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10.それぞれの生活

彼の辞令が発表された。
予想されたことではあったけれど
とても驚いた。親しくなれたばかりなのに。
これから、お花見やピクニックや、
ユニバなんかも行きたかったのに。

なかなかうまくいかないものなんだね。

引き継ぎや引越し準備が忙しいのだろうけど、
毎日遅くまで働いている
夜の電話もだって幾夜もできない時があった
あの時はあなたを心配した
そして
もうダメなのかなって思ったりしたよ。

会えた時には、
あなたはいつも思い詰めたような顔をしていた。
それなのにいつも通り心配してくれて、
優しくしてくれて、
そして変わらない愛情を注いでくれた。

こんなにも愛されたことは、今までになかった。
本当よ。前の主人とも、こんなことはなかった。

私も、あなたを愛せていたから、かな。

会社のフロアであなたに会えないのは想像できない。
いつも楽しかった。
ちらっと顔が見えたり、
声が聞こえたりすると、潤う感じ。
心が満たされる感じ。
自分だけのあなたを知っているからドキドキするの。

4月からも、私の仕事は何も変わらないのよね。
新しい上司は、
持ち上がりだから知ってはいるけれど、
あなたと同じように組織をリードしてくれるかしら。
顔なじみだから、働きやすいけれど。

先のことを考えるとため息ばかり出てしまう。
考えないようにして、
いつも通りにしないと。。
残された時間を、しっかりしないと。

会える日には、ちゃんと話して、
これからのことも考えないと。。

まだ、一緒になれないしね

私をとても愛してくれているけれど、でも
あなたの気持ちを、いちばん大切にしてほしいな。



桜が咲いて、散っていった。

新大阪で、彼女の涙は忘れられない。
最後に、お弁当まで作ってきてくれた。

いってらっしゃいね。
着いたらすぐに連絡頂戴ね。

本当にできたひとだ。。
使い捨てパックに詰めてきてくれている。
えだまめ、唐揚げ、
ちくわにきゅうり、チーズのハム巻き
おつまみばかり。
分かってくれているじゃないか、新幹線で飲むことを。

涙がにじんだ

到着し、連絡し、既読になり電話して
時間は飛んでいく。

無事でよかった
安心したよ

新しい生活も、時間は飛んでいく。
仕事は忙しい。
私の「定期的な新生活」は
あまり新鮮ではない。
慣れっこで、多忙を極める。
公私共に刷新されるこの時期だけは、
世の中についていくのが精一杯である。
正直言えば、一番心身にストレスがかかる。

今回は管理スパンが、ハンパない。
広過ぎる。。
地方の中都市は、
商圏が点在していて運営効率が悪い。

多忙感を久しぶりに感じて、
ワクワクするどころか萎えている。

彼女に声を聞きたいのに、今夜も帰宅が遅い。
コンビニしか空いていない深夜。
ぱっと飲みにいけない、負の連鎖。。

こう言うい時に限って、いろいろとあるものだ。

ベテラン社員に対する無用な忖度
エース不在の組織
いつも誰かがやるだろう、のような他人感
仕事はそこそこ回っているが、
何となく一体感のない軸のない組織。

手腕を買われてきているのは自認しているが、
さすがにここはつらい

彼女のような働き手がいない。
プライベートを支えてくれる潤いもない。

この組織は、本質的などこかで
間違っているような気がしている。
しかし今回は「最適解」がみつからない。
見つからなくても乗り越えてきた。
「彼女」がいなくても、これまで乗り越えてきたんだ。

やってきたのに。

多忙は心身を蝕んでいく。

最近、何だか疲れが抜けないんですよねー
ランチで(年上の)同僚にぼやく。

男も更年期障害ってあるらしいですよ。
私もちょっと前までそうでしたから。

そうか、歳をとるとこうなるのか。
乗り越えないといけないけど、
やっかいだなぁ。

そう思っているうちは、まだよかったのだ。
やがて、取り返しのつかないことになる。

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