三国6丁目

出会いと別れを、つづります。

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最近の記事

12.終わり

すべてが終わった。 もう何も考えられない。考えたくない。 生きるか死ぬかも、もうどうでも良い。 腹が減らない、 眠れない、 朝起きられない、 何もする気が起きない。 テレビが、会話が、聞きたくない。 身体は回復し、動く。 辛くない。 軽い運動から始めても良いようだ。 でも、そんなことはどうでもいい。 看護師と、リハビリの担当と、主治医以外に誰とも話さない。 家族と会話はしない。 求められた会社への書類は提出した。 必要なことはしている。 生きていない。実感がない

    • 11. 異変

      専門科で改めて診察を受けてください 健康診断で、ある数値がひっかかって 内科でさらに血液検査をする必要がでた。 毎日、遅くて、不規則で、 コンビニ弁当で済ませてきたからか。 家飲みが増えてしまったからか。 毎日、やるせない夜が多いからか。 時々に、回数は減っていたが 彼女との電話は、できている。 あの声が、癒してくれているのに。 しかし、何かが調子悪い。 検査の結果が、想像を超えていた。 すぐに入院と手術が必要なほどに進行していた。 悪化していた。 転移は今のところな

      • 10.それぞれの生活

        彼の辞令が発表された。 予想されたことではあったけれど とても驚いた。親しくなれたばかりなのに。 これから、お花見やピクニックや、 ユニバなんかも行きたかったのに。 なかなかうまくいかないものなんだね。 引き継ぎや引越し準備が忙しいのだろうけど、 毎日遅くまで働いている 夜の電話もだって幾夜もできない時があった あの時はあなたを心配した そして もうダメなのかなって思ったりしたよ。 会えた時には、 あなたはいつも思い詰めたような顔をしていた。 それなのにいつも通り心配し

        • #3ショートエッセイ 結婚と離婚について思うこと

          同性の恋愛感情について、否定はしない。 好きなものは好きなのだ。 これをしようと、あれをしようと、 どれしようと他人には関係のない話し。 恋愛は、身勝手すぎるくらいが、 ちょうど良い。 だって恋愛なのだから。 この国では同性間で結婚が できないのだけれど。 私は、本当に死んでも良いと思う恋愛、 冷え切った夫婦関係の下でもう一度 自分を振り返れるような恋愛をして、 それでもなお、今はつまらない生活で時間を潰す。 彼女と出会った時の、 あれはなんだったんだろうかと思うほ

          9.変化

          お互いの気持ちが最高潮に達する頃だった。 「よかったな、栄転だ。」 上司から声がかかり、異動内示が告げられた。 行き先は、地方の広いマーケットである。 確かに、今の部署より管理スパンは大きく、 やりがいのあるマーケットである。 しかし、だ。 辞令が下され、彼女も知ることになった。 わかっていたけど、今年だなんて辛過ぎる、せめて、来年、、 なにも言えなかった。 こちらはまだ離婚は成立していない。冷え切った完成に「着手」をしようと思っていた頃だったが、急に転勤(転居)が

          8.どっぷりと浸かって

          初めてのデート。二人っきりの時間。 久しぶりの男女の関係。 あとで現実を知ることになるが、まだこの時は自分たちだけの時間に、どっぷりと浸かって、本当に幸せな時間だった。 寒かったから、よく手をつないだ。彼女の手はガサガサだったが、それが余計に想いを強くしたのは確かだ。家族愛に満ちた手だと思っていた。 何度も見つめあった。大きな瞳に吸い込まれるような感覚で、言葉はいらないと、本当に感じていた。 人目を気にしながら、よくキスをした。マスクをしていても、少しだけ下ろして触れ

          8.どっぷりと浸かって

          7.想いを重ねながら

          初めてのデートは他愛のない、どこにでもあるショッピングモールに決めた。お互い、男女を出さずに済む。 言うなれば「いつも行き慣れた場所」だ。 とは言え、会社での「役割」を脱ぎ捨てて、実際に週末に会うとなると、また話しは別だ。緊張する。 メッセージや電話で、相当にお互いのことはわかってきたつもりだが、実際に会って、食事をするのは仕事以上に緊張する。 平日に部下とランチするのは何でもないのに、、 彼女の服装はとても可愛らしかった。着飾ることもなく、シンプルで、活動的で、季節感が

          7.想いを重ねながら

          6.線を超えたとわかっていながら

          イルミネーションを見て、カフェでおしゃべりして、お互いがお互いを必要としていることに、気がついてしまった。 メッセージのやりとりは、帰宅後にやりとりするようになった。お互いの立場を「終えて」帰宅し、私は晩酌を、彼女は「母親」を一段落する頃に徐に始まる。 今日の仕事の小さな失敗、成功、笑い。お互いが、お互いを欲していたようにメッセージは続けられる。翌日も、その翌日も。 いつしか、明確には描かないが、自ずとお互いの気持ちを確認するようになった。そして、声が聞きたいな、とお互

