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小説「下水道管理人、始めました」EPⅣ:虚しい心
トエルは直感的に確信した。今目の前にいる人間こそが、あの正体なのだと。
「大丈夫ですか」
トエルは驚かせないように、静かに優しく話しかけた。しかし男はまだ線路をぼーっと無表情で見つめている。トエルが再度話しかけようとしたその時、どこからともなく無機質な音と共に人間と思われる声が聞こえた。
「間もなく2番線に、新札幌行が到着します。白線の後ろ側までお下がりください」
トエルは声の発生源が分か
小説「下水道管理人、始めました」EPⅢ:再び記憶へ
「そういえばトエル、以前体験した魂の記憶についてなんだが一つ気になる事があってね。
女の子が口にしていた影について……、そこにひっかかっていた」
マルとトエルは、相変わらず薄暗くどこか湿気っぽい地下道を歩いていた。
彼女はあれから数日後、日常生活を送れるようになり下水道管理人として復帰し今日からまた役目を果たすところだった。
「小さい女の子だったから極限状態で幻覚を見たのかもしれないし、杞憂
小説「下水道管理人、始めました」あらすじ
EPⅠ:下水道管理人、始めました
EPⅡ:記憶
EPⅢ:再び記憶へ
EPⅣ:虚しい心
小説「下水道管理人、始めました」EPⅡ:記憶
「ちょっと、こいつしぶとすぎない!?」
シャールが少し息を切らしながら言う。
穢れた魂の攻撃は止まる気配なく、怒涛の勢いでマルとシャールを追い込んでいた。
「流石にまずいね、完全にジリ貧になっている。最悪、施設破棄かも」
マルの言葉を聞いて、より険しい表情になるシャール。
「施設破棄、一番避けたいわね……」
二人が次の攻撃に備え、体制を立て直す。
「……」
しかし、一向に穢れた魂は動
小説「下水道管理人、始めました」EPⅠ:下水道管理人、始めました
――穢れを浄化し自然に還す。
そうする事で命の循環を穢れ無きままに保ち、天使は安泰を、悪魔は衰退する。
これが下水道管理人の使命である。
「……、って言うけどさぁ!!」
小さな部屋に不満げな声が響く。
それをなだめるように、小柄な天使は言う。
「まぁまぁ、確かに希望していた上水道管理人にはなれなかったけど、凄く大事な役割だって聞くし」
それを聞いた先ほど不満げに言葉を発していた天使は、ベ