松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問106-119【衛生】論点:サルコペニアと疫学研究
第106回薬剤師国家試験|薬学理論問題 /
問119
問106-119
Q. 75歳以上のサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の高齢者160名を対象に健康教育を行うとともに、4つのグループに無作為に分類して筋力トレーニング(筋トレ)、ロイシン高配合の必須アミノ酸のサプリメント摂取(サプリ摂取)を定期的に行いながら追跡調査を行った。
3ヶ月後、膝関節伸展筋力を指標としてサルコペニアが改善した者と改善しなかった者に分けたところ、以下の表の結果となった。
また、3ヶ月後の膝関節伸展筋力の変動(%)を調べて図に示した。
3 ヶ月間の膝関節伸展筋力の変動(%)の平均±標準偏差*は健康教育のみに比べて有意差あり(日本老年医学会誌49, 726-730, 2012よりデータを一部改変)
サルコペニア及びこの疫学研究に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢|
1. サルコペニアは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)と同様に、将来介護が必要となる要因の一つである。
2. 「健康教育+筋トレ」群よりも「健康教育+サプリ摂取」群の方が、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は小さい。
3. 「健康教育+筋トレ+サプリ摂取」群の、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は、約0.76である。
4. この図から、筋トレよりもサプリ摂取を行う方が、膝関節伸展筋力の改善効果が高いことがわかる。
5. この疫学研究方法は、コホート研究である。
こんにちは!薬学生の皆さん。
Mats & BLNtです。
matsunoya_note から、薬剤師国家試験の論点解説をお届けします。
苦手意識がある人も、この機会に、薬学理論問題【衛生】を一緒に完全攻略しよう!
今回は、第106回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問119、論点:サルコペニアと疫学研究を徹底解説します。
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問106-119【衛生】論点:サルコペニアと疫学研究
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設問へのアプローチ|
第106回薬剤師国家試験の問119(問106-119)では、サルコペニアと疫学研究に関する知識を問われました。
薬学理論問題【衛生】では、第1問目、冒頭の問題で、A4用紙2枚を使って実際の疫学研究の論文からデータとグラフを引用した問題です⁉(※)
学術論文に掲載されている疫学研究ということは、科学的なデータの取り扱いには瑕疵がない前提ですから、問題に書かれていることは図表を含めて科学的なデータの取り扱いがコンサバティブで、正しいと考えて問題にアプローチしなければいけない。
…緊張しますね。。😵💫…😕…😖…😦…🤮…
でも、そんなに緊張する必要はないです。
結論から言うと、疫学研究を論点とした場合、だいぶ間違ったことを言っている設問の仕上がりです。
「日本老年医学会誌49, 726-730, 2012よりデータを一部改変」(※正しくは、雑誌名は日本老年医学会雑誌)と記載がありますが、一部改変してよい範囲からの明らかな逸脱があり、科学的なデータの取り扱いの観点からは、この文献を引用したと記載すること自体が不適切なレベルです。
引用文献のデータセットおよび疫学研究のモデル並びに統計処理の意図とは全く異なった意図の設問に改悪している。
これは、今後の薬剤師国家試験問題の問題設計では禁止されることが適切である行為と考えます。 (文責:Yukiho Takizawa, PhD.)
