。 去年、家族を一人亡くした。大事な存在だった。ずっと病気だったから、いつかそんな日が来ることはうっすらと意識してきた。 いざ居なくなってみると、あの人は消えてなくなって、見えなくなって、ゼロにな

    • 指先の記憶

       今日の出来事を記録しようと思って日記を開くと、去年の枠にあの人のことが書いてある。そっと紙の上に指を這わせると、ボールペンが刻んだ凹凸が伝わってきた。  たった数行しかない罫線の、わずか十数文字しか割いていない。 「今日、一緒にご飯を食べた」  寝る前の走り書きで、そう記されているだけ。そのあとはどうでもいい仕事の愚痴が続いている。  もっとたくさん書いておけば良かった。もっともっと丁寧に、全てを記録しておけば良かった。なんで、こんな淡白な事実しか書かなかったのだろう。

      • また会う日まで

        人の死が、自分にとってこんなにも辛いことだとは思わなかった。 真の喪失を目の前にして、私の心はどう対処すれば良いのか分からずにいる。どこに着地できるのか、どこに留まればいいのか、何も分からないままふわふわと宙を漂い続けている。 筆舌に尽くし難いこの気持ちをどうにかこの世の言葉に乗せようとするが、結局のところ辿り着くのは淋しさだ。こんな言葉では何も足りないのに。 死が、彼の人をこの世から別ちた瞬間。私の心の隅で産声を上げたこの淋しさは、あまりに生々しくて直視できない代物であ

        • いまちょっと起きているからね

          深夜の時間が好き。 世界が寝静まっている時間に、自分だけ起きているのが好き。 騒がしくて苦々しい日常から離れて、別の世界に居るみたいな感じがするから。 今からほんの数時間後にはいつもの朝がやってくる。そんな当たり前の現実は理解しているけれど、この、ひどく静かで少しだけ不安をかきたてる時間が、まるで永遠に続くような気がしてしまう。 というか、永遠に続いてほしいと願っている。実際のところは単なる夜更かしだけどね。 どこか違う世界に行ってしまいたい。この地球上でさえない場所

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        • 600字書房
          5本
        • 秋の夜長の夢のようなもの
          5本

        記事

          探し物は何ですか

          2023年、最初の話題として、個人的な探し物の話を。 小さいころ―――たかだか20分程度の休み時間で一斉に教室を飛び出し、ある生徒群は我先に一輪車やら竹馬やらを手に取ってどれだけ上手に乗りこなせるかを友人と競争し、男子生徒の大部分と一部の運動神経抜群な女子生徒たちが運動場で過激なドッヂボールに興じていた頃——―(つまるところ小学校の中学年くらいの頃だが)、私は「正解」を追い求めていた。 あの頃の時間は、酷く緩慢だった。1週間は頑ななまでに終わろうとせず、「小学校」は我々の

          探し物は何ですか

          ホラー映画を観た夜

          ここ最近、数年前に流行ったホラー映画をよく観ている。ヤバめな顔をした女の子の人形が出てくるアレとか、ホームビデオがとらえた怪奇現象のアレとか、ナイフを持った人形が追いかけてくるアレとか。ホームビデオに関しては10年前以上前に流行った映画だと知ってちょっとショックを受けた。 昨日は下水溝から顔を覗かせるピエロの映画を見ながら寝落ちた。そして明らかに一連のホラー映画鑑賞のせいだと思われる夢を観た。白い服の女の人が背後にいて、ついてくる夢。そのせいで夜の3時半に起きるハメになった

          ホラー映画を観た夜

          陰影の薄くなった雲と淡い青空を見ていると、虫の鳴き声が妙に耳にこびり付く。胸が重くなって世界から消えたくなる。そんな季節が巡ってきたような。

          陰影の薄くなった雲と淡い青空を見ていると、虫の鳴き声が妙に耳にこびり付く。胸が重くなって世界から消えたくなる。そんな季節が巡ってきたような。

          枯れた紫陽花の居場所探し

          道端のアジサイが太陽に灼かれていた。葉はくすんだ汚い黄土色をしていた。 数週間前まで、街角を鮮やかに彩って人々の注目を集め続けていた姿は消えた。今は誰ひとり見向きもしない。いずれ、そこに生えている木がアジサイだということさえ、人々の記憶から消える。 確かにそこにあるのに、人々の意識からは消えていく。そんなアジサイのように、静かに生きてゆきたい。 誰にも悟られないという寂しさの代わりに、誰からも邪魔されない権利を得たい。 混雑した電車の中で誰とも接触せずに済むように。そう

          枯れた紫陽花の居場所探し

          もう再び感じることはないかもしれない気持ちの備忘録

          住み慣れた地元を出て一人暮らしを始めた。 まだ家具の一つも置かれていない、驚くほど小さな部屋の床に寝袋を敷いて入り込んだ。都会の夜はうるさいと想像していたのに、駅からしばらく歩けば静かなんだと気づいた。眠りたかったのに、脳内は勝手に人生について考え始めた。 人生が簡単だと思ったことはない。煩わしいことしか起きない。嫌な記憶を優先して覚えているものだから、美しい時間があった事実など綺麗さっぱり忘れて、とにかく腹立たしいことばかりを思い出す。それにここ数年は身体のあちこちに調

