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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-132【衛生】論点:代謝的活性化 / 発がん

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代謝的活性化 / 発がん 
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で解説します。

Here: https://note.com/matsunoya_note/n/n308a91a5bfe4

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132

Q. 発がん物質A~Eの代謝と発がん作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。

スライド1

選択肢|

1. Aは、それ自身が DNAと反応する一次発がん物質である。
2. Bの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成するメチルカチオンである。
3. Cの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成する9,10-ジオール体である。
4. Dの代謝活性化には、シトクロム P450とエポキシドヒドロラーゼが関わっている。
5. Eの究極的代謝活性体は、シトクロム P450によりメチル基が酸化された後にN -脱メチル化で生成するメチルカチオンである。
(論点:代謝的活性化 / 発がん)

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滝沢 幸穂

PhD (Pharmacokinetics)
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今回は、ビジュアルインフォグラフィクスのテンプレートとして、下記のFlourish.studio のチャートを使用しています。実際にバーをハイライトすると細かい数字や情報が見えて楽しいです。インフォグラフに触ってタップしたりハイライトしたりできます。

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問101-132【衛生】論点:代謝的活性化 / 発がん

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。

解説します。
薬剤師国家試験の衛生から、代謝 / 代謝的活性化を論点とした問題です。

スライド1

第101回薬剤師国家試験の問132(問101-132)では、発がん物質の代謝と発がん機構に関する理解、そして発がん物質の化学構造式とその発がん物質の代謝的活性化のメカニズムに関する理解が問われました。

スライド2

問101-132(論点:代謝的活性化 / 発がん)を5つのテーマに分けて解説します。苦手意識がある人も、この機会に、発がん性物質の代謝と発がん機構 & 発がん物質の化学構造式を一緒に完全攻略しよう!

※画像はタップすると拡大できます。
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目次|

選択肢1. 論点:
Mechlorethamine
 / ビス求電子剤 / DNA塩基のアルキル化
選択肢2. 論点:
N-nitrosodimethylamine
 / ニトロソアミンの究極的代謝活性体 / メチルカチオン
選択肢3. 論点:
benzo[a]pyrene
 / 多環芳香族炭化水素の究極的代謝活性体 / エポキシ体
選択肢4. 論点:
aflatoxin B1
 / アフラトキシンの究極的代謝活性体 / エポキシ体
選択肢5. 論点:
N,N-Dimethyl-4-aminoazobenzene
 / 芳香族アミンの究極的活性体 / ニトレニウムイオン

第1回は、選択肢1について解説します。

選択肢1. 論点:Mechlorethamine
 / ビス求電子剤 / DNA塩基のアルキル化
Q1. Aは、それ自身が DNAと反応する一次発がん物質である。A.【正|誤】

スライド1

解説します。

発がん物質の発がん機構から、ビス求電子剤によるアルキル化(DNA塩基の架橋)に関する理解を問う記述の正誤問題です。文献1(2015)がわかりやすかったので引用します。

化学構造式〔A〕は、Nitrogen mustard(窒素マスタード)のひとつ、N-Methylbis(2-chloroethyl)amine(Mechlorethamine; FDA承認1949)です。

スライド6

Nitrogen mustardは、がんおよび自己免疫疾患の化学療法に使用されてきました。Nitrogen mustardは、DNAに架橋を形成するビス求電子剤としてそれ自身が発がん性を示す化学物質です。

ビス求電子剤は、DNA-タンパク質架橋、または、DNA間架橋およびDNA鎖間架橋を形成します。

スライド7

発がんの作用機構は、DNA塩基のアルキル化です。

DNA付加体の中でもDNA鎖間架橋はわずかな比率でしか存在しませんが、細胞障害性が高い病変であるため、Nitrogen mustardの作用機構への寄与は大きいと考えられています。

文献1から、“Scheme 1 The alkylation at the N7-position of deoxyguanosine (dG).”を抜粋して図1に示します。

スライド8

図1 The alkylation at the N7-position of deoxyguanosine (dG). 

