コーチングスキル復習のための教科書
こんにちは!のぶさんで親しまれている、MeCoFa川上です。
この記事では、コーチングを学んで活動していくんだけどちょっと復習したい人、コーチングを学んでしばらく時間が経ったけどやっぱり復習したい人を中心に、行動変革を促すコミュニケーションスキルの基礎について、MeCoFaで使っている企業向け基礎講座の教材をベースにお伝えしていきます!
元々は、企業でのマネジメント層に行動変革を促すコミュニケーションについて伝えている部分ですが、コーチの皆さんにも活用いただける内容です。
画像などは、MeCoFaのロゴやコピーライト部分を含めて頂くことをお約束いただけるならご自身のためにどんどん保存してください!
ちょっとオリエンテーション
MeCoFaは主に企業さん向けの組織開発を事業の柱の一つとしています。僕自身が大企業にいてさまざまな組織に属し、いろんな視座で仕事をしてきた経験があります。その経験の中には「絶対こうした方がいいのに、なんで誰もやらないんだろう」と感じることが多かったです。
現在サポートさせていただいている会社組織でも、「毎年部門目標で挙がる項目があるけど毎年できていないこと」があります。それなのに、そのままになっている。。。
こう言ったやり取りをたくさんやっています。企業の組織が目標設定するときはパーソナルとは異なり、ある程度は会社の方針などに従っていく必要があります。向かう方向はなんとなくわかっていて、数値目標やそれを細分化した時の行動目標も見えている場合が多い中で、「でもできていない」部分があることを、私自身も組織をマネジメントする中で何度も経験してきました。
結局のところ、しっかり話に耳を傾け、彼ら彼女らが「言っていないけど本質的に抱えている問題は何か」に対して、コーチとしても本気で向き合って、問いかけていくことが重要なのです。
ちなみに、HR総研が調査した「社内コミュニケーションに関するアンケート」ではこのようなことが結果として示されています。
行動変革コーチングとは
一般的な1対1のコーチングと基本的な考え方は同じです。相手との関係性を作り、相手の中から答えを引き出し、相手の行動を促進するコミュニケーションであり、安易なアドバイスを行うことはありません。ただ、育成的な側面からティーチングの要素や解説を行いながら進めることはあります。
対象が組織やチームであることから、よりクリティカルな課題の定義と、全員が同じ課題を認識できるよう共有すること、課題を定義してから解像度の高い目標を設定することを重視しています。
だからこそ、心理的安全性や多様性に重きを置いています。
コーチングが機能する領域は、個人でも組織やチームでも同じです。めちゃくちゃ緊急性の高いことよりも、時間をかけてでもベースを作っていく事柄などに向きます。
さて、いよいよスキルの部分に入っていきます!
行動変革コーチングを進めていく上で重要になるのが、3つのスキルです。
コーチングスクールや講座、書籍によって、さまざまな表現でスキルについて書かれていますが、ここでは3つのスキルに分けて理解を進めていきます。
傾聴のスキル
どんなに素晴らしいことを話していても、受け取る人の準備ができていない状態では、いくら話しても受け取ってもらえません。
「あの人の言うことだったら信じられるけど、嫌いな上司には何言われても入ってこない」と思ったことがある人は少なくないでしょう。
伝える人と、受け取る人の関係性ができていることが、ちゃんと伝わるための条件なのです。
多くの場合、伝える側は「関係性ができている」と思っていますが、受け取る側はそう思っていないという前提を理解しておきましょう。
その関係性を作っていく一つの要素が「傾聴」なのです。
私が銀座コーチングスクールでコーチングを学んだ時の恩師から「3つの聴くを意識して!」と言われ深く心に残りました。それを実践し、その後、銀座コーチングスクールで講師をしていた3年間、すべての受講者に同じことを伝えてきました。
コーチングにおいて、「どんな質問をするか」に焦点が当てられがちですが、基本は「聴く」ことです。特に、言えていないことを表現できるように促す質問や、言わないことに気づいてもらうような質問をしていくことが、その人やチームが抱えている本質的な課題に近づくためには不可欠で、それらを聴くスキルが必要とされるのです。
私が企業で事業企画のマネジャーをしていた時の、32歳の部下K君との半年に一度の面談での失敗事例をご紹介します。
K君は、翌年、係長級への昇進試験を受ける時期が来ていました。そんな時
K君への私の評価は、「言われたことは期限を守ってしっかりやってくれるけど、それ以上に自分の考えで動くことはない。」周囲の評価も同じで、私としては完全にレッテルを貼って、先入観を持って対峙していたと、今振り返ると思います。だから、彼が話してくれた瞬間に「いやいや」という感情が湧いてきて、「全く聴けていない」状態になっていました。
私は半年後に別部門へ異動しましたが、K君は2年後に会社を辞めました。
では、どんな聴き方ができていたら良かったのでしょうか?