弘法にも筆の誤り。
猿も木から落ちる。
GxPは、性悪説で成り立っている。
人間は誤りを犯す生き物です。
そういう前提で、行きましょう。
前進あるのみです。😎…🤣…😄…💪…🙏…
※当該の設問については、科学的なデータの取り扱いの観点からは疑義が生じる問題設計であることが客観的に見て評価できますが、何が瑕疵にあたる可能性があるのかについて、詳細は後述の One Point で解説します。
以下は、当該の引用文献の図2です。
赤枠と下線の部分に疑義を生じています。
でも、ここで焦ってはいけません。まず、論点を確認しましょう。
衛生|問 106-119
総合的な論点
サルコペニアの定義、原因、影響、予防・対策:
高齢化社会における重要な健康問題であるサルコペニアについての基礎知識を問う。介入研究のデザインと結果の解釈:
特定の介入がサルコペニアに与える影響を評価するための研究デザインを理解し、提示されたデータから適切な結論を導き出す能力を問う。疫学指標の理解と算出:
相対危険度などの疫学指標の意味を理解し、与えられたデータから正しく計算できるかを問う。グラフの解釈:
提示されたグラフから、介入の効果に関する適切な情報を抽出できるかを問う。
各選択肢の論点
サルコペニアとロコモティブシンドロームの関係:
定義:
サルコペニアとロコモティブシンドロームそれぞれの定義を理解し、両者の概念的なつながりを理解する。影響:
サルコペニアとロコモティブシンドロームが、高齢者の要介護状態や生活の質に与える影響について考察する。
相対危険度の比較:
計算:
各介入群と対照群におけるサルコペニア改善の発生率から、相対危険度を正しく計算する。比較:
計算結果に基づいて、「健康教育+筋トレ」群と「健康教育+サプリ摂取」群の相対危険度を比較する。
相対危険度の算出:
特定の介入群と対照群におけるサルコペニア改善の発生率を、表から正しく読み取る。
読み取った数値を用いて、相対危険度を計算する。
グラフからの情報抽出:
グラフの種類:
提示されたグラフが、どのような種類のグラフであるかを理解する(例:棒グラフ、折れ線グラフなど)。データの解釈:
グラフから、各介入群における膝関節伸展筋力の変化量、ばらつき、有意差などを正しく読み取る。結論の妥当性:
読み取った情報に基づいて、選択肢の主張が妥当かどうかを判断する。
疫学研究の種類:
コホート研究の定義:
コホート研究の定義を理解する。介入研究の定義:
介入研究の定義を理解する。研究デザインの分類:
問題文で提示された研究デザインが、コホート研究と介入研究のどちらに該当するかを判断する。
はじめましょう。
薬剤師国家試験の薬学理論問題【衛生】からサルコペニアと疫学研究を論点とした問題です。
なお、以下の解説は、著者(Yukiho Takizawa, PhD)がプロンプトを作成して、その対話に応答する形でGPT4o & Copilot が出力した文章であって、著者がすべての出力を校閲しています。
GPT4oの製造元(Open AI)がはっきりと宣言しているように、生成AIは、その自然言語能力および取得している情報の現在の限界やプラットフォーム上のインターフェースのレイト制限などに起因して、間違った文章を作成してしまう場合があります。
疑問点に関しては、必要に応じて、ご自身でご確認をするようにしてください。
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Here we go.
第106回薬剤師国家試験|薬学理論問題 /
問119
問106-119
Q. 75歳以上のサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の高齢者160名を対象に健康教育を行うとともに、4つのグループに無作為に分類して筋力トレーニング(筋トレ)、ロイシン高配合の必須アミノ酸のサプリメント摂取(サプリ摂取)を定期的に行いながら追跡調査を行った。
3ヶ月後、膝関節伸展筋力を指標としてサルコペニアが改善した者と改善しなかった者に分けたところ、以下の表の結果となった。
また、3ヶ月後の膝関節伸展筋力の変動(%)を調べて図に示した。
3 ヶ月間の膝関節伸展筋力の変動(%)の平均±標準偏差*は健康教育のみに比べて有意差あり(日本老年医学会誌49, 726-730, 2012よりデータを一部改変)
サルコペニア及びこの疫学研究に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢|
1. サルコペニアは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)と同様に、将来介護が必要となる要因の一つである。