          6.線を超えたとわかっていながら

          #2ショートエッセイ 結婚と離婚について思うこと

          一般的に結婚は良いものだと言われ、私も同じように思うけれど、個別に考えれば、すべからく良いものだとは言い切れない。 ものすごく個別性が高い。 あくまでも個人的見解で、思うことを綴りたいと思う。 そもそも結婚しよう!#1で最初っから離婚を綴ってしまい、離婚ありきのスタートを切ってしまったが、私は結婚推進派である。 恋愛の最終形が結婚であるし、子供が欲しかったらまず結婚である。子供だけが欲しかったら、まずは結婚して離婚すれば良い。養育費もその他の権利獲得してから。。。(また

          #2ショートエッセイ 結婚と離婚について思うこと

          #1ショートエッセイ 結婚と離婚について思うこと

          一般的に結婚は良いものだと言われ、私も同じように思うけれど、個別に考えれば、すべからく良いものだとは言い切れない。 ものすごく個別性が高い。 あくまでも個人的見解で、思うことを綴りたいと思う。 人はなぜ離婚するのか?結婚したときは、あれほどまでに 相手を(お互いを)愛していたのに。 人はなぜ離婚するのか? 理由はとても簡単である。 だからここから先は、本当に離婚をしようと思っている方に読んでほしい。本当に大切なことなので、有料にする。 その理由とは。 ここから先

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          #1ショートエッセイ 結婚と離婚について思うこと

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          #0ショートエッセイ 結婚と離婚について思うこと

          一般的に結婚は良いものだと言われ、私も同じように思うけれど、個別に考えれば、すべからく良いものだとは言い切れない。 ものすごく個別性が高い。 あくまでも個人的見解で、思うことを綴りたいと思う。 まず 恋をしよう。恋は、全ての始まりである。 恋が全て 恋からすべてが始まる 学校や、仕事、いろいろ「社会」はあるが、 自分の社会を司る根源は恋である。 「好きだから」で全ての説明がつく。 学校が好き、仕事が好き だから続くのである。 そして好き、の隣にいるのが 恋である。 恋に

          #0ショートエッセイ 結婚と離婚について思うこと

          5.超えてはならない線を目の前にして

          二人とも身体が冷え切っていた。イルミネーションの夜に限って、風も強く、ひどく寒かった。駅の地下街で少しほっとしていたとき、彼女が言う。 子どもたちにはご飯を作ってきているので、少しなら時間があります。 すぐに帰ると思っていた私は、その言葉に驚いたともに、少し複雑だった。 誰にも見られたくないな、、 駅ビルの小さなコーヒーチェーンに入った。あまりに寒くて、二人ともポットの紅茶を頼んだのは笑ってしまった。 手が寒いですよね。 そうそう、オレもかじかんでるよ。 先払いの

          5.超えてはならない線を目の前にして

          4.家族

          イルミネーションなんて、見ないよ、寒いし。 だいたい、このご時世に人混みに行くの?風邪ひくよ? 街中が、ジングルベルやイルミネーションに彩られる頃、我が家ではこんな会話が成立する。そもそも、クリスマスのプレゼント、もう頼んであるから大丈夫って、身も蓋もない会話も聞き飽きた。 そんな会話、何かをあげられると思っていたうちは、会話にも艶があったような気もするが、そうこうするうちに家族との距離が開いていった。 転勤の多い会社に身を置き、単身赴任を前提で家を購入。その家は妻の実

          3.はじまり

          距離が縮まった私たちは、本当によく世間話をした。 話題のお店、美味いスイーツ、天気や噂話、、 新しいエンタメに、J-POP、よく教えてもらった。 そんな時、繁華街のイルミネーションが始まった。 有名なイベントでもあるが、いい年した男が一人でイルミネーションに行くのは気が引ける。シングルマザーの彼女も、行きたいけれどきっかけがなかったようだ。 そんな風にして、初めての「デート」が決まった。 同僚や部下に知れるのは、やはり避けたかった。私のチームには複数女性もいたが、なか

          3.はじまり

          2.出会い

          出会いは ドラマチックではない。 私は転勤族の管理職。彼女は、部下。 彼女は子供もいるシングルマザーで、バリバリ働いている。公私ともにいろいろな苦労をしていることは、私は知っている。 彼女はとても優秀で、やる気もある。だから、仕事では鍛えた。 彼女は懸命に仕事で応えてくれた。また私が困れば、一番と言って良いほど助けてくれた。職場での関係は良好だ。 ある時、そんな彼女が失敗して上司である私が火消しをした。彼女はとても反省をしたし、そのプロジェクトの顛末を知りたがった。私も

          1.恋

          長らく恋などしていなかった。 自分の気持ちに蓋をしていたんだ。 愛情を注ぐ家族はいるけれど、恋しているような感情はない。 結婚して何年も経ってしまえば、だいたいどこの夫婦も同じだろう。大切なパートナーではあるけれど、それは親友であったり、家族であったり、絆であったり、そんな関係性だろう。 お互いが、お互いの役割を、ある意味で淡々とこなすのが、時間という魔物に取り憑かれた夫婦の実態だと思う。 明確な別れの理由がないから、そこにいるんだ。 一緒に積み上げた時間を壊すのが勿体ない