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出産した友達に会うのが怖い②【後日談】



以前記事に書いた
出産したばかりの友達と、その赤ちゃんに会ってきました。


彼女に会うとき、正直怖かった。勇気がいった。


子なしの自分の生き方や選択を否定されたらどうしよう。
会って惨めな気持ちにならないかな。
もう全然価値観が変わっていて、
この先仲良くできないと思ってしまったら、
それが決定的になってしまったらどうしよう…

そんなことを考えては不安になり、
でも大切で仲の良い友達なので
会いたいな。楽しみだな。って思う気持ちもあり、自分の中で様々な葛藤があった。


ただそんな風にいくら頭の中で考えてたって、
結局のところは会ってみないとわからない。
会ってみて楽しかったら今後も安心して会うことができるし
逆に会ったことでこれまでの友情が壊れてしまうようなら、その程度の関係だったのだ。
悩んでても仕方ない。
とにかく会おうと思った。


そして迎えた当日。

朝スッキリ目が覚めて、夫と朝食をとり
近所のお菓子屋さんで注文していた焼き菓子セットを受け取ってから彼女の家へと向かった。

わたしの家から彼女の家までは電車で片道一時間半。
ドアドアだと2時間くらいかかるので、結構な距離である。


だけどこの片道2時間が小旅行のようでよかった。


行ったことのない場所、
乗ったことのない路線、
移り変わる景色。

見るものすべてが新鮮で、
しかも気持ちのいい夏晴れで
旅行に行くような気持ちで心が浮き立つ。
不安もあったけど、彼女に会えることがだんだん楽しみになってきた。


乗り換えの駅で美味しそうなお弁当があり
彼女に連絡をすると昼食はまだだと言うので
わくわくしながら選んだ。

そうして家の前までたどり着き、彼女がやさしく迎えてくれたのだった。




結論から書いてしまうと、
彼女と赤ちゃんと過ごす時間はとても楽しいものだった。



彼女に会うと決めたとき、どう思われるかは不安だったけどわたしの状況をすべて話そうと思った。
子どもを持たないと決めたこと、
それに対してわたしが感じてること、思ってること…
心を丸裸にさらけ出すつもりで会いに行った。

だって自分の大切な決断を話せないような関係性なら、何のためにわざわざ会うんだろう。
心に踏み込まれないように線を引いて
ビクビクしながら相手の出方を伺って
そんな心を開けない相手となにを話す?

それならわざわざ会わなくてよくない?
SNSだけ繋がってればよくない?

大切な友達だから、会うからには見栄も嘘もない、自然体の自分で話したかったし
そしてできれば彼女にもそうでいてほしいと思った。



そして結果、これがよかったんだと思う。


変にお互いが探り探りになったり、気を遣いあって話題を選んでしまう…みたいなことにならず、自然と会話が進んでいった。
わたしが話すうちに
彼女も本音でいろんな気持ちを打ち明けてくれた。

彼女には流産の経験がある。
そのことはLINEでさらっと報告があったけど
会って話を聞くのは初めてだった。

そのときやっぱりすごくつらかったこと、
友達の妊娠を喜べない時期があったこと、
これからずっと夫婦二人かもしれない、
子どもを持てないかもしれないと思ったこと。

そしてやっと妊娠しても、流産の経験から無事に産まれてくるのかずっと不安だったこと、
無事に出産しても、出産報告をすることで誰かを嫌な気持ちにさせないか、傷つけないかとすごく考えたこと…


彼女の気持ちを知るたび、いろんなことを本音で話すたび、
ああやっぱり会って話してみないとわからないことがあるもんだと思った。
わたしがいくら考えたところで、彼女がこんな気持ちを抱えていたなんて会うまでわからなかった。



彼女は彼女で、わたしが子どもを持たないと決めたことを初めて知ったわけだけど
そうしたわたしたち夫婦を否定することはなく
「夫婦二人もいいよね。子どもがいてもいなくても、それぞれどっちも幸せなんだよね。」
と言ってくれた。


一度は子どもを持てないかもしれない、
ずっと夫婦二人かもしれないと覚悟していた彼女だからこそ、わたしの気持ちもわかるのだろう。
そんな彼女にわたしも、本音で話そうなんて意気込まなくても自然と言葉が出てくるのだった。




