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子どもは大人のミニチュアではない

子どもというのは、大人がそのまま小さくなったのではない。

こんなことくらいわかっているよ、
と言われるかもしれない。

生まれて間もなく歩けもしない乳児が
目を閉じても段差があっても歩ける大人と
同じであるはずがない、のだ。

子どもは大人を基準に考えるとできないことも多く、
不完全かもしれない。
ただ、その発育発達段階においては、完全である。
不完全の完全である。

だけれども、
スポーツの現場においては
大人と同じルール、
同じコート、
同じプレイを求めることが多い。

競技規則というものはあるが、
子どもの世界において、
競技規則に準じてプレイをすることが大事なのではない気がする。

もちろん、
ルールを守るとか、
怪我をしない、させないようにするとか、
フェアプレイするとか、

大切なことがある。

それを踏まえたうえで、
子どもがどう楽しむのか、
どう親しんでいくのか、
がポイントになってくると思う。

スポーツや競技の入り口は
大人と同じ厳格なルールや正規のコートや用具を使う必要はない。

以前、ハンガリーで見たミニハンドボールはこんな感じ。

1分ちょっとなのでぜひご覧いただきたい。

画質が悪くて申し訳ない。
コートの大きさはテニスコート。
サーブを入れるためのラインがそのままゴールラインになっている。
ゴールラインは曲線部分はなく直線。
人数は3人。
ボールは握りやすいようにスポンジボール。
指導者はずっとしゃべっているが、
笛は極力鳴らさない。

ハンドボールというものは、

ボールをゴールにいれる。
ボールをゴールに入れられないように守る。

これしかない。

この動画におけるポイントは以下になる。

●コートを小さくしている。
●人数を3人にしている。
●ステップやファウルをジャッジするよりもプレイをさせる。
●ゴールが小さい。


●コートを小さくしている。

まず、コートの大きさを工夫している。
なんなら、すでにあるラインを使っている。

ハンドボールだからゴールエリアラインは曲線でなければならない。

というバイアスがあるのではないだろうか。

もちろん、曲線をもちいて、
ウイングというポジションがあるからこそ、
奥行きとひろがりが生まれて、
ハンドボールの面白さがアップするというのはわかる。

ただ、ハンドボール初級者や、
年齢が低い子どもたちに対して、
ウイングからのシュートを求めるのも、
難易度は高い。
もちろん、倒れ込みシュートなどの模倣をしたり
スピンシュートにチャレンジしたりするのは
大いに歓迎するべきだが、
最初からポジションシュートを打たせるのは、
楽しい<できない
となることのほうが多いかもしれない。

そもそも、大人と比べて形態的にも小さいので、
移動するにしてもエネルギーが必要になる。

ゴールからゴールまでの距離が長いほどに、
その間のミスの発生率も上がるので、
コート自体を小さくするというのは、
ハンドボールを楽しむという部分において、
とても大事になってくる。


●人数を3人にしている。

ハンドボールは1×1が基本だ。

それで負けなければ、試合にも負けない。
ただ、1×1だと、どうしても手詰まりになってしまう。

では2×2はどうだろうか。

ボールを持っている人と
ボールを持っていない人の
2人しかいない状況だ。

最終的にはこの2×2という状況から、
いかにして数的優位な状況にするのか、
質的優位な状況にするのかがポイントになってくる。

が、初級者の場合、
前を攻める→攻めきれない→パスを探す
という流れになると思われるが、
パスの選択肢が1つだけだと、
どうしてもプレイが止まってしまう。

3×3だと、少なくとも選択肢が3つできる。
プレイが止まる、という状況を避けることができる。

そして、人数を少なくすることで、
すべてのプレーヤーがボールに触れることができる
ことが考えられる。
これはプレイに参加する、ということになる。

何よりも大切な「プレイをする。」
という機会が多くなる。

小学生の試合を見ていると、
発育発達が早く、形態的に大きな選手や
運動能力が高い選手ばかりボールを触っていて、
サイドにいる子はボールも触らずに、
指導者に走れといわれて、
コートのライン際をただただ往復している、
みたいな光景は見られない。

