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2.出会い

出会いは
ドラマチックではない。

私は転勤族の管理職。彼女は、部下。
彼女は子供もいるシングルマザーで、バリバリ働いている。公私ともにいろいろな苦労をしていることは、私は知っている。
彼女はとても優秀で、やる気もある。だから、仕事では鍛えた。

彼女は懸命に仕事で応えてくれた。また私が困れば、一番と言って良いほど助けてくれた。職場での関係は良好だ。

ある時、そんな彼女が失敗して上司である私が火消しをした。彼女はとても反省をしたし、そのプロジェクトの顛末を知りたがった。私も、指導と思って丁寧に説明した。

だいたいその失敗は、彼女が原因ではない。そもそも優秀な彼女が順調にプロジェクトを進め、運悪く相手の低レベルの考えが、最後に露呈してしまっただけ。結果論として、炎上して私が火消ししただけ。上司であるとか、男性であるとか、そんな後出しジャンケンはいつも強い。

彼女は、そういう男尊女卑的なこともちゃんと理解していた。
でも、自分だけではゴールにたどり着けなかったことを反省し、再発防止について私に教えを求めた。私もできる限り丁寧に説明と指導をした。

たぶん、このあたりだと思う。
このあたりから、双方が打ち解けあった気がする。

この「事件」がきっかけで、歳が近いこともあって会話が増えた。親しくなった、と言うのはこの時点ではまだ言い過ぎだけど、プライベートの連絡アプリを交換して、業務上ではないいわゆる雑談トークをするようになった。

40代の、枯れかけたオトナの雑談だ。

転勤族の私は、転々とする先に友人がなかなか出来にくい。彼女との、何気ないメッセージのやりとりは、生活に潤いをくれる。家族とも簡単なやりとりしかしていなかった私にとっては、その雑談はだんだんと潤い以上のものになっていた。

おはようございます、今朝も寒いですね。
お疲れ様でした、お先に失礼いたします。

シングルマザーの彼女にとっても、私との他愛のない会話も楽しんでくれていたようだった。

他愛のない会話も、繰り返すうちにそれぞれのプライベートを炙り出していく。そうやって、距離は縮まっていく。

週末は何をしているのですか?
何もしていないですよ、趣味のジョギングと昼から呑むばかりですw
健康によくないですよ、ひとり酒は。
そうなの? じゃ、今度付き合ってくださいよ。
いいですけど、子供の晩ご飯があるから昼呑みですよ ♫。

そんな時だった。
イルミネーションが始まった。

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