初めて会った彼女の赤ちゃんは小さくてふわふわで、涙が出そうになるくらい可愛かった。

二人で幸せな気持ちで赤ちゃんを見つめているとき、彼女はこんな話をしてくれた。

「妊婦だったときスーパーに行ったらね、
おばあちゃんが話しかけてくれたの。
『もうそろそろ産まれるの?』って。
それで『そうなんです。もうすぐなんです。』って話したら
『楽しんでね〜。毎日が宝物だからね。』って言ってくれたんだ。
わたしがおばあちゃんになったら、この育休期間をあの日々は宝物だったなあ。って思い出したりするのかなあ…と思うと、毎日がすごく大切に思えるんだ。」


『毎日が宝物』


その話を聞いたとき、胸の奥が暖かくなった。


赤ちゃんの成長は一瞬。
たった一ヶ月で驚くほど身体も大きくなり、感情も豊かになる。
その一瞬一瞬を、見逃したくない。
一日一日、大切に過ごしたい。
そう思いながら日々過ごしている彼女は
愛情とやさしさに溢れていて
すっかりお母さんの顔になっていた。

隣で眠る赤ちゃんを見つめながらわたしは、
「本当にそうだね。」と言って
自分でもびっくりするくらい
彼女とその赤ちゃんと過ごしているとやさしく、暖かい気持ちになったのだ。


小さなこの命に触れたとき、
会う前に想像していた不安や、惨めな気持ちになるんじゃないかという劣等感のようなネガティブな感情はぜんぶ吹き飛んで
ただただやさしい気持ちでいられた。
彼女と赤ちゃんがわたしをやさしくしてくれたのだ。

幸福な気持ちに満ち溢れて
「幸せのお裾分けってこういうことなんだね。」
と言うと、彼女はやさしく笑ってくれた。




彼女とは別に出産した友達と会う予定が他にもあるけど、いまでも会うのが怖いと感じることは正直ある。

だけどこれって出産した、しないなんて関係なくて結局のところは本人同士の相性なのかなと思う。


母になった友達は、いまのわたしとは状況が大きく異なる。

だけど彼女とはこうしてお互いを尊重しながら腹を割って話せたし、その時間は心から楽しく幸せな時間だった。

逆にわたしと同じような状況の人でも、話していて気が合わないとか、この人といるとエネルギーを使うな…と感じることはある。

noteでもそう。
わたしは子なしだけど、子なしの人全員の記事に共感しているわけではないし
この人の考え方好きだなあ、と思う人に
子ありも子なしも、未婚も既婚も関係ない。
だからわたしがフォローしている方に共通点はないと感じる。

ただ全体的に、人の気持ちを考えられて、書くことに嘘がなくて真っ直ぐで、自分の人生を一生懸命生きてる方が多いなあと思う。

わたしは多分、そういう人が好きなんだろう。
彼女もそういう人だ。


やさしくて、聡明で、頑張り屋で、人の気持ちをいつも先回りして考える、周りの人を大切に思う愛情に溢れた彼女。
そんな彼女がやっぱり好きだし大切だから
ずっと幸せでいてほしいと思った。


彼女は「これからは結婚記念日のお祝いもお誕生日も、ぜんぶファミレスなんだろうな〜」
なんて自虐的に言いつつも
あまりに楽しそうに、幸せに満ちた顔で笑うもんだから
つくづく幸せに正解なんてないって、心の底からそう思った。


お年ごろのわたしたちはつい、
どっちの方が幸せかと比べたがる。

独身の方が、結婚してる方が、
子どもがいる方が、いない方が、
専業主婦の方が、働いてる方が…


だけどどっちの方が幸せ、なんて議論をしたところで、きっとこたえなんて見つからない。
人それぞれ事情も、何が幸せなのかも違うのだから。

だから
『どっちの方が』なんて比べるのではなくて
自分は自分で選んだ道を信じて、幸せになったらいいと思う。
自分で自分の選択を正解にしていけば
いくら人が幸せそうにしていても比べる必要なんてないのだから。


そして自分とは異なる生き方を否定するのではなく
『そういう選択もあるよね』と尊重できたらいい。

今回彼女とはお互い違う生き方を選択しながらも、尊重し合うことができた。
これからわたしは夫婦二人で幸せになるけど
彼女が選んだ道を応援しているし、赤ちゃんの成長もすごく楽しみにしている。


「どんな子に育つんだろうね」
「ね〜。そのうち『うるせえババア』とか言うようになるのかなあ」
「笑!!その報告楽しみだな〜。ババア記念お祝いしなくちゃ」
そんなことを話しては二人でゲラゲラ笑った。


会うのが怖くて不安だったわたしを、こんなにやさしい気持ちにしてくれてありがとう。
これからもくだらないことでいっぱい笑おうね。
彼女と赤ちゃんが、そしてわたしたち夫婦も
ずっと幸せでありますように。



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