3人というプレーヤーの数は、
プレイ機会の創出と増加、
戦術的な広がりなどは最適な人数かもしれない。

プレーヤーとしても、
ポジションの早期専門化を図るよりも、
様々なポジションでハンドボールとしての
標準的な技術と戦術を育むのに、
3×3という設定は最適だ。


●ステップやファウルをジャッジするよりもプレイをさせる。

選手にとって最も大切なことは
プレイする
ということだ。

指導者のいうことを聞く
でもなければ、
指導者の求める答えを出す
でもなければ、
指導者の前だけ言われたことをする
でもない。

プレイするということが何よりも大事だ。

ということを考えると、
指導者としては
「プレイさせる」
ということが最も大切なことになる。

ルールや規律を守らせるということも大切だが、
プレイさせるということを忘れてはいけない。

ルールを先に教えてしまうと
ルールを守ることを目的にしてしまう。

特に初級者はステップは3歩までと教えたところで、
3歩という感覚がわからない。

上級者でも、3歩を数えているわけではない。
感覚的にとらえていて、
リズムで覚えていることが多い。

回数をこなしていけば、
歩数などは感覚で覚えていく。
最初から厳格にしていてはプレイが分断され過ぎて、
プレイの面白みがなくなってしまう。

ダブルドリブルやラインクロスなども、
多めに見てあげて、プレイを継続させてあげた方がよい。

指導者も笛を吹くよりも、
言葉としてプレイを促すようにした方がよい。

個人的な話だが、
大学の授業でハンドボールを教えていた時は、
ステップやドリブル、ラインクロスに対して
ほとんどターンオーバーとせずに、
プレイを続行させていた。

コートの外に出たとしても、
必死にボールを追いかけているが学生を見ていると、
「はい、違うよー。相手ボール」
なんて言えなくて。。。

相手ボールのときは、
審判としての権限として、
「ゼッケンのボール」
「キーパーから」
と指示をしてあげることが多かった。

実際に学生の感想としては、
「高校のときはルールから入って学んだが逆方向からとして、
プレイをしながらルールを覚えていくというのが新鮮だった」

とあった。

最初はやはり、プレイをすること、が大事だ。
なぜならば、そのほうが面白いからだ。

最終的にジャッジをしたり評価をしたりするのが
指導者の仕事でもあるが、
そもそもハンドボールをプレイするプレーヤーがいなければ、
指導者も存在しないので、
まずはプレイをさせる、促すということを
大切に考えていきたい。


●ゴールが小さい。

正規のゴールを使用すると、
物理的に届かないという高さが出てくる。

そうすると、どんなに山なりでも、
「上を打てば入る」
ということになる。

ゴールキーパーがどうこうではなく、
上を打つことが正解になってしまう。

これだとシュート力がつかない。

上を投げるとかいう部分では
投力としてはつくのかもしれない。

でも、ゴールキーパーを動かしたり、
駆け引きをしたりする
本当の意味でのシュート力はつかないのだ。

指導者の中には「届かないんだから上を打て」
という指導をする人もいるが、
届かないという理由で上を打たせるのは反対だ。
その先がないから。

ゴールが小さい、ということは、
「シュートを狙って打つ」
ということが大事になってくる。

狙うということは、
プレーヤーの意志が出る。

ゴールキーパーをずらすとか、
動かすとか、固めるとか、
工夫をしてシュートをすることになる。

そのためにジャンプを工夫したり、
タイミングを工夫したりする。

足の出し方や、手の位置などを工夫するようになる。

これが「シュート力」をあげることにつながる。

球速やコントロールも大事だが、
いかにシュートを探求するのか、
という部分でシュート力を上げる方法として、
ゴールを小さくするというのは理にかなっている。

中学生や高校生でも、
ゴールの大きさを制限してみてはどうだろうか。
正規のゴールでも、上の部分を覆うようにして、
工夫している指導者も多い。
適切な制限というのは、
制限下での工夫を否応なしに生み出し、促す
ので、
制限の塩梅。というのが、
指導者のテクニックというか、
トレーニング方法論になってくるのかもしれない。


まとめ

ハンドボールの競技特性として、
学校体育の教材に適している。

ツイッターで見つけた学校の先生が、
授業実践として以下のようにまとめている。

1922年に大谷武一先生が
日本に初めてハンドボールを紹介して99年。
来年で100周年である。

ハンドボールの競技特性としての教材的価値が高い、
というのは、スポーツ庁の人間としても認めているところ。

いま一度、ハンドボールとしての価値が再認識されたらうれしい。

こんな風にハンドボールにたくさんの意見が出てくる。

いまハンドボールをしている子どもたち。
これからハンドボールを選択してくれる子どもたち。

より良いものを提供できるようにしていきたい。

だからこそ、
子どもは大人のミニチュアではない。
ということを認識して、
子どもの発育発達に合わせて、
用具や設定を工夫していきたい。

一番大切なのは、
プレイすることなので、
どうやったら自発的主体的なプレイが発生するのか、
技能の習得が進むのか、
正規のハンドボールというスポーツにつながっていくのか、
模索しながら、共有しながら、
より良いハンドボールと
ハンドボールっぽいものを広めていきたい。


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