見出し画像

12.終わり

すべてが終わった。

もう何も考えられない。考えたくない。

生きるか死ぬかも、もうどうでも良い。
腹が減らない、
眠れない、
朝起きられない、
何もする気が起きない。
テレビが、会話が、聞きたくない。

身体は回復し、動く。
辛くない。
軽い運動から始めても良いようだ。

でも、そんなことはどうでもいい。

看護師と、リハビリの担当と、主治医以外に誰とも話さない。
家族と会話はしない。

求められた会社への書類は提出した。
必要なことはしている。

生きていない。実感がない。
死んでない、
ただ呼吸をしているだけ。
自分がなんでここにいるのかさえ、
分からない。

自分の存在意義が、理解できない。

精神科にかかった。完全なうつ病だった。


それからの記憶は薄い。とうとうその診断か。。。
ふたつの通院が続く。会社は休職となっている。
家族との会話は最低限に済ませていた、
もちろんうつの話はしていない。
復職後も制限がある、
その程度の会話で済ませた。

一番彼女には、別れを告げた。
詳細は伝えず、続けられない、とだけ。

わかった。とだけ言って、通話は切れた。

終わった。
すべてが終わった。

無理をしていたのだろう。
久しぶりに、コンビニでビールを買って、飲んだ。
こんなにも苦い飲み物があるのだろうか、と思うほど不味かった。
俺はビールも飲めないおっさんかだ。
昔は、ビールで苦労も喜びも分かち合ってきたのに。

うつ

この病名になるとは思っていなかったが、しばらくは何もせずに済む。
そう思えてきたのは、2週間が経ってからだった。

腹も減った、ビールも(医者には止められていたが飲んでいた)美味くなった、運動できるほどに身体は回復したから、日差しを浴びるのは嬉しい。

なんと言っても、痩せた。昔入らなかったデニムがはける。

病気は、自分を思い直す良い機会だ。

別れを告げたのは自分なのに。
相変わらず、彼女への想いはなくならない。
かと言って家族への想いは蘇らない、
終わったままだ。

こうやって、自分を見つめ直す時間が
たっぷりあって、そして、復職する。

会社にはとても迷惑をかけたし、勉強もしなおした。
さらにパフォーマンスを上げて、独りで頑張れる。

そうは、問屋が卸さない。

たった数ヶ月で、世の中は変わる。
客先も
マーケットも変わる。
同僚も変わる。
そして、自分を見ている社会が変わっている。

主治医は、頑張ろうとしてませんか?
無理ですよ、長い間休んでいたんですから。
回復には、その2倍以上の時間が必要ですよ。
つまり、1年です。

ながいな。
完全に治るまで、1年か。

じゃ、のんびりやるか。

ちゃんと治ってから、家族を精算して、
彼女を迎えに行こう。

しっかり治そう、直そう。。。


yu. 待っていてね。
必ず、迎えにいくから。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?