ちゃんと傾聴ができていたとしたら、彼はもっと自分の想いを私に伝えてくれて、お互いに腹落ち感のある道を作れたかもしれません。
最初にしっかりと傾聴し、話せる雰囲気(=何でも聴くよ!という雰囲気を感じてもらう)を作ることで、その後の質問にも素直に答えてくれます。
そして、お互いに腹落ちし、理解し合える時間にできたのではないかと思っています。
承認のスキル
相手との関係性を作っていく上で実践したいスキルが「承認のスキル」です。僕が銀座コーチングスクールで講師として受講者にお伝えしていたのも「承認していることを相手が感じてくれないと意味がないので、承認を伝えるスキルでもあります」と言うこと。こちらがどれだけ「あなたのことを承認しています」と思っていても、それが伝わっていなかったら、相手は「承認されていない≒無視されている」と感じるのです。
特に、承認にはいくつかのレベルがあることを認識しておく必要があります。ここでは3つの段階をお伝えします。書籍等によっては5つのレベルと書かれていることもあります。
結果承認は、いわゆる「褒める」に似ている承認です。できたことや出てきた結果に対して承認していく行為です。
行動承認は、プロセスを承認することです。一般的には何かに取り組んだ時に100点できていないと「できていない」と判断されることが多いです。ただ、100点じゃなくても、10点でも20点でもできていることがあると、その部分を「できたね」と承認することです。「できていない」「できていない」と感じてしまうと、自己肯定感がどんどん下がっていき、モチベーションも上がりません。一方で、「できている」と認識することを繰り返せば、自己肯定感は上がります。同じことをどう捉えるかという「視点」の違いだけなので、できていることを「できている」と承認することが重要になるのです。
存在承認は、最も難しい承認です。スクールで講師をしていた時には「あなたがそこにいてくれることに、ありがとう」と感じることです。とお伝えしていました。
例えば、挨拶するときに名前を呼ぶことも、その一つです。「あなたという存在を私は感じています」というメッセージでもあります。
質問のスキル
傾聴、承認をしっかり行い、関係性ができているからこそ、深い質問ができます。逆に、関係性ができていない状態で質問しても、相手は本音を話さないどころか、まともな答えを返してこないでしょう。先ほどのK君と私の会話の事例からも、雰囲気を作ってから質問に入ることが重要だとわかりますし、例えば、同じ質問をされるにしても、信頼関係のできている上司から質問される場合と、嫌いな上司から質問される場合では、受け取り方も答え方も違うはずです。
つまり、質問は、傾聴・承認ができていてはじめて機能するのです。
また、意図的な質問を繰り出すためには、目的を意識する必要があります。多くの場合、質問には以下のような目的があります。
自分の情報収集のための質問
相手の中にあるものを引き出すための質問
意思決定を促すための質問
特に、コーチングでは相手の中にある答えを引き出す質問を多く使います。
普段感じているモヤモヤなど「なんとなく」という感覚は、実は重要で、そう感じる要因が対象者の中にあるのです。ビジネスの現場でも「問題は理想と現実のギャップ」と言いますが、まさに、対象者が感じるモヤモヤというのは、その人の理想と現実のギャップなのです。意外に直感というのは大事で、対象者自身もそうですが、コーチ側も「おや?」と違和感を感じる時というのは問いかけるポイントであることが少なくありません。
ただ、そいう時は、なんとなく問いかけづらい雰囲気があって、経験が浅いうちは躊躇してしまいがちです。チームに対するコーチングにおいても同様。
そこにあえて、勇気を持って、向き合い、踏み込んで問いかけられるようになると、対象者や組織が抱える本質的な問題に辿り着き、真に行動を変革するサポートができるのです。
なんとなく対象者が決めたことを実行し、振り返るだけでは成果は出せないんですね。
そういった、本質的な問題を探り、引き出していくために理解しておきたいのが、質問には縦と横があるということです。
縦の質問とは、抽象度を変える質問です。5W1Hの質問を使って、深く具体的にしていくチャンク・ダウンや、俯瞰してみる時のチャンク・アップをすることで、さまざまな視点で物事を捉えます。