2. 「健康教育+筋トレ」群よりも「健康教育+サプリ摂取」群の方が、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は小さい。
3. 「健康教育+筋トレ+サプリ摂取」群の、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は、約0.76である。
4. この図から、筋トレよりもサプリ摂取を行う方が、膝関節伸展筋力の改善効果が高いことがわかる。
5. この疫学研究方法は、コホート研究である。
■科目| 薬剤|問 106-119
■■Gemini 1.5 Pro
衛生|問 106-119
■論点|サルコペニアと疫学研究
この問題の論点は、サルコペニアに関する正しい知識と、提示された疫学研究のデザインと結果の解釈を選択することです。
■解説1|
サルコペニアは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)と同様に、将来介護が必要となる要因の一つである。(選択肢1) [正しい]
サルコペニアは、加齢に伴い筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する状態です。
ロコモティブシンドロームは、運動器の障害により移動機能が低下した状態です。
どちらも高齢者の要介護状態のリスクを高める要因となります。
「健康教育+筋トレ+サプリ摂取」群の、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は、約0.76である。(選択肢3) [正しい]
「健康教育+筋トレ+サプリ摂取」群のサルコペニア改善しない率:
28人 / 40人 = 0.7
「健康教育のみ」群のサルコペニア改善しない率:
37人 / 40人 = 0.925
「健康教育+筋トレ+サプリ摂取」群の相対危険度:
0.7 / 0.925 = 約0.76
計算結果と選択肢の記述が一致するため、正しいです。
■解説2|
サルコペニアは、高齢者の生活の質を著しく低下させる要因となるため、予防と対策が重要です。
相対危険度は、あるイベント(ここでは、「サルコペニアが改善しない」という事象:アウトカム)が発生する可能性が、あるグループ(ここでは介入群)において、別のグループ(ここでは対照群)と比較してどのくらい高いかを示す値です。
1未満であれば、介入群の方がイベント発生率が低いことを示します。
※One Point:
引用元の図2は、一元分散分析を用いて因子が有意かを分析しています。
因子「あり」(3か月後)、因子「なし」(3か月前のBaseline)とを比較している。因子ありの因子ごとの比較をしているわけではありません。
また、設問では、「3 ヶ月間の膝関節伸展筋力の変動(%)の平均±標準偏差*は健康教育のみに比べて有意差あり」と記載がありますが、引用元のグラフの説明はMean(±SE)です。
SEってなんですか?標準誤差です。
標準偏差(SD)ではないです。
以下は、引用元の文献の図2です。
グラフの解釈が全く間違っています。
しかも、意図的に科学的なデータの取り扱いにおいてグラフに必要な情報を削除している。
これではグラフがそこにある意味が全くないです。何も読み取れないからです。
この引用文献原本での、3か月前の状態と比較する一元分散分析という統計解析手法は、無作為化比較試験の介入研究に用いられる統計解析手法としては特殊で、詳しく文献を読まないと、どういったデータセットなのか理解できないくらいイレギュラーです(いまだに、Baselineが平均値をとっているのか、個々の値でΔを算出しているのか理解できていないです。分散分析では、一般に平均値との差で分散を算出するので前者かと推察しますが、わからないです。)。
これは、疫学研究の一般的な基本的知識を評価する問題としては適切かどうか議論の余地があると思われます。
それに上乗せする形で、この一元配置分散分析のデータセットで、引用文献では記載されていない疫学研究手法であって、主に(非介入研究である)コホートで採用される相対危険度を算出させることは、疫学研究の一般的な基本的知識を問う問題としては、イレギュラー過ぎます。
この問題設計は、薬学理論問題【衛生】の冒頭で、科学的なデータの取り扱いを正しく学んできた薬学生をひどく困惑させ、動揺のあまり席を外して廊下に出たい気持ちにする設問になっているので、これは禁止されるべき問題設計と言えるでしょう。
細かく言うと、図2の正しい引用元は、引用元の引用文献のリファレンス12です。
設問で引用元とされた文献は、学術大会のシンポジウムでの1演題で、オーラル発表の講演(レビュー)です。
薬剤師国家試験にオーラル発表を引用元として持ってくることは、一部のノーベル賞受賞記念講演などを除いて、不適切です。
