ガナッシュって、なんだ?[クリーム編vol.11]
「こ、これ!友達にあげる用に、作ったんだけど!ちょっと食べてみて」
ふふっ、友達用ね。ふーん、なるほどね。
お菓子作りなんてしたことないこの子が急にキッチン貸してなんて、何事かと思った。
「それじゃ、ちょっとだけいただくね」
…。うーん。お世辞にもおいしいとは言えないなあ。生チョコみたいだけど、にしてはなぜかすごく硬いし…。
でも、この子なりに、せっかく挑戦してるみたいだし、ちょっと応援してあげようかな。
「そうだねぇ。お母さんはおいしいと思うけど、友達に渡すならもっとおいしい作り方、一緒にやってみる?」
「え、しょうがないなあ。もっとおいしくなるなら手伝ってくれてもいいよ。でもメインは私が作るからね。友チョコだから」
「はいはい」
ふふふ。よーし、お母さんが、とっておきの愛の込め方、教えてあげましょう。
おはようございます!真白けいです!
お菓子の面白さ・奥深さを広めるために、見習いパティシエとして皆さんと一緒に学んでいきます。
読んでくれた方は、スキいただけるとすっごく嬉しいです!!ボクのやる気スイッチですので遠慮なく押してやってください!!
今回のテーマは、ガナッシュ です!
クリーム編ラストは、みんな大好きチョコレートクリームです!
是非とも、最後までお付き合いください!
Ganacheって、なんだ?
ではでは。結論から参ります。バーン!
ganache
(ガナッシュ)
||
チョコレートと生クリームを混ぜ合わせた
クリーム
い、至ってシンプル…!
前回までがもうワケワカメだったので身構えてしまいました。
…、あれ、ていうかチョコレートに生クリームを混ぜるものって、もしやアレか?!
あなたも一回は作ったことあるかもしれない…!
そう!毎年2月14日に訪れる最終戦争、バレンタインデーという名の悪魔の日になァー❗️❗️
すみません。語気が荒くなってしまいました。
一旦落ち着きます。
はい。改めて、生チョコってご存知ですか?あるいはトリュフチョコって。
チョコレートに、あったかい生クリームを注いで、溶かして混ぜて、ケースとかに流して固めるやつ。ココアパウダーまぶすやつ。
ガナッシュとはつまりそれです。初めて作る時には、全国民がエプロンと指とほっぺを真っ黒に染めるあれです。
数十分後キッチン見渡すと嵐が過ぎ去った後の様相を呈しているあれです。
なぁーんだ、混ぜるだけの簡単なやつか。
って思ったあなたは、まだこやつの恐ろしさを知らないようですね…!
混ぜるといっても、中でどういう変化が起きているのかを知らないと必ず失敗します。
これには「乳化」という現象が関わって来ていて、これについては別の記事にまとめますが、うまくいかないと油が滲み出てきたり、ザラザラになったり、全然固まらなかったり、すぐ溶けたりします…。
お菓子はお菓子側にルールがあるので、ボクら人間はそれに合わせる必要があります。
パティシエは相手のことをよく理解して毎日お世話している職業ともいえるんです。
自分勝手はメッ、ですよ。
ところで、ガナッシュが使われる場面って、生チョコやトリュフだけじゃありません。
・クレーム・アングレーズと合わせ、ムースを作る時のベースになる。
・オペラやガトー・マルジョレーヌなどで、他のクリーム同様に挟む。
・パート・シュクレに流してタルトにする。
・泡立てて空気を含ませて絞る。
・ティグレのくぼみに流す。
・ココアパウダーをかけた型に洋酒と合わせて流し固めて生チョコにする。
・ボンボンショコラの中身になる。
などなど
わーお、たくさーん!
シンプルだからこそ、汎用性が高いってことかな!
