マガジンのカバー画像

今日も、読書。

65
読書の記録。明日読みたくなる本を。
運営しているクリエイター

#おすすめ本

今日も、読書。 |幼い頃のワクワクした読書を、無意識に探している

今日も、読書。 |幼い頃のワクワクした読書を、無意識に探している

幼い頃、読書は今よりももっと新鮮で、キラキラしていた。そんな気がする。

私が本格的に本を読むようになったのは、大学生になってからだ。

しかし、高校までの期間にも、ごくたまに本を読んでは、「読書って楽しい」となんとなく感じていた。

小学生の時には、エミリー・ロッダのファンタジー小説『デルトラ・クエスト』に夢中になった。中学生の時に伊坂幸太郎さんの『ラッシュライフ』に度肝を抜かれ、高校生の時に森

もっとみる
今日も、読書。 |内田洋子さんの魅力を伝えたい

今日も、読書。 |内田洋子さんの魅力を伝えたい

内田洋子|カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想

読書ラジオ「本の海を泳ぐ」、2回目のテーマ本として選んだ作品は、内田洋子さんの『カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想』。数ページほどの短編が20作品収められたエッセイ集だ。

「本の海を泳ぐ」で自分が選書をする番になったら、最初は内田洋子さんの作品にしようと決めていた。内田洋子さんの作品の魅力を、少しでも多くの人に知ってもらいたかったからだ。

もっとみる
今日も、読書。 |学生だった、あの頃の私と出会う本

今日も、読書。 |学生だった、あの頃の私と出会う本

伊吹有喜|犬がいた季節

昭和から平成、そして令和へ。移り変わる時代の中で、変わらずあり続ける、学び舎の高校。

生徒たちが入学、卒業し入れ替わっていく中で、学校で飼われている犬のコーシローだけが、不変の視点を持っている。

昭和63年、コーシローは高校にやって来た。以来「コーシローの世話をする会」の生徒たちが、代々コーシローの世話をする。

本作は、そんな世話をする会のメンバーとコーシローを中心

もっとみる
今日も、読書。 |読書とは、他者の人生を追体験することだ

今日も、読書。 |読書とは、他者の人生を追体験することだ

日本文学史上、直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞を果たした例は、わずか2例しかない。

ひとつはまだ記憶に新しい、佐藤究さんの『テスカトリポカ』。そしてもうひとつが、遡ること20年近く、熊谷達也さんの『邂逅の森』である。

通例的に、同一作品に直木賞と山本周五郎賞を両方受賞させることは、避けられてきた。しかしそんなハードルを乗り越え、見事ダブル受賞を果たした小説には、他の小説にはない圧倒的な力がある

もっとみる
今日も、読書。 |信念と時代の狭間で

今日も、読書。 |信念と時代の狭間で

カズオ・イシグロ|浮世の画家

カズオ・イシグロさんといえば、2017年にノーベル文学賞を受賞したことで有名だ。長崎で生まれ、幼少期にイギリスへ渡り、以来英語で小説を執筆している。日本にルーツを持つ作家がノーベル文学賞を受賞したということで、当時非常に話題になった。

『わたしを離さないで』『日の名残り』といった彼の代表作に、「日本」の要素はあまり見られない。しかしデビューしたばかりの頃は、日本に

もっとみる
今日も、読書。 |世界を動かすのは、いつだって個人の努力と好奇心だ

今日も、読書。 |世界を動かすのは、いつだって個人の努力と好奇心だ

J・ティプトリー・ジュニア|たったひとつの冴えたやりかた

聞き惚れてしまうような、美しいタイトル。

原題は「The Starry Rift」。直訳すると「星の亀裂」とでもなるのだろうか。浅倉久志さんの邦訳の、素晴らしさが光る。

J・ティプトリー・ジュニアさんの『たったひとつの冴えたやりかた』。本作は、3つの中編作品から成る。

宇宙の大図書館で、連邦草創期の人間(ヒューマン)に関する3つの文

もっとみる
今日も、読書。 |激動の日本で、漂うように恋をした

今日も、読書。 |激動の日本で、漂うように恋をした

2022.7.31-8.6

林芙美子浮雲

あらすじの「敗戦後、激動の日本で漂うように恋をした、男と女の物語」という文章が、堪らなく良い。

著者の林芙美子さんは、明治から昭和にかけて活躍した小説家。自伝的な作品や世相を反映した作品が多く、自身の複雑な生い立ち、波乱万丈な人生、そして太平洋戦争での経験が、彼女の作品に独自性を持たせている。

『浮雲』は、彼女が心臓麻痺で急逝する直前まで執筆されて

もっとみる
今日も、読書。 |イタリアらしい恋愛とは?

今日も、読書。 |イタリアらしい恋愛とは?

2022.7.24-7.30

内田洋子|どうしようもないのに、好き イタリア15の恋愛物語

イタリア人の「恋愛」をテーマに紡がれた、15編の短編集。各短編の恋愛物語は、内田さんが実際に知り合った人々の話をベースにして書かれている。

内田洋子さんの鋭い観察眼や、相手の懐に入っていく温かな人柄、切れ味の鋭い考察、そして表現豊かな文章が、余すことなく楽しめる一冊。人と人との関係性を深掘っていく「恋

もっとみる