出典:文献1 Scheme 1

上記の図に示されたDNA塩基(デオキシグアノシン)のN7位へのアルキル化について文献1に記述がありましたので、そのまま引用します。
確認しておいてください。以下引用 ___

The chemical mechanism of DNA alkylation involves an initial intramolecular SN2 reaction to form an aziridinium ion intermediate, which is the DNA alkylating species.(2, 6)
As a bis-electrophile, the initial adduct can form a second aziridinium ion intermediate, which can undergo solvolysis to the corresponding alcohol affording a mono-adduct, react with nucleophilic sidechains of proteins (e.g., cysteine) to form DNA-protein cross-links,(7) or react with another DNA base to generate DNA inter- and intrastrand cross-links.(8-10)
This is shown in Scheme 1 for the alkylation at the N7-position of deoxyguanosine (dG).

___ 以上、引用(出典:文献1)

追記|

選択肢1 をもう一度読んでみましょう。

Q1. Aは、それ自身が DNAと反応する一次発がん物質である。
A. 正・誤

ここで、一次発がん物質について復習しておきます。

一次発がん物質、二次発がん物質、発がんプロモーター
 - 発がん物質についての基本的な考え方 -

文献11から引用して解説します。

動物に長期間投与することによりがんの発生率を高め、あるいは発がん時期を早めるような作用をもつ物質は、大別して、標的細胞の遺伝子を障害する遺伝毒性発がん物質 genotoxic carcinogen (一次発がん物質) 、遺伝子を障害しない非遺伝毒性発がん物質 non-genotoxiccarcinogen の二つに分類できます。

更に非遺伝毒性発がん物質二次発がん物質発がんプロモーターの二つに分けることができます。

WHOの定義に従えば、一次発がん物質、二次発がん物質、発がんプロモーターのいずれも発がん性があると判定されます。

他方、その生物学的意義は全く異なります。すなわち、一次発がん物質の作用は非可逆的ですが、他方、それ以外の二つの作用は本質的には可逆的です。 

したがって、これら三者は、安全性評価の観点からはそれぞれ別の評価の仕方で取り扱われるべきであると考えられています。

遺伝毒性発がん物質とは、被験物質もしくはその代謝物自身が標的細胞の遺伝子に直接作用して突然変異を誘発後、がん化させるものです。

Nニトロソ化合物、多環芳香族炭化水素、アルキル化剤などの強力な発がん物質はすべて一次発がん物質に含まれます。
遺伝毒性発がん物質については、発がん性に閾値がないことから、食品中に含んではならないとの厳しい規制が課せられています。

非遺伝毒性発がん物質の中で、被験物質の作用により生体のいずれかに細胞ががん化しやすい条件が作られるような場合を二次発がん物質といいます。

ホルモン作用を有する物質、生体の内分泌環境をかく乱する物質及び被験物質投与により生体内に産生される活性酸素のような物質が標的細胞の遺伝子を二次的に障害する物質などがこれに含まれます。

一方、非遺伝毒性発がん物質の中の発がんプロモーターとは、発がん二段階説のイニシエーション及びプロモーションと呼ばれる二つの過程のうち、プロモーション作用を有する物質の総称です。

発がんプロモーターには、次の作用があります。
(1)プロモーターは少量の initiating agent の投与後に与えるとがんの形成が促進され、腫瘍発生までの潜伏期間を短縮し、また腫瘍数の増加を来す。
(2) プロモーターは、本来それ自体では発がん性を有しない
(3) プロモーターは initiatingagent の投与前でなく、投与後に与えなければその作用 (プロモーター作用) を発揮しない。
(4) プロモーター作用には、プロモーターの長期間の投与が必要であり、通常、投与初期の変化は可逆的である。

非遺伝毒性発がん物質(二次発がん物質、発がんプロモーター)には閾値が存在します。このことから、食品中の暴露量を危険濃度以下に設定することによりADIが算定可能です。
非遺伝毒性発がん物質は発がん性があってもADIが算定されます。

出典:
文献11. 三森 国敏, 食品中に含まれる化学物質についての安全性評価, 食品衛生学雑誌, 1999, 40 巻, 1 号, p. 1-6, 公開日 2009/12/11, Online ISSN 1882-1006, Print ISSN 0015-6426, https://doi.org/10.3358/shokueishi.40.1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/40/1/40_1_1/_article/-char/ja