衛生で出題する疫学研究の問題は、これまでの過去問からコンサバティブに定型化、最適化できるはずです。 こんな問題設計がされてリジェクトされずに国家試験で出題されることが4年間続いている。
薬剤師国家試験の一般問題の衛生で、論点を疫学研究とした時の出題基準
■結論|
正しい選択肢は、1と3です。
■補足|
「健康教育+筋トレ」群よりも「健康教育+サプリ摂取」群の方が、「健康教育のみ」群に対するサルコペニアの相対危険度は小さい。(選択肢2) [誤り]
ここでは、「サルコペニアが改善しない」という事象をアウトカムとして、相対危険度を計算します。
「健康教育+筋トレ」群のサルコペニア改善しない率:
33人 / 40人 = 0.825
「健康教育+サプリ摂取」群のサルコペニア改善しない率:
35人 / 40人 = 0.875
「健康教育のみ」群のサルコペニア改善しない率:
37人 / 40人 = 0.925
「健康教育+筋トレ」群の相対危険度:
0.825 / 0.925 = 約0.89
「健康教育+サプリ摂取」群の相対危険度:
0.875 / 0.925 = 約0.95
「健康教育+サプリ摂取」群よりも「健康教育+筋トレ」群の方が相対危険度は小さくなります。
※上記の One Point を参照
なお、1問を2.5分で解かせる問題としては、相対危険度を計算させる工程が多すぎます。
また、相対危険度を算出させるデータセットとしては、引用文献が適切ではないと考えられますので、この時点で、正しい教育を受けてきた優秀な薬剤師候補生の場合、アンビバレントな感情がマックスになってしまいます。
精神衛生上、衛生的な問題設計ではないです。
ちなみに、Gemini 1.5 Proは、今、大変コンサバティブで賢いコンディションにアップデートされているらしく、かなり説得しないと、この解説のナラティブにたどり着けないです。
生成AIを説得している時点で、辛いです。
この図から、筋トレよりもサプリ摂取を行う方が、膝関節伸展筋力の改善効果が高いことがわかる。(選択肢4) [誤り]
図からは、「健康教育+筋トレ」群と「健康教育+サプリ摂取」群の間には有意差が見られません。
※上記の One Point を参照
「健康教育+筋トレ」群と「健康教育+サプリ摂取」群との間の差が有意か判断するためのデータセットでもないですし、統計解析手法でもないです。
一元配置分散分析は、母集団が異なるかの仮説検定ですが、比較しているのは3か月前のBaseline(これが母集団平均の推定値)と、介入後のパラメータの変動値です。
米印がついていることが視覚的に確認できて、引用文献が書いてあって、文字で米印が有意だと書いてある。インチキにもほどがある。
というか、これを薬剤師候補生に見せて、何をどう持っていこうと意図しているのか、身近にいらっしゃる薬剤師や医師の先生方に、その意図を率直に話してもらいたい。
この「引用していない引用文献」を入れて薬剤師候補生に圧をかける騙し手法は、薬剤師国家試験問題ではナイーブに扱ってほしくはないです。
気持ちが悪い。🤮🤢
「3 ヶ月間の膝関節伸展筋力の変動(%)の平均±標準偏差*は健康教育のみに比べて有意差あり(日本老年医学会誌49, 726-730, 2012よりデータを一部改変)」👈引用していないです。
この疫学研究方法は、コホート研究である。(選択肢5) [誤り]
この研究は、介入の有無でグループ分けを行い、その後の結果を観察しているため、介入研究に分類されます。
コホート研究は、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を長期間追跡し、疾病の発生率などを比較する研究デザインです。
相対危険度は、主にコホート研究において用いられる手法です。
※上記の One Point を参照
衛生で出題する疫学研究の問題は、これまでの過去問からコンサバティブに定型化、最適化できるはずです。
こんな問題設計がされてリジェクトされずに国家試験で出題されることが4年間続いている。
疫学研究の介入研究は、患者さんの臨床試験です。人間を扱った研究です。 薬剤師国家試験の衛生の問題だから不真面目な悪ふざけみたいに、悪い仕草を積み上げていいってわけではないです。
生真面目に粛々と取り組むべき作業ではないですか。
ぞっとする。 不気味な精神構造だ。これを愉快がるって。
■Lecture|
論点解説 分散分析:基本手法の解説
分散分析(Analysis of Variance: ANOVA)は、2群以上の平均値の差を検定するために用いられる統計的手法です。
基本的な手法である一元配置分散分析を、各統計パラメータの定義と式を含め、ステップバイステップで解説します。
Ref.
