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【A-第2問】その「咳(せき)」本当にただの「風邪」?(後編)

前編に引き続き、「慢性咳嗽(がいそう)」について学んでいきます!

前編はこちら👇


慢性咳嗽の原因疾患とその特徴の組合せで誤っているのはどれか。

a. COPD ー 喫煙歴
b. 咳喘息 ー 季節性
c. アトピー咳嗽 ー 咽喉頭掻痒感
d. 胃食道逆流症 ー 後鼻漏
e. 副鼻腔気管支症候群 ー 膿性痰


d. 胃食道逆流症(GERD)

症状
最も分かりやすい症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。胸やけに伴って、胃の内容物が口まで戻ってくる逆流が起こることもあります。胃の内容物が口に達すると、のどの痛み、声がれ、せき、のどにしこり がある感覚(球感覚)を引き起こすことがあります。

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メカニズム
食道粘膜のただれ、炎症がある場合「逆流性食道炎」、ない場合「非びらん性胃食道逆流症」に分けることができます。どちらも胃にある胃酸が食道へ逆流することによって発症します。

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その原因は①食道と胃の境目の筋肉「下部食道括約筋」が弱くなると逆流を防ぐ噴門が開き、胃酸が逆流しやすくなること。②食道が食物を胃に送るための運動(蠕動運動(ぜんどう))が悪くなり、逆流した胃酸が戻りにくいこと。③食べ過ぎなどで、胃の中の圧力が高くなって、胃液が押し上げられること、また脂質を多くとることで胃液の分泌量がおおくなること。などがあります。

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食道の炎症が胸やけとなり、のどや口まで胃酸が上がる呑酸(どんさん)という症状が起きます。また、逆流した胃酸を気管に吸い込むことで慢性的な咳が出ることもあります。非びらん性胃食道逆流症は炎症は見られないものの、粘膜が胃酸の刺激に過敏に反応するため、逆流性食道炎と同じような症状がでます。

原因
体重増加・脂肪分の多い食物・カフェイン入り飲料や炭酸飲料・アルコール・喫煙が原因としてあげられます。それぞれ下部食道括約筋の弱化や蠕動運動の低下、胃酸の過剰分泌や胃の圧迫などの症状の原因となります。また、食道と胃の境目が本来の横隔膜より上にせりあがってしまう食道裂孔ヘルニアも一因になります。

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治療
胃を酸性に保つプロトン(水素イオンの一種)を輸送するプロトンポンプという物質を抑制するプロトンポンプ阻害薬が有効です。代替薬として、ヒスタミンH2受容体拮抗薬や消化管運動機能改善薬も使われます。

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e. 副鼻腔気管支症候群

症状
8週間以上続く呼吸困難を伴わない咳といった呼吸器の症状や、鼻水がのどに垂れてくる、鼻汁、咳払いなどの副鼻腔炎の症状の両方が存在します。

メカニズム
慢性的に、そして何度も繰り返し、上気道と下気道に炎症をおこす病態です。

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副鼻腔炎になると、睡眠中などに鼻汁が喉の方に降りていってしまい、気管支に入って気管支炎の原因になります。また、口呼吸が多くなるため、加湿・加温・清浄化されていない空気が吸入されて、気管支炎を誘発することもあります。

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原因
かぜのウイルスや細菌、アレルギーなどにより副鼻腔に炎症が起きることが原因となります。

治療
細菌のリボソームでのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑えるマクロライド系抗生物質と肺や気道の分泌液を促進し、痰を体外に排出しやすくする去痰剤が有効です。軽症の場合は去痰剤だけでも効果が出ます。


ここで問題の疾患とその特徴の組み合わせを確認していきます。

a. COPD ー 喫煙歴
b. 咳喘息 ー 季節性
c. アトピー咳嗽 ー 咽喉頭掻痒感
d. 胃食道逆流症 ー 後鼻漏
e. 副鼻腔気管支症候群 ー 膿性痰

このうち(d)の胃食道逆流性症は、胃酸が逆流し、食道から口にかけて症状がでる病気であるため、後鼻漏は誤りとなります。

ちなみに後鼻漏は異常な鼻水がノドの方へ流れ落ちてくる症状であり、eの副鼻腔気管支症候群の原因となります。

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おわりに

さて、今回は前編・後編に分けて長引く咳の原因となる病気について一つずつ見ていきました!
今後は咳という症状をいろいろな可能性から見て、予防や治療ができるようになるかもしれませんね!

次回は血液検査について学んでいきます!お楽しみに!

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