第2回につづく。。

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ポイント|

【A】のひとつである【B】は、【C】に使用されてきた。【A】は【D】としてそれ自身が【E】を示す化学物質である。

【D】は、【F】を形成する。

【G】のひとつである【H】は【I】による代謝的活性化を受ける。

その経路は、主に【I】2E1による【J】および【K】の生成に引き続く、アルデヒド(aldehyde)および【L】の生成であり、【L】から、最終的にアルキル【M】または【N】が生成して【O】が起こると考えられる。

【P】は、【Q】のひとつであり、【I】を介した酸化的な代謝によって生成する【R】【S】が【T】とされ、ヒトの肺がんとの直接的な因果関係が示されている。

主にA. flavusによって産生されるカビ毒であるaflatoxin B1は、主に【I】3A4によって、【T】である【R】の【U】に代謝される。

なお、【V】は【W】する酵素で解毒に関与する酵素のひとつであるが、ヒトおよびラットにおいては、【V】は、【U】の加水分解をほとんど促進しない。

aflatoxin B1の解毒機構には、【X】が大きく寄与している。

芳香族アミンの一種であるアミノアゾ染料、Dimethyl-4-aminoazobenzene (DAB|methyl yellow)は、【I】による酸化的なN-脱メチル化(oxidative N-demethylation)を受け、アミノ基のメチルが一つ外れた【Y】が生成する。

【Y】は、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(flavin-containing monooxygenase|FMO)によるN-oxidationをうけ、N-hydroxy-MABになり、その後、【T】であるN-sulfonyloxy-MABとなる。

MABのエステルから【M】が生成する過程を経て、【Z】が生成する。

_____

A. Nitrogen mustard(窒素マスタード)
B. N-Methylbis(2-chloroethyl)amine(Mechlorethamine)
C. がんおよび自己免疫疾患の化学療法
D. ビス求電子剤
E. 発がん性
F. DNA-タンパク質架橋、または、DNA間架橋およびDNA鎖間架橋
G. ニトロソアミン
H. N-nitrosodimethylamine
I. P450(CYP)
J. 酸化(水酸化)、N-脱メチル化(N-demethylation)
K. α-ヒドロキシニトロソアミン(α-hydroxynitrosamine)
L. アルキルジアゾヒドロキシド(alkyl-diazohydroxide)
M. ニトレニウムイオン
N. メチルカチオン(CH3+)
O. DNAのアルキル化
P. benzo[a]pyrene(BaP)
Q. 多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon|PAHs)
R. エポキシ体
S. BPDE(7,8-Dihydro-7,8-dihydroxybenzo(a)pyrene 9,10-oxide)
T. 究極的発がん性物質(ultimate carcinogen)
U. aflatoxin B1-8,9-エポキシド(AFBO)
V. エポキシドヒドロラーゼ
W. エポキシドを対応するジオールに加水分解
X. グルタチオン抱合
Y. N-methyl-4-aminoazobenzene (MAB)
Z. DNA付加体であるN-(deoxyguanosin-8-yl)-MAB

_____

では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132

Q. 発がん物質A~Eの代謝と発がん作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。

スライド1

選択肢|

1. Aは、それ自身が DNAと反応する一次発がん物質である。
2. Bの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成するメチルカチオンである。
3. Cの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成する9,10-ジオール体である。
4. Dの代謝活性化には、シトクロム P450とエポキシドヒドロラーゼが関わっている。
5. Eの究極的代謝活性体は、シトクロム P450によりメチル基が酸化された後にN -脱メチル化で生成するメチルカチオンである。
(論点:代謝的活性化 / 発がん)

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第2回は、選択肢2について解説します。

選択肢2. 論点:N-nitrosodimethylamine / ニトロソアミンの究極的代謝活性体 / メチルカチオン
Q2. Bの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成するメチルカチオンである。A.【正|誤】

