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9.変化

お互いの気持ちが最高潮に達する頃だった。

「よかったな、栄転だ。」
上司から声がかかり、異動内示が告げられた。
行き先は、地方の広いマーケットである。
確かに、今の部署より管理スパンは大きく、
やりがいのあるマーケットである。
しかし、だ。

辞令が下され、彼女も知ることになった。

わかっていたけど、今年だなんて辛過ぎる、せめて、来年、、

なにも言えなかった。

こちらはまだ離婚は成立していない。冷え切った完成に「着手」をしようと思っていた頃だったが、急に転勤(転居)が話題になり「家内」とコミュニケーションをとることになった。しかも頻繁に、

家具はどうする?
これを機会に、ある程度は買い換える?
足りないものはない?
そちらにはなかなか、いけない距離だわねぇ

自宅からは、さらに距離がある赴任先。
これを機会に「未来の話」をしないといけない。
わかってはいるし、いつかそうしようと考えていたけれど、突然それが表面化すると、なかなか億劫になる。
いけない距離か、、、


ね、奥様とはどんな会話してるの?

引越しの手伝いをしにきてくれる彼女は、
特に台所周りはテキパキしている。

なにも、、、質問攻めだけど。

そうなの?一応、心配されているのね。

こちらもトゲがある。

会えなくなることを想像して悲しむよりは、オンタイムのようにテキパキして気を紛らわす。
その時は二人で、きちんと話をして、悲しむことを乗り越えようとした。


発せられた辞令は金曜で、その夜は、彼女と改めて会話をした。
改めて、どんな生き方をしたいのか
お互いに、どうしたいのか
そして、待てるのか

いまの彼女との時間を、永遠だとは思ってなかったけれど、さすがに目の前に砂時計が置かれると、とたんに悲しくなる。

この関係を終えたくない。

辞令翌日、土曜の始発で新しいアパートを見に行った。

大阪と比べて、こちらは地方ですから、ご予算ですとこれくらいはご準備できますよ。との不動産の担当者。
確かにありがたいが、独りでは(当面)広すぎませんかね。
いえ、大は小を兼ねますよ、よくいわれるように。

あーめんどくさ。。。しかし、彼女との生活を思い浮かべると、少しは痛みが和らいだ。彼女を呼び寄せることになるかもしれない。そんな想いが、浮かんでは消えるものの、結局は大阪よりは大きな部屋に決めた。

大阪で彼女と過ごせる時間は時間は、残り少ない。
しかも週末は、何かと消えていく。やるせ無い気持ちで仕事もする。

どんな風に、何をかんがえているの
車で行っていい?長距離は慣れているのよ。
離れたくないの
このままでいさせて。。。

いろいろな会話をした、想いを交わした
迷いもあった

俺も会いに行くよ
いつもの大阪デートがいいだろう?
夏休みには、こどもと一緒においでよ
(その頃には何とか、、)


いつも相手を気にするような言動ばかりをしていた私に、

自分の想いくらい大切にした方がいいよ
一番大切なのは、あなたの気持ちだよ

彼女は何となくわかっていたのかもしれない。



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