永田靖, 吉田道弘. (2019). 統計的多重比較法: Rによる包括的アプローチ. 医学書院.
奥村晴彦. (2017). Rによるデータ科学: データ解析の基礎から最新手法まで. 技術評論社.
ステップ1: 仮説を立てる
帰無仮説(H0): 全ての群の母平均値は等しい。
対立仮説(H1): 少なくとも1つの群の母平均値は異なる。
ステップ2: データを整理する
各群のデータ数: n1, n2, ..., nk (kは群の数)
各群のデータ: x1j, x2j, ..., xkj (jはデータの番号)
全データ数: N = n1 + n2 + ... + nk
全データの平均値: x̄ = ΣΣ xij / N
各群の平均値: x̄1, x̄2, ..., x̄k
ステップ3: 平方和を計算する
群間平方和 (Sum of Squares Between Groups: SSB): 各群の平均値と全体平均値の差の2乗和を、各群のデータ数で重み付けして合計したもの。群間のばらつきを表す。
式: SSB = Σ ni (x̄i - x̄)^2
群内平方和 (Sum of Squares Within Groups: SSW): 各群内でのデータと群平均値の差の2乗和。群内のばらつきを表す。
式: SSW = ΣΣ (xij - x̄i)^2
全体平方和 (Sum of Squares Total: SST): 全データと全体平均値の差の2乗和。全体のばらつきを表す。
式: SST = ΣΣ (xij - x̄)^2
また、以下の関係が成り立つ。
SST = SSB + SSW
ステップ4: 自由度を計算する
群間の自由度: k - 1
群内の自由度: N - k
全体の自由度: N - 1
ステップ5: 分散分析表を作成する
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F値 | p値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 群間 | SSB | k-1 | MSB = SSB / (k-1) | F = MSB / MSW | p |
| 群内 | SSW | N-k | MSW = SSW / (N-k) | | |
| 全体 | SST | N-1 | | | |
ステップ6: F値を計算する
F値 = 群間平均平方 (MSB) / 群内平均平方 (MSW)
ステップ7: p値を求め、仮説を検定する
F分布表または統計ソフトウェアを用いて、計算したF値に対応するp値を求める。
p値が有意水準(α、一般的には0.05)より小さい場合、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択する。すなわち、少なくとも1つの群の母平均値は異なるという結論になる。
補足
分散分析では、等分散性や正規性などの前提条件が満たされている必要があります。
多重比較: 分散分析で有意差が認められた場合、どの群間に差があるかを調べるために、Tukey法やBonferroni法などの多重比較の手法を用いることがあります。
■Lecture|
論点解説 疫学研究の指標 オッズ比
引用元: 松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-125【衛生】(2) 論点:疫学研究 / 相対危険度・寄与危険度 / 基礎|matsunoya (note.com)
オッズ比
オッズとは、見込みを意味し、ある事象が起きる確率pの、その事象が起きない確率(1−p)に対する比〔p/(1-p)〕です。オッズ比とはオッズa/bとオッズc/dとの比(式)です。
オッズ比=(a/b)/(c/d)=(a×d)/(b×c) …(式)
症例対照研究の場合、相対危険と寄与危険を直接計算することができないので、①罹患集団・非罹患集団が共通の母集団からのサンプリングであって母集団を代表している、②疾病の発症率が低い、などが成り立つとき、オッズ比を相対危険度の近似式として用います。