スライド1

解説します。

発がん物質の発がん機構から、ニトロソアミン代謝的活性化メチルカチオンによるDNA付加体形成に関する理解を問う記述の正誤問題です。

化学構造式〔B〕は、ニトロソアミンのひとつであるN-nitrosodimethylamine(DMN)です。

スライド9

ニトロソアミンは代謝的活性化と発がんを論点とした設問において取り上げられる発がん性物質ですが、一方で、食品に由来する有害物質を論点とした設問においても取り上げられる場合があります。

■類題(論点:食品に由来する有害物質)|
第98回 問123
Q1. 亜硝酸と二級アミンからのニトロソアミンの生成は、pHが7付近で最も起こりやすい。A. 正・誤
第101回 問123
Q4. 魚に含まれる2級アミンが胃の中で塩酸と反応することにより、ニトロソアミンが生じる。A. 正・誤

図2に示した構造式でRおよびR'に、ともにメチル基を有する化学構造がDMNです。

YouTube|
https://youtu.be/PCGA8kqIiaE

図2 ニトロソアミンの生成

※松廼屋|論点解説(第98回 問123)出典:文献2, 図2

ニトロソアミンの究極的代謝活性体の解説に入ります。

文献3によればDMNはP450(CYP)2E1およびSULT1A1によって代謝的活性化を受けます。

また、文献4によれば、DMNのCYPによる代謝的活性化の経路は、主にCYP2E1による酸化(水酸化)、N-脱メチル化および α-hydroxynitrosamine 生成に引き続く、aldehyde および alkyl-diazohydroxide の生成です。そして、最終的にアルキルニトレニウムイオンまたはメチルカチオン(CH3+)が生成してDNAのアルキル化が起こると考えられます(図3)。

スライド10

図3 ニトロソアミンの代謝

出典:文献4, Scheme 1

まとめます!

スライド11

第3回につづく。。

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第3回は、選択肢3について解説します。

選択肢3. 論点:benzo[a]pyrene / 多環芳香族炭化水素の究極的代謝活性体 / エポキシ体
Q3. Cの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成する9,10-ジオール体である。A.【正|誤】

スライド1

解説します。

がん物質の発がん機構から多環芳香族炭化水素究極的発がん性物質ultimate carcinogen)を問う記述の正誤問題です。

化学構造式〔C〕は、多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon|PAHs)のひとつ、benzo[a]pyrene(BaP|ベンゾ[a]ピレン)です。

スライド13

最新の科学的根拠としては、環境省|化学物質の環境リスク評価 第5巻
http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/index.html
22. ベンゾ[a]ピレン
http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/pdf/chpt1/1-2-2-22.pdf
(文献5, 2006)および文献6(2017)が参考となると思いますので引用します。

PAHsは非意図的に生成され、環境中へ排出されます。

PAHs の環境中への排出源は燃焼由来が90%以上を占め、発生源の90%近くが固定発生源とされます。主な発生源としては、石炭・石油燃焼プラントやコールタールおよび関連製品の製造・使用が挙げられます。その他、木材の燃焼、バイオマスの不完全燃焼、自動車や航空機の排ガスが発生源です。

さらに、PAHsは、喫煙における発がん性物質のひとつとして肺がんとの関連が指摘されています。

BaPの代謝はP450(CYP1A1)を介して始まり、酸化によってエポキシ体が生成、水酸化によってフェノール体が生成します。その中で、ジオールエポキシ体であるBPDEが最も反応性が高い究極的発がん性物質とされています。

参考資料|
BPDE: 7,8-Dihydro-7,8-dihydroxybenzo(a)pyrene 9,10-oxide
Pubchem
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/41322#section=2D-Structure

BPDEは遺伝子レベルの検討でヒトの肺がんとの直接的な因果関係を示す結果が報告されています。

スライド14

文献6(Scheme 1)からBaPの代謝およびBPDEのDNA付加体生成の経路を抜粋して図4に示します。

スライド15

図4 BaPの代謝およびBPDEのDNA付加体生成

出典:文献6 Scheme 1.

