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11. 異変

専門科で改めて診察を受けてください

健康診断で、ある数値がひっかかって
内科でさらに血液検査をする必要がでた。
毎日、遅くて、不規則で、
コンビニ弁当で済ませてきたからか。
家飲みが増えてしまったからか。
毎日、やるせない夜が多いからか。

時々に、回数は減っていたが
彼女との電話は、できている。
あの声が、癒してくれているのに。


しかし、何かが調子悪い。

検査の結果が、想像を超えていた。
すぐに入院と手術が必要なほどに進行していた。
悪化していた。
転移は今のところないとのことであるが、
療養として入院が長く必要とのこと。
仕事の折り合いをつけてきてください、
とのこと。。。

びっくりはしたが、何か現実味がなく、
仕事を休まなくてはならない、
会社に手続きしなくてはならない、
などの機械的な感情が心を占めていた。

家族には連絡をとった。
そちらには帰らずこちらで入院すること、
長期休職が懸念されること。
学校もあるのでこちらでは手伝えない
ことなど。など。

もちろん彼女にも連絡を入れた。
とても驚き、悲しみ、
慌ててくれていたが、
入院となればお見舞いと称して会える、
などと前をむいてくれた。

会社での必要な引き継ぎや手続きを終え、
上司に挨拶して入院をした。
手術が近いし、この状況下なのでお見舞いは遠慮した。
同僚や部下からは
メッセージが届いてありがたかったし、
元気付けられた。

手術は順調だったが、予後は辛かった。
なにせ食欲がない。
何をするにも物凄い体力が消耗する。
気力が削られる。。。
長期入院はこれのリハビリなのだが、
とにかく身体がしんどいの一言だった。

助けられたのは、彼女からのメッセージだった。
こんな状況だから、新緑の季節だの、
子供たちの学校が再開して、
部活もあるだの、そんな他愛のない近況が、
病室に閉じこもっている自分にとっては、
最高の慰めとなった。

辛い時に、そばにいてあげられず、ごめんなさい。
と、彼女は言ってくれたが、そんなことはない、
このメッセージがとてもありがたい。
と、思っていたし、そのように返信した。
入院生活では時間が合わず、電話はできなかった。
スマホの画面に映るメッセージが、
本当に彼女の声で話しかけてくれているようだった。
本当に助けられた。

そんな毎日ではあるものの、
だんだんと精神をも蝕まれていく。
思うようにならない身体。
回復しない身体と減っていく一方の精神。
閉鎖的な病棟、誰にも合わず、
読書しても1日がとてつもなく長い。
鬱積した気持ち、沈んだ気持ち、
もうダメなんじゃないかと思う気持ちが
頭をいっぱいにする。

もうこのまま治らないかもな、
と思っている時間が長いと、
後悔ばかりが先に立ち、
彼女へのメッセージにも前向きに捉えられない。

彼女に、返信ができなくなった。
心が空虚のまま、数日がすぎ、
数週間が過ぎ去った。
彼女のメッセージも、
返信をしないことから頻度が落ち、
だんだんと疎遠になった。

そうして、数ヶ月が経過して、
まだ入院が必要との診察には、
怒りさえ覚えたが、身体は相変わらずだった。

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