マガジンのカバー画像

Naked Desire〜姫君たちの野望

43
舞台は西暦2800年代。 世界は政治、経済、そして文化のグローバル化並びにボーダーレス化が進み、従来の「国境「国家」という概念が意味をなさなくなっていた。 欧州大陸にある、…
運営しているクリエイター

#コンテンツ会議

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−14

「うっせえなこの野郎! なにを偉そうに!」
といいながら、男は歯を食いしばって、両方の拳を握りしめるる。
私はそばの店員に、警察を呼ぶように伝えると、改めて男に向き合う。
「この店は、全館禁煙だとわかってますわね?」
この店には、店内の目につく場所に「全館禁煙」という案内板が設置されている。誰にでもわかる場所にあるので、知らないと言うことはありえない。この男がなにか不埒な目

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−13

フリーダは「はーあ」とわざとらしくとため息をつき、頭を抱えてテーブルの上に突っ伏したまま動かない。
「私にとってエルヴィラは『よき友人』だけれど『よき上司』とは言えないわね」
「へぇへぇ、『よき上司』でなくて悪うござんした」
私が彼女に返事した直後、私は店内の雰囲気に違和感を覚えた。室内に、イヤな臭いと共に煙が漂っている。
私は、すぐさま視線を、煙が漂う方向に向けた。

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−12

「だって、本当のことじゃないの」怒気を含んだ口調で、フリーダも言い返す。
「皇族としてのマリナは、ちゃんとお勤めを果たしている。それは私も認めるわ」
フリーダはグアテマラを一口飲むと、言葉を継いだ。
「私が言いたいのは、情報機関の幹部としてのマリナはどうなの? ってことよ。FGIKFは表向き政府の諜報機関だけど、その実態は、極右勢力とその支援者がターゲットだからね。マリナ付

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−11

「メールの内容は?」冷たい汗が、背中を流れるのがわかる。
「あなたのコップを、簡易鑑定キットで検査したらしいの」
「どんな結果だったの?」
「ごくわずかだけど、睡眠薬の成分が検出されたって。で、詳しい検査をするためにキャサリンは、そのワイングラスを別部署に持参するそうよ」
「……」ショックのあまり黙り込む私。
「これでわかったでしょ? あなたがバスルームで溺死しかけたのは、

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−8

ギムナジウム(高校)に進学しても、相変わらず他人との会話や集団行動が苦手だったクラウスは、校内で孤立していた。
修学旅行前に開かれたホームルーム(HR)でクラウスは、クラスメートのいじめを理由に、ギムナジウム(高校)の修学旅行を拒否すると宣言した。いじめ問題は、心ある数人のクラスメートが動いたことで解決したが、結局彼は修学旅行を、無断で欠席した。
修学旅行は原則として、同一

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−7

「クラウス、起きないと遅刻するよ。さっさと支度しな」
クラウスと呼ばれた青年は、母親の罵声を目覚まし代わりにして、自室で目が覚めた。
う、うーんと彼はベッドの上で背伸びをすると、壁に掛かっているデジタル時計を見た。
時刻は、朝8時に近い。しまった、また寝過ごした。急がないと遅刻する。
ベッドから飛び起きて洗顔を済ませ 、身支度をする。今日の格好は、白地の丸首シャツと青色のデ

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁−5

声の方向に視線を向けると、清楚な雰囲気を漂わせた一人の令嬢が、恭しく頭を下げた。
彼女は、ルイーゼ・ヴィクトリーヌ・エリナ・ビルギット・フォン・ゾンネンアウフガング=ホッフヌング。私の妹だ。
「おはよう、ルイーゼ。ずいぶん早いのね」
「わたくしがが早いのではなく、お姉様がお寝坊なのですわ」
やや険のある口調で、妹が応じる。
妹の食卓に目をやると、皿の料理はきれいになくなって

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第一章 心の壁-4

「チッ」キャサリンは、忌々しげな表情で舌打ちした。
その表情には「話を逸らそうとしてんじゃないよ」という感情が浮かんでいた。
「夕べ、何か飲み食いしたか?」
キャサリンは夕べのことを私に尋ねた。
昨晩、私がオトコと一戦を交えていたことは、彼女もわかっていたはずだ。
夜分に上流階級の令嬢が、オトコを自室に引っ張り込むというのは、私たちの世界ではよくあることだ。もちろんキャサリ

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

ジリジリジリジリ──
枕元の目覚まし時計が、けたたましく鳴る。
「う、う、う──ん」
私─神聖プレアガーツ=ホッフンヌング連邦帝国グラーツ大公国第一皇女エルヴィラ・ジャンヌ・マリナ・カーリン・フォン・ゾンネンアウフガング=ホッフンヌング─は、目覚まし時計のベルを止めると、ベッドの中で思いきり身体を伸ばした。
上半身をゆっくりと起こすと、気のせいかまだだるい。
しまった、夕べのお楽しみは、1回だけ

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第4回 メモワール その4

「高そうなお酒ね? どんなお酒なの?」
と、私は夫に質問した。
「ヘネシー家当主6代目の生誕100周年を記念し、今から7世紀以上前のコニャックをブレンドして作られた一品だ。たぶん、ボトル1本20万フロリンはくだらないだろうな」
「ボトル1本で20万フロリン!」
貧困層の年収の倍以上じゃない! 私は絶句した。
このご時世に、吞気にそんな酒を引っ張り出す彼の神経がわか

もっとみる

Naked Desire〜姫君たちの野望

第3回 メモワール その3

そして勢いよく立ち上がると、窓に映る景色を見つめた。
暗闇の中に、部屋から漏れる光が、幻想的な光景を生み出している。
それを眺めながら、私は知り合いから、日本に古くから伝わる昔話を思い出した。
ある日、民のかまどから煙が上っていない光景を目にした天皇は、その理由を家臣に問うた。
家臣は天皇に、税金が重すぎるから、民のかまどから煙が立たないのですと返答した。
その話を

もっとみる