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『オルタネート』 (加藤シゲアキ 作) 1 #読書 #感想

Amazonより あらすじ

第42回吉川英治文学新人賞受賞作品
2021年本屋大賞ノミネート作品
第164回直木賞候補作品
誰しもが恋い焦がれた青春の普遍を、真っ向から描ききる。
加藤シゲアキ、これが新たな代表作。
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。
全国配信の料理コンテストで巻き起こった〈悲劇〉の後遺症に思い悩む蓉(いるる)。母との軋轢により、〈絶対真実の愛〉を求め続ける「オルタネート」信奉者の凪津(なづ)。高校を中退し、〈亡霊の街〉から逃れるように、音楽家の集うシェアハウスへと潜り込んだ尚志(なおし)。恋とは、友情とは、家族とは。そして、人と“繋がる"とは何か。デジタルな世界と未分化な感情が織りなす物語の果てに、三人を待ち受ける未来とは一体――。
“あの頃"の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつエモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。


先に述べておくと、私は「加藤シゲアキ」という1人のアイドルに全く興味がないし1ミリもかっこ良いと思ったことはない(笑)(というか彼に対する感情がない....)ので、そういう"アイドル"というフィルターがかかった状態でこの本を読んでいない。

ほぼ何も"ない"状態でこの本を読んだ時、素直におもしろいと感じた。5点満点中4点くらいのおもしろさ。ただ文章より映像化希望!の気持ちはある。映像で見た方が伝わってくる感情や気迫の量が多いような.....。


加えて登場人物が多く、最初のうちは彼らはバラバラで繋がりが見えてこないので、なかなか話に入り込めない。後半一気におもしろくなるので、これは主人公1人1人を別の話にして(別の本として)書いても良かったのかなぁと思ったり。
料理コンテストに出場する(1番印象に残る)主人公、新見蓉(いるる)(女性)の話がダントツで臨場感があっておもしろかったので、彼女だけが主人公の作品でも私は好きになれたような気がしている。


あとレビューを見ると名前に馴染みがなさすぎて読みづらかったという声が少なからずあるが、確かに珍しい名前の人物しか登場しない。だけど異性愛者が当たり前に登場したり、かなり後ろくらい人間の普段は見えない部分まで描かれていたりすることに好感は持てた。
とはいえこれが「直木賞」と言われたら私は納得できない。だから4点の評価である。





まず「オルタネート」という高校生限定の「つながることができる」アプリについて少し触れておく。
20・21ページより

高校生限定SNSアプリ「オルタネート」では、お互いがフロウを送り合うことでコネクト隣、メッセージなど直接のやりとりが可能になる。
(略)
ユーザーが指定した条件に合わせてあまたの高校生から相性のいい人間をレコメンドしてくれるオルタネートは、仲介人の役割を持つ代理人だ。

写真付きの生徒手帳を撮影して送らなければアカウントが作れないことから、「高校生だけが使っている」という安全面も強い...というようなことが書かれている。




ここから、主人公に1人ずつ一応触れていく。一応....。

1人目の主人公は伴 凪津(なづ)(女性)。オルタネート信奉者で、自分と遺伝子的にぴったり合う人間....自分の感覚ではなく、AIによってマッチングされるような数字(確率)的にぴったり合う人間....を求めている。
感情や直感ではなく、生物学的な側面での「相性の良さ」を彼女は求めているのだ。
110ページより

「お互いに利害が完全に一致していて、二人の人間性のいびつな部分でさえぴしっとはまる、その人以外いないというような相手。そんな人がいれば、ずっと一緒にい続けられると思うんです」
「でも人は変質するし、不定形とも言えるわ。あなたの条件を生物学的な裏付けに求めるのは難しいように思えるけど」
(略)
「自然界だって完璧じゃないのに、私は人がそれを超えられるとは思わない主義なの。」

凪津と生物の笹川先生のやりとりである。親とうまくいっていないからこそ、彼女は自分にぴったりの相手を求めている。オルタネートに浸水して、本当に確率的に自分にふさわしい相手としか実際に会うことはしない。

そんな彼女だが、実際に92.3%ぴったりだと診断された相手と実際に会った時、考え方に変化が訪れていく。
彼女のある種の運命の相手は、高校1年生の桂田武生(むう)(男性)だった。
2人の共通点は、とある閉鎖的なブログに言葉を掃き溜めていたことだった。

彼女は彼によって否応無しに自分の嫌な部分を見透かされたような気持ちになったのだろうか。
加藤シゲアキという人が書く文章は、あまり感情の流れが詳しく書かれていないように感じる。感情よりも動作で、言葉による会話で、時間が流れていくように感じる。だから映像化に向いているのではないかと思う(という面もある)。


彼女はやがて「オルタネート」から離れる。そんな彼女と同じ気持ちで今SNSを使っている若者は、少なくないのでは....と、思っている。

まぁSNSをただの承認欲求と一括りにするのはアレだと思うけれど。



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