横の質問とは、視野を広げる場合に用いるスライド・アウトです。人は話をしていると、どんどん話していることの中心に向かって視野が狭くなりがちです。また、「困っていることは何ですか?」と尋ねられたときに、本当に一番困っていることが出てこないことも少なくありません。いくつか考えたときに「他には?」と問いかけることで、「そういえばこれが一番困ってるんです」と出てくる場合もあるのです。
質問のスキルとして最後にご紹介するのが、ポジティブな問いかけ方をすることです。
同じようなことでも、問いかけ方で相手の反応は変わります。
問いかけられた側も、ポジティブな感情だと広く答えを見つけられますが、ネガティブな感情だと、答えが狭くなりますし、最悪の場合まともな答えが返ってきません。
これは、日常から練習できますので、日々使ってみてください。
スキルを成り立たせるマインド
ここまでスキルについて解説してきましたが、読んだだけでできないことは、コーチングを学んだ人なら理解できると思います。
上記の通り、いくつか大切なことがありますが、個人が相手でもチームが相手でも最も大切にしたいことは、相手が自分で考える力を持っていると信じることです。なぜなら、これを信じられなくなった瞬間から「教えたい」「アドバイスしたい」「待てない」状態になるからです。コーチとして大切なことは、相手の主体性を引き出し、成長をサポートすることだとすると、上記は、相手の考える時間を奪い、主体性を奪い、成長の機会を奪うことになるのです。だからこそ、相手が従分で考える力を持っていると信じることが最も重要だと、私は思っています。
もう一つ重要なことを挙げるとすれば、自分の価値観に基づく評価を保留することです。
傾聴する時に意識しなければならないことであり、通常の会話の中では難しいことです。これは、コーチがただの話し相手ではなく特別な存在であるために重要なマインドです。
質問の構造(GROWモデル)
意図的に質問をしていく上では、縦と横の質問を駆使し、様々な質問をしていきながらも、常に全体像を意識しておく必要があります。
多くの場合、相手は質問の回答に集中していき、周りは見えなくなります。だからこそ、常に質問者は全体を俯瞰してみながら、この会話の行き先はどこなのか、現在位置がどこなのか、迷子にならないようにしなければなりません。
目標を設定し、そこに向かって進むコーチングをしていく中で最もポピュラーなフレームワークがGROWモデルです。
GROWとは、成長していくサポートをする意味合いと、4つのパートの頭文字をとったものです。基本的には、GROWの順番に進めていきます。
日常会話では、誰かに相談された時に、すぐに「こうしたらいいんじゃない?」といった解決策(Option)の話題になりがちですが、まずは目標についての具体化を行います。なぜなら、行き先が明確でないまま進んでいくと、すごく頑張っているのにゴールに辿り着かない状態になるからです。
例えば、富士山の山頂を目指したい!と思っているのに、足元だけをみて一生懸命登っている山が、気づいたら高尾山だった。という状況に陥ってしまうからです。
また、その目標を達成した先にどんな夢があるのかなど、ワクワクすることにつながる目標であることをイメージしておくことも重要です。
だからこそ、目標設定に時間をかけることが大事なのです。
ここからは、GROWの各パートで有効な質問例をご紹介します。
解像度の高い目標設定
GROWモデルにおいても、目標設定が大事だとお伝えしましたが、目標を立てても達成できない要因の一つに「目標の解像度」が影響しています。
あなたは「イメージはできていたんだけどな」と感じたことがあるかもしれません。上記写真は同じものなのですが、解像度が違うことは見てわかると思います。
例えば、料理を作るという行動目標を立てたとして、その完成図ですといって、左の写真を示された時と、右の写真を示された時では、どっちがより完成度の高い料理を作れますか?もしかすると、そもそも左の写真を見ただけだと、材料は何を変えばいいのかから迷うかもしれません。
普段の生活の中では、この「なんとなくの目標」がたくさんあります。
私がよくコーチングスクールやMeCoFaの現場で受講者さんにお伝えする例として、二人で目標を共有する場面です。
B君、ちゃんと復唱までしてくれて、これでお互いの認識はバッチリ!