以上のように、BaPの究極的代謝活性体は、CYPによる酸化を受けて生成したエポキシ体(9,10-オキシド)です。
第4回につづく。。

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第4回は、選択肢4について解説します。

選択肢4. 論点:aflatoxin B1 / アフラトキシンの究極的代謝活性体 / エポキシ体
Q4. Dの代謝活性化には、シトクロム P450とエポキシドヒドロラーゼが関わっている。A.【正|誤】

スライド1

解説します。

発がん物質の発がん機構から、アフラトキシン究極的発がん性物質ultimate carcinogen)の理解を問う記述の正誤問題です。

化学構造式〔D〕は、カビ毒のaflatoxin B1(AFB1)です。

スライド16

最新の科学的根拠としては、食品安全委員会|評価書詳細 総アフラトキシン https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20080903001
(文献7, 2009)が参考となると思いますので引用します。

アフラトキシン(AF)は、1960年に英国で10万羽以上の七面鳥が死亡した中毒事件の原因物質としてピーナツから発見されました。

アフラトキシン(AF)の主な産生菌は A. flavus(アスペルギルス フラバス)です。

生体内において AFB1 はミクロソームにより、AFM1、AFP1、AFQ1に代謝されますが、主にCYP3A4によって、究極的発がん性物質、aflatoxin B1-8,9-エポキシド(AFBO)に代謝されます(文献8, 2006)。

AFB1の代謝的活性化、すなわち、エポキシ体生成には、主にCYP3A4が関与します。

究極的発がん性物質は、タンパク質と付加体を生成して細胞毒性を示し、また、DNAと付加体を形成して発がん性を示します。

図5にAFB1の主な代謝経路を文献7(図1)から抜粋して示します。

まとめます!

スライド17

図5  aflatoxin B1の代謝経路

出典:文献7 図1

なお、エポキシドヒドロラーゼはエポキシドを対応するジオールに加水分解する酵素です。

解毒機構に関与する酵素のひとつですが、文献9(1998)によれば、ヒトおよびラットにおいては、エポキシドヒドラーゼは、AFB1-8,9-epoxideの加水分解をほとんど促進しませんでした。

一方、解毒機構には、ヒトへパトサイトでは、グルタチオン転移酵素、GST M1-1によるAFB1の抱合が大きく寄与していることが示唆されたとしています。

AFB1は、P450によってエポキシ化されて究極的発がん性物質AFB1-8,9-エポキシドに代謝されることを覚えましょう。
第5回につづく。。

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(1) 選択肢1-2 → https://youtu.be/RWXO_11lix8

(2) 選択肢3-4 → https://youtu.be/sFeIgBTpAww

(3) 選択肢5 → https://youtu.be/zRwW-_oABHg

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第5回は、選択肢5について解説します。

選択肢5. 論点:N,N-Dimethyl-4-aminoazobenzene / 芳香族アミンの究極的活性体 / ニトレニウムイオン
Q5. Eの究極的代謝活性体は、シトクロム P450によりメチル基が酸化された後にN -脱メチル化で生成するメチルカチオンである。A.【正|誤】

スライド1

解説します。

発がん物質の発がん機構から芳香族アミンの代謝的活性化経路、ニトレニウムイオン生成およびDNA付加体形成に関与する薬物代謝酵素を問う記述の正誤問題です。

化学構造式〔E〕は、N,N-Dimethyl-4-aminoazobenzene (DAB|methyl yellow) です。

スライド19

DABは、aminoazo dye(アミノアゾ染料)の一種で、発がん性物質として知られています。

代謝的活性化を問われた場合、化学構造から芳香族アミン(Arylamine)であることに気づくと良いです。

文献10(1985)に芳香族アミンのDNA付加体(DNA adducts)生成に関する総説(review)がありましたので引用します。

DABの代謝的活性化の第一段階は、P450(CYP)による酸化的なN-脱メチル化(oxidative N-demethylation)です。

CYPによる代謝を受けて、DABからアミノ基のメチルが一つ外れた N-methyl-4-aminoazobenzene (MAB) が生成します。2段階目のN-脱メチル化によって、4-aminoazobenzene (IARC:Group 2B, Possibly carcinogenic to humans) が得られます。