■Lecture|
論点解説 疫学研究の分類
疫学研究の分類 (論点解説|選択肢5)
疫学研究には、介入研究と観察研究とがあります。
介入研究とは、特定の検査・治療、薬物投与など何らかの介入が行われる研究のことで、他方、観察研究とは、研究の対象集団を設定しますが、条件・要因に対して人為的に介入しない研究のことです。
観察研究の特徴として、研究要因をランダムに割付けできないため、介入研究と比較して、バイアス・交絡因子が入り込みやすい側面があることがあげられます。観察研究の代表的な研究としては、横断研究、症例対照研究、コホート研究があります。
介入研究では集団(例:冠動脈性心疾患)に対して研究者が介入をして一定期間観察し、疾病の増減を実験的に確かめます。
介入には例えば血中総コレステロールを下げるための食事指導等(介入)があり、罹患率が低下した場合、食事指導等(介入)が、冠動脈性心疾患の予防に有効であると考えられます。
疫学研究 / 相対危険度・寄与危険度 / 基礎 (論点解説|選択肢2, 選択肢3)
コホート研究の指標として、罹患率、相対危険度(relative risk, risk ratio, RR)、寄与危険度(attributable risk, AR)および寄与危険割合(percent attributable risk, PAR)があります。
相対危険度(RR)は、要因暴露群の罹患率(=罹患リスク)の、非要因暴露群の罹患率(=罹患リスク)に対する比(式1)で示されます。RRをリスク比と呼ぶ場合もあります。
RRは、要因曝露した場合(例えば喫煙)、非暴露と比較して何倍疾病に罹りやすくなるかを示す指標で、疾病罹患と要因曝露との関連の強さを示します。
相対危険度(RR)=〔A /(A+B)〕÷〔C /(C+D)〕 …(式1)
寄与危険度(AR)は、要因曝露群の罹患率(=罹患リスク)と非要因曝露群の罹患率(=罹患リスク)との差(式2)で示され、リスク差と呼ぶ場合もあります。
ARは、要因曝露によって罹患率(=罹患リスク|例えば、人口1000人当たりの患者数)がどれだけ増えたか、要因曝露がなければ罹患リスクがどれだけ減少するかの差分、つまり要因(例えば喫煙)が集団に与える影響の大きさを示す指標です。
ARは、公衆衛生対策において重要な指標で、疾病予防における要因除去の寄与を意味します。
寄与危険度(AR)=〔A /(A+B)〕-〔C /(C+D)〕 …(式2)
ここでは、頑張って、さらに、寄与危険割合(PAR)も学習しておきましょう。PARは、寄与危険度(AR)が要因曝露群の罹患率(=罹患リスク)に占める割合で、ARを要因暴露群(例:喫煙者)の罹患率で除して100を乗じた値(%)です(式3)。
要因曝露群(例:喫煙者)の中で発症した患者のうち、真に要因曝露(例:喫煙)が影響して発症した患者は何%かを示す指標です。
寄与危険割合(PAR)=AR÷〔A /(A+B)〕 …(式3)
■Lecture|
論点解説 相対リスク(相対危険度)の計算
A群に対するB群の相対リスクを計算する方法 (論点解説|選択肢2, 選択肢3)
相対リスク(Relative Risk: RR)は、ある事象(疾病の発症、死亡など)が発生する確率が、ある要因に曝露されている群(曝露群)において、曝露されていない群(非曝露群)と比較してどのくらい高いかを示す値です。
ここでは、A群を非曝露群、B群を曝露群として、相対リスクを計算するステップを詳しく説明します。
ステップ1: それぞれの群における事象発生率を計算する
A群の事象発生率 = A群における事象発生数 / A群の総人数
B群の事象発生率 = B群における事象発生数 / B群の総人数
ステップ2: B群の事象発生率をA群の事象発生率で割る
相対リスク (RR) = B群の事象発生率 / A群の事象発生率
Ref.
Rothman KJ, Greenland S, Lash TL. Modern Epidemiology, 4th Edition. Lippincott Williams & Wilkins; 2021.