さて、私とB君は明日、名古屋で会えるのでしょうか?
本当に奇跡的に会えることがないとはいえませんが、そもそも私がいっていた「名古屋」とは名古屋駅をイメージしていて、、B君は「大須」と呼ばれるエリアだと思っていたので、実際には会えないのです。
もっと解像度を上げるためには何が必要でしょうか?
そうです、5W1Hの情報を追加するのです。
このように、時間や具体的な場所を指定すれば、きっと会えることでしょう。
でも、あなたはきっと家を出る前に迷います。
・服装はどうしようか?
・靴は何を履いて行こうか?
・持ち物は何が必要なんだっけ?
そこで迷ってしまうと、一歩目を踏み出すことを躊躇してしまいます。
目標の解像度を上げるためのフレームワークの代表的なものにSMARTというものがあります。
毎回全ての事項を入れる必要はりませんが、具体的で期限がある目標を立てられると、達成される可能性は高まります。
大人の能力開発
「学び」という言葉から連想するのは「教えてもらう」ことでしょうか?それとも「自分で感じる」ことでしょうか?
確かに色々なことを教えてもらうことで、自分がスキルアップしてきたことは間違い無いです。でも、発見してきたことや体験してきたことでのスキルアップの方が大きいのでは無いかと思います。
実際に、米国のロミンガー社の研究では、大人の学びの70%が自分の経験から得られるという結果が出ています。
学びの源泉は、自分の経験にあるのです。
昔よく聴いた、プリンセスプリンセスという女性グループの「パイロットになりたくて」という歌の中に『全部私を組み立てた部品だ』という歌詞がありました。自分が経験してきた全てが、自分を作っているのだと感じながら聴いていたことを思い出しました。この歌詞、他にもたくさん好きなフレーズがあるので、一度聴いてみてください。
さて、大人の経験からの学びを活かした能力開発を進めるモデルとして、デイビット・コルブ博士の「経験学習モデル」が有名です。
このモデルは、コーチングセッションでも活用できます。
個人でも、チームでも同じですので、ぜひ使ってみてください。
まとめ
ここまで、コーチングスキルの復習の要素をまとめてみました。
MeCoFaが組織開発をサポートする中で、プロコーチを目指すわけじゃない人たちにも大事なエッセンスとしてお伝えしている内容ですので、コーチングを学んだ方々には、当たり前の内容かもしれません。
ただ、ちょっと時間が空いてしまった人や、これからもっと活躍の場を広げたい人には、復習に使っていただけるのでは無いかと思っています。
もし、コーチングを学んで、もっと活躍の場を広げたいという人がいらっしゃったら、こちらの記事も見ていただきたいです!
MeCoFaが取り組んでいる企業向けの組織開発のポイントなどもお伝えしています。
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川上の自己紹介はこちら👇
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