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駅の個性について

いやはや、仕事が全く終わらない。

自分の要領が悪い。これは親譲り。どうすれば要領が良くなるのか、いろんな人に聞いて回っているが、実践まで至らない。
というか、人からもらったアドバイスをすんなり取り込める人は、そもそも要領が悪くない。大いなるジレンマだと思う。

業務のやり方がわからない。これは会社のマニュアルが多すぎるせい。数も多ければページ数も多い。答えっぽいものに行き着いたところで、古すぎることもしばしば。別のマニュアルに案内されて、エクセルみたいに循環参照に嵌まることもしばしば。
そして本当の答えは、秘伝のタレを持っている一部社員の頭の中。正しい人に聞けば即解決だが、めんどくさい人に聞けばネチネチ言われながら答えじゃない何かを掴まされて終わる。

仕事量が多すぎる。これは人口減少のせいだから、もう仕方ない。年功序列で、経営層が人員不足状態にテコ入れをしないようなジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーは総じてジリ貧だ、と思う。

そんなことをうじうじ考えて「仕事が終わらないのは決して自分だけが悪いのではない」と言い聞かせながら、いつもの駅に向かってトロトロ歩いた。

駅の改札を通って、人気のない階段を上る途中、ポスターが目についた。

「飲んでカッとなった、は通用しません。冷静になろう」とか「その一撃、犯罪です」とか、なんかすごく物騒なことが書いてあることに気づく。
思わず立ち止まって眺め、気づいたら笑っていた。だってこんなポスター、見たことない。

大都会でよく見たのは「痴漢は犯罪です」というポスター。
それに対して、この街の小さな駅のポスターの物々しさときたら。

むろん、痴漢は性暴力であって、卑劣な犯罪だから断固非難する。

しかしこの街のポスターもなかなかではないか。これを貼るに至るまで、酒に飲まれて駅のホームで他人に手を上げた輩がそれなりの数いるということだから。大人げない大人をたくさん抱えて気の毒なことだ、と同情の気持ちが芽生える。くたびれた無害なサラリーマン。そんな哀愁漂う個性が、この駅にある気がしてきた。

残業続きで腐った私を笑わせてくれてありがとう。電車に揺られながらそんなことを思っていたら、危うく目的の駅で降りそこねるところだった。
明るいホームに人がたくさんいる。大きな駅は遅い時間でも活力に満ちていた。

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