生クリームを牛乳やフルーツピューレに替えたりクレーム・アングレーズに替えたりもできちゃうのでとても使いやすいのですが、初めての方には生クリームがおすすめです。
なぜかというと、生クリーム自体たくさんの脂肪分と水分が乳化している状態のもので、
ということは天然の乳化剤が入ってるわけで、
それがあるとチョコレートとも乳化しやすいからです。
生クリームについて、詳しくはこちら!
そんな、今でこそそんなさまざまな用途に使われるガナッシュですが、最初はどうやってできたのか、その由来を辿っていきましょー!!
ガナッシュの由来[説①]
これが1番有名かもしれません。
パリ、とある菓子店。チョコレートを扱っていたところに見習いが誤って熱い生クリームをこぼしてしまいました。
それを目撃したシェフ、見習いに向かって「Quel ganache!」と怒鳴りました。これはフランスの古語で「マヌケ、とんま、のろま」という意味なのでめっちゃ怒ってます。
ところが、こぼしてしまったものをどうしようかと一旦混ぜてみると、おいしいクリームになっていたので、このエピソードから取ってganache(ガナッシュ)と名付けたとか。
いやすごい完成されたエピソード…!
こんな起承転結がしっかりしてる話残ってるかね!
ツッコミどころはありますが、ほんとだったらすごいですね。
とか言っててボクは好きなんですけどね。
なんか初めは「このマヌケが!(クワッ)」って感じの罵倒する言葉なのに、
最終的に名付けられたということは「このマヌケが〜!(頭わしゃわしゃ)」みたいな、なんやかんやでハッピーエンドが見えるようで。
あと、シェフそんな怒る?とか思わないであげてください。
今もそうですが、チョコレートに水分を入れるということは、ちゃんと固まらなくなるのでご法度中のご法度、禁忌中の禁忌でしたから、このお話でガナッシュができたのは本当に奇跡なんです!
だからこのエピソードはあり得そうであり得なさそうであり得そう。微妙なラインです。
ただこうでもしないとチョコレートに生クリームを注ぐヤツは現れなかったかもしれません。
ガナッシュの由来[説②]
1850年頃、パリの菓子屋、シロダンが売り出した。
と、ある文献にはありました。
シロダンが日本語の検索では引っ掛からなかったので、フランス語で調べてみました。
ボクはフランス語が不自由なのでGoogle翻訳先生にご教授いただいたのでニュアンスが異なるかもしれませんが、大枠はこうです。
1860年、劇作家のポール・シロダンはパリに菓子店を開いた。1862年、『栗の香りのガナッシュ』あるいは単に『ガナッシュ』を発売。
ヴィクトリアン・サラドゥの戯曲コメディー・オブ・ザ・イヤー『レ・ガナッシュ』に合わせて発売したため大成功した。その後にもサラドゥの戯曲に合わせた菓子を発売している。
もうね、疑問符で頭が埋め草尽くされております。
シロダン劇作家だったん??
しかも前情報と違う1860年??
『レ・ガナッシュ』についてはマヌケって意味の劇のタイトルなのかな??コメディーらしいし多分そうだよね?
しかもですね、シロダンの綴りはSiraudinだと信じて調べてるわけですが、Siraudinの日本語表記がバッラバラでして、シローディンとかシラウディンとかGoogle先生に振り回されたわけです。
とにかく詳しい情報源がここしかなくて、頑張って想像するしかありません。
シロダンはオーナー的な立ち位置なのかな。
ガナッシュの由来[説③]
フランス南西部の方言で、ganacherという言葉があるそうな。これは「ぬかるんだ道を苦労して歩く」って意味なんだって。ガナッシュも結構ベトベトというか、少し似た雰囲気があるのでそこから名付けられた。
なるほど。
どうかな〜。南西部の方言かあ。
ていうかぬかるんだ道って、ガナッシュにこんなに当てはまる感じの言葉がよくありましたね。
驚きの方が強いけど、まあこれはこれでアリかもしれません!!