ABを生成するこの代謝経路によって発がん性は低下します。

他方、MABは、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(flavin-containing monooxygenase|FMO)による N-oxidation をうけ、N-hydroxy-MAB になり、その後、究極的発がん性物質(ultimate carcinogen)である N-sulfonyloxy-MAB となります。この代謝は硫酸転移酵素の補酵素であるPAPS依存的に起こり、エステルからニトレニウムイオンが生成する過程を経て、DNA付加体である N-(deoxyguanosin-8-yl)-MAB 等が生成します。

スライド20

文献10から、DABにおいて推定される代謝的活性化の経路およびDNA付加体のひとつであるN-(deoxyguanosin-8-yl)-MABを図6に示します。

スライド20

図6 DABにおいて推定される代謝的活性化の経路およびDNA付加体のひとつであるN-(deoxyguanosin-8-yl)-MAB

出典:文献10

まとめます!

スライド22

追記|

芳香族アミンの中でもアゾ染料と呼ばれる化合物に関しての最近のトピックとしては、「家庭用品規制法における特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料の規制(平成28年4月施行)|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000114934.html 」が「衛生」では注目に値する話題です。

流通しているアゾ染料の分解によって発がん性をもつ特定芳香族アミンが生成すると、発がん性物質が繊維から皮膚に触れたり洗濯などで他の衣服や皮膚に付着する可能性があります。

「特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料」を含む家庭用品の販売規制が、欧米の規制に準ずる形で日本において始まりました。
(完。。)

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ポイント|

【A】のひとつである【B】は、【C】に使用されてきた。【A】は【D】としてそれ自身が【E】を示す化学物質である。

【D】は、【F】を形成する。

【G】のひとつである【H】は【I】による代謝的活性化を受ける。

その経路は、主に【I】2E1による【J】および【K】の生成に引き続く、アルデヒド(aldehyde)および【L】の生成であり、【L】から、最終的にアルキル【M】または【N】が生成して【O】が起こると考えられる。

【P】は、【Q】のひとつであり、【I】を介した酸化的な代謝によって生成する【R】【S】が【T】とされ、ヒトの肺がんとの直接的な因果関係が示されている。

主にA. flavusによって産生されるカビ毒であるaflatoxin B1は、主に【I】3A4によって、【T】である【R】の【U】に代謝される。

なお、【V】は【W】する酵素で解毒に関与する酵素のひとつであるが、ヒトおよびラットにおいては、【V】は、【U】の加水分解をほとんど促進しない。

aflatoxin B1の解毒機構には、【X】が大きく寄与している。

芳香族アミンの一種であるアミノアゾ染料、Dimethyl-4-aminoazobenzene (DAB|methyl yellow)は、【I】による酸化的なN-脱メチル化(oxidative N-demethylation)を受け、アミノ基のメチルが一つ外れた【Y】が生成する。

【Y】は、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(flavin-containing monooxygenase|FMO)によるN-oxidationをうけ、N-hydroxy-MABになり、その後、【T】であるN-sulfonyloxy-MABとなる。

MABのエステルから【M】が生成する過程を経て、【Z】が生成する。

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A. Nitrogen mustard(窒素マスタード)
B. N-Methylbis(2-chloroethyl)amine(Mechlorethamine)
C. がんおよび自己免疫疾患の化学療法
D. ビス求電子剤
E. 発がん性
F. DNA-タンパク質架橋、または、DNA間架橋およびDNA鎖間架橋
G. ニトロソアミン
H. N-nitrosodimethylamine
I. P450(CYP)
J. 酸化(水酸化)、N-脱メチル化(N-demethylation)
K. α-ヒドロキシニトロソアミン(α-hydroxynitrosamine)
L. アルキルジアゾヒドロキシド(alkyl-diazohydroxide)
M. ニトレニウムイオン
N. メチルカチオン(CH3+)
O. DNAのアルキル化
P. benzo[a]pyrene(BaP)
Q. 多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon|PAHs)
R. エポキシ体
S. BPDE(7,8-Dihydro-7,8-dihydroxybenzo(a)pyrene 9,10-oxide)
T. 究極的発がん性物質(ultimate carcinogen)
U. aflatoxin B1-8,9-エポキシド(AFBO)
V. エポキシドヒドロラーゼ
W. エポキシドを対応するジオールに加水分解
X. グルタチオン抱合
Y. N-methyl-4-aminoazobenzene (MAB)
Z. DNA付加体であるN-(deoxyguanosin-8-yl)-MAB