疫学の標準的な教科書であり、相対リスクの定義、計算方法、解釈などが詳しく解説されています。
解釈
RR = 1 の場合: 曝露の有無は事象の発生リスクに影響を与えない。
RR > 1 の場合: 曝露は事象の発生リスクを増加させる。
RR < 1 の場合: 曝露は事象の発生リスクを減少させる。
例
喫煙者における肺がんの相対リスクを計算する場合
| 群 | 肺がん発生数 | 総人数 | 肺がん発生率 |
|---|---|---|---|
| 非喫煙者 (A群) | 10 | 1000 | 0.01 |
| 喫煙者 (B群) | 20 | 500 | 0.04 |
B群の事象発生率 / A群の事象発生率 = 0.04 / 0.01 = 4
この場合、喫煙者における肺がんの相対リスクは4となり、喫煙者は非喫煙者と比較して肺がんの発生リスクが4倍高いと解釈できます。
注意点
相対リスクは、交絡因子(曝露と事象の両方に影響を与える因子)の影響を受ける可能性があります。交絡因子の影響を調整するためには、多変量解析などの統計的手法を用いる必要があります。
お疲れ様でした。
🍰☕🍊
では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第106回薬剤師国家試験|薬学理論問題 /
問119
楽しく!驚くほど効率的に。
https://note.com/matsunoya_note
お疲れ様でした。
🍰☕🍊
過去問に類題(論点:疫学研究)があります。解説しています。
こちらにも挑戦して実力アップを目指しましょう。
またのご利用をお待ちしております。
ご意見ご感想などお寄せくださると励みになりうれしいです。
note からのサポート、感謝します。
今日はこの辺で、
それではまた
お会いしましょう。
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Mats & BLNt
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問106-184【薬剤】論点:薬物送達システム(DDS)|matsunoya (note.com)
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問108-168【薬剤】論点:薬物の消化管吸収|matsunoya (note.com)
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問109-171【薬剤】論点:薬物のバイオアベイラビリティへの食事の影響|matsunoya (note.com)
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問106-170【薬剤】論点:トランスポーターを介した薬物輸送|matsunoya (note.com)
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問107-100【物理】論点:キャピラリー電気泳動法|matsunoya (note.com)
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問109-177, 109-178【薬剤】論点:イリノテカン塩酸塩水和物|matsunoya (note.com)
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート【衛生】論点:薬物動態 一覧|matsunoya (note.com)
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薬剤師国家試験対策ノート|必須問題
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走る!「衛生」論点:食品の安全
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再生リスト|走る!「衛生」
論点:がん 発生要因 / 変異原性、遺伝毒性試験
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走る!「衛生」論点:薬物動態
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走る!「衛生」論点:疫学研究
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問99-124
【衛生】論点:油脂の変質試験法 / 過酸化物価
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-124
【衛生】論点:食中毒 / ボツリヌス菌、寄生虫、クドア・アニサキス、ソラニン・チャコニン、コルヒチン、シガテラ
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-123
【衛生】論点:食中毒
チョウセンアサガオ / スコポラミン・ヒヨスチアミン
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-123
【衛生】論点:食品に由来する有害物質
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-123
【衛生】論点:食品の安全 / 化学物質汚染
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問99-123
【衛生】論点:栄養素/国民健康・栄養調査
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問98-123
【衛生】論点:食品に由来する有害物質
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-129
【衛生】論点:がん / 発生要因
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問99-133
【衛生】論点:遺伝毒性試験
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-132
【衛生】論点:遺伝毒性試験
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-132
【衛生】論点:代謝的活性化 / 発がん
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-132
【衛生】論点:代謝 / 代謝的活性化
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-131
【衛生】論点:代謝 / グルクロン酸抱合
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-131
【衛生】論点:代謝 / 代謝的活性化
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-131
【衛生】論点:代謝 / 代謝的活性化
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-130
【衛生】論点:代謝 / グルタチオン抱合
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-21、問97-131
【衛生】論点:代謝 / 生物学的モニタリング
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-130
【衛生】論点:労働安全衛生法 / 特化則
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-124
【衛生】論点:人口動態 / 死亡率
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-128
【衛生】論点:人口動態 / 死因別の死亡率
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-124
【衛生】論点:人口動態 / 出生率・死亡率
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-126
【衛生】論点:人口動態 悪性新生物
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-125
【衛生】論点:人口動態 / 平均寿命
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問97-17
【衛生】論点:人口動態 / 死亡率・死因
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