由来のまとめと妄想
実は、ガナッシュを作る時には必須のチョコレート自体、固形になったのは1847年のことです。
だから、[説①]もそれ以降であることは確定しています。
年代も近いし組み合わせられそうなので、[説①]と[説②]を合体させて妄想してみます![説③]はあまりにも毛色が違いすぎて組み込めませんでした!
ここからはボクの妄想です!お気をつけください!
[事実]1847年、固形チョコレートの発明
↓
[妄想]菓子屋の間でチョコレートの取り扱い方が認知されていく
↓
[エピソード]1860年、劇作家シロダン、パリに菓子屋を開く(オーナーとして?)
↓
[妄想]この菓子屋でマヌケ事件が起こる
↓
[エピソード]見習い、チョコレートに生クリームをこぼし、ガナッシュの原型ができる
↓
[妄想]ちょうどサラドゥの戯曲がマヌケを題名にすることを聞きつけたシロダン、マヌケのエピソードのあるこのチョコレート菓子にフレーバーをつけて売り出すことを考える
↓
[エピソード]1862年、戯曲に合わせてガナッシュと名のついたお菓子が売り出され、大成功する
↓
[妄想]以降チョコレートの新しい使い方として広まる
こんな感じだったら面白いなーって思って考えてみました!
出来過ぎエピソードですかね…。
でも考えるのは自由じゃん!!
ぜひあなたも、妄想の世界へ!笑
結局、ガナッシュって、
「ポジティブ」だ。
だってマヌケって名前ついてるけど今ではそれが面白いエピソードで愛着みたいに思えるわけで、それはガナッシュ自体がおいしくて生き残ってきたからこそで。
まるで乳化に失敗するボクらに、失敗しても大丈夫と教えてくれているみたいです。
あなたも、失敗してもポジティブに、ガナッシュ作り挑戦してみてください!
そして、日常的にお世話しているパティシエ、ショコラティエの実力を感じてみてください!
ということで今回は以上です!
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クリーム編は一旦終了!!お疲れ様です!
次回の大テーマは…
「パータ・ジェノワーズ」かな?!多分!
生地編に突入だ!!
参考文献
猫井登、お菓子の由来物語、幻冬舎ルネッサンス、2011
辻製菓専門学校 小阪ひろみ 山崎正也、使える製菓のフランス語辞典、柴田書店、2018
【コラム】チョコレートの文化と歴史、GODIVA、閲覧日2021-3-28、https://www.godiva.co.jp/column/about_chocolate.html
これであなたもお菓子通に♪ガナッシュと生チョコの違いってなに?、miroom、閲覧日2021-3-28、https://miroom.in/articles/icingcookie/chocolate
引き続きお菓子の話、街角のmichel、アメブロ、閲覧日2021-3-28、https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/nomme-michel/entry-10585380359.html
ガナッシュ、お菓子の辞典 か、閲覧日2021-3-28、http://www.la-fontaine.co.jp/jiten_ka.html
チョコの能書き、でんきやかん、楽天ブログ、閲覧日2021-3-28、https://plaza.rakuten.co.jp/denkiyakan/diary/200702080000/
ガナッシュ、用語集、SALON DU CHOCOLAT®︎、閲覧日2021-3-28、https://www.salon-du-chocolat.jp/glossary/1638
生チョコレート、Wikipedia、閲覧日2021-3-28、https://ja.m.wikipedia.org/wiki/生チョコレート
Ganache、WIKIPÉDIA、閲覧日2021-3-28、https://fr.m.wikipedia.org/wiki/Ganache
Paul Siraudin、WIKIPÉDIA、閲覧日2021-3-28、https://fr.m.wikipedia.org/wiki/Paul_Siraudin
※この記事は上記の参考文献を元に執筆しました。諸説あるものは一部のみ紹介しています。
また、新たな事実を勉強し次第、追記・編集する場合があります。
いつも応援ありがとうございます!ぜひ、オススメしてください!みんなにお菓子のこと、もっと知って欲しい!!