          もう再び感じることはないかもしれない気持ちの備忘録

          海の底から帰ってきたあなたへ

          別に特別長い時間を共に過ごしたわけでもないし、何なら実際に対面したこともない。しかしながら、そこらの友人には話したことがないような自分の内面を吐露した相手が居る。 オンラインで初顔合わせ。初めて一対一で話した時は、互いの経験や考え、弱さを赤裸々に語った。……と、思っていた。 その時の印象は、「使命を帯びた人」 本当に。相手から、ものすごいエネルギーを感じた。デジタル情報で届いた音声と映像であっても、その声は力強く、その姿は輝いていた。 天からの使命を受けた人が居るんだ。

          海の底から帰ってきたあなたへ

          爆弾低気圧のせいだから

          今日、こんなにも落ち込んでいるのは、低気圧のせい。 なんだか胃の奥が重たくて、顔を上げ続けるのも力が必要で(放っておくと捨て犬みたいにうなだれる)、頭の中は複数の心配事がスライドショーみたいに次々と現れ続ける。 低気圧がマイナス思考を連れてきているんだ。低気圧が、私の目に映る世界を灰色にしているんだ。だから天気が良くなれば大丈夫。いつもの私はこんなんじゃない。 ……でも本当は、低気圧のせいじゃないということを知っている。自分が落ち込んでいる明確な理由を認めたくないだけ。

          爆弾低気圧のせいだから

          人の組み合わせはたくさんあるからさ

           運命の出会いが存在する代わりに、絶望的に合わない人もいると思うんだ。  きっと仲良くできるんじゃないかな、話が合って盛り上がるんじゃないかな、とかねてより思っていた二人が合わなかったらしい。ということが起きた。  その場に居合わせた人づてに聞いた話である。片方が帰った後に、残った方が『あの人は自分と合わないな』と言っていたとのこと。  自分に人を見る目が備わっていないと言うのも事実だが、どうやら二人に対して理に適わない見方をしていたのかも知れない、と思い至る。  どっ

          人の組み合わせはたくさんあるからさ

          Twitterで見つけた、リアルでは会ったことのない人の言葉だけど、そこに本物を感じたというわけ。

          「いつか絶対」 この言葉に、初めて重みを感じた。 誰でも口にできる、簡単な言葉である。言葉の意味をそのまま捉えるなら「(時期さえ合えば)必ず」という固い意志を示すはずなのに、多くの場合は「(うーん、まあ……)そのうち」という消極性を含んだ状態でこの世に放たれる。 いつか絶対、会いに行くね。 いつか絶対、見たいものなの。 いつか絶対、なってみせる。 いつか絶対という言葉を、ぽんぽん吐いてきた気がする。ほとんど何も考えずに、「そのうち」の類義語として使ってきた。 社交辞

          Twitterで見つけた、リアルでは会ったことのない人の言葉だけど、そこに本物を感じたというわけ。

          カラの容器

          色々教わって、覚えようとして、少し前までは使えていたけれど今は忘れてしまっていることがよくある。 言われたことをやっていて、ふとやり方がわからないことがよくある。調べてみるけれど、分からない。 覚えていないということを、知らないということを、ふとした拍子に誰かに知られるのがとてつもなく恥ずかしい。とてもとても恥ずかしい。 …これ、昔教えたよね? …あれ、君、そんなことも知らなかったんだ? 穴があったら入りたい。 知っていたはずの自分から、もう知らない自分へと転落して

          カラの容器

          それを食べるワケ

          新しい年がやってきた(明けましておめでとうございます)。 年末からいろんなものを食べてきた。 お洒落なクリスマスディナー、大晦日に奮発した肉、年越し蕎麦、餅つき器でついたお餅、おせちっぽいもの。スーパーに行くと沢山の普段見かけない食材やお惣菜が並んでいて、思わず買ってしまう。「こんな時にしか食べないもんね」 去年は大変な年だった。年末は忙しなかったけど、美味しいものを食べられて幸せだ。 年末からYouTubeの海外のサバイバル動画にはまっている。 なんでも食べる。我々にと

          それを食べるワケ

          待ち時間にて

          青いバーが0%から100%に到達するまでを見つめている(いま35%)。 ネットの海を、思うままに掻き分けているときは、数十分さえ一瞬。 早く帰りたいと思いながらエンコーディングのバーを見ているときは、一秒でさえ待てない。 楽しい時間はあっという間で、面倒な時間は長い(いま52%)。 パソコンも待ちくたびれてスリープモードに入ろうとするから、叩き起こしてまたバーを見つめる。 機械の小さな唸り。 遠くでドアが開く音。 誰かの足音。 画面と指が触れ合う微かな打音。 ただ

          待ち時間にて