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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132

Q. 発がん物質A~Eの代謝と発がん作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。

スライド1

選択肢|

1. Aは、それ自身が DNAと反応する一次発がん物質である。
2. Bの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成するメチルカチオンである。
3. Cの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成する9,10-ジオール体である。
4. Dの代謝活性化には、シトクロム P450とエポキシドヒドロラーゼが関わっている。
5. Eの究極的代謝活性体は、シトクロム P450によりメチル基が酸化された後にN -脱メチル化で生成するメチルカチオンである。
(論点:代謝的活性化 / 発がん)

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引用文献|

文献1. Gruppi F, et al., Characterization of nitrogen mustard formamidopyrimidine adduct formation of
bis(2-chloroethyl)ethylamine with calf thymus DNA and a human mammary cancer cell line. Chem Res Toxicol. 2015 28(9):1850-60. doi: 10.1021/acs.chemrestox.5b00297. PubMed PMID: 26285869 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26285869
文献2. J-Stage|河合, ニトロソアミンの生成と代謝活性化について, 生活衛生, 22, 49-52 (1978) https://doi.org/10.11468/seikatsueisei1957.22.49
文献3. Rendic S, Guengerich FP. Contributions of human enzymes in carcinogen metabolism. Chem Res Toxicol. 2012 Jul 16;25(7):1316-83. doi: 10.1021/tx300132k. PubMed PMID: 22531028. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22531028
文献4. Chowdhury G, et al., Oxidation of methyl and ethyl nitrosamines by cytochrome P450 2E1 and 2B1. Biochemistry. 2012 18;51(50):9995-10007. doi: 10.1021/bi301092c PubMed PMID: 23186213 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23186213
文献5. 環境省|化学物質の環境リスク評価 第5巻 http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/index.html 22. ベンゾ[a]ピレン http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/pdf/chpt1/1-2-2-22.pdf
文献6. Villalta PW, et al., Ultrasensitive High-Resolution Mass Spectrometric Analysis of a DNA Adduct of the Carcinogen Benzo[a]pyrene in Human Lung. Anal Chem. 2017 5;89(23):12735-12742. doi: 10.1021/acs.analchem.7b02856 PubMed PMID: 29111668 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29111668
文献7. 食品安全委員会|評価書詳細 総アフラトキシン https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20080903001
文献8. Kamdem LK, et al., Dominant contribution of P450 3A4 to the hepatic carcinogenic activation of aflatoxin B1. Chem Res Toxicol. 2006;19(4):577-86. PubMed PMID: 16608170 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16608170
文献9. Guengerich FP, et al., Activation and detoxication of aflatoxin B1. Mutat Res. 1998 18;402(1-2):121-8. Review. PubMed PMID: 9675258 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9675258
文献10. Beland FA, et al., Formation and persistence of arylamine DNA adducts in vivo. Environ Health Perspect. 1985 ;62:19-30. PubMed PMID: 4085422 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4085422
文献11. 三森 国敏, 食品中に含まれる化学物質についての安全性評価, 食品衛生学雑誌, 1999, 40 巻, 1 号, p. 1-6, 公開日 2009/12/11, Online ISSN 1882-1006, Print ISSN 0015-6426, https://doi.org/10.3358/shokueishi.40.1
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/40/1/40_1_1/_article/-char/ja

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きっと、いいことあると思う。

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-132
【衛生】論点:代謝 / 代謝的活性化

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-131
【衛生】論点:代謝 / グルクロン酸抱合

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-131
【衛生】論点:代謝 / 代謝的活性化

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-131
【衛生】論点:代謝 / 代謝的活性化

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-130
【衛生】論点:代謝 / グルタチオン抱合

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【衛生】論点:人口動態 / 出生率・死亡率

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-125
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問97-17
【衛生】論点:人口動態 / 死亡率・死因

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