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今回は「他者と働く」の著者、宇田川元一さんの新著。「組織が変わる」の紹介です。(特に「組織開発」に携わっている方にはおススメです)

前著「他者と働く」では、職場で発生する問題や課題には「技術的問題」と「適応課題」の2つがあり、昨今、特に人が関わる「職場」での問題/課題は、既にある方法で解決できる「技術的問題」ではなく、人と人、組織と組織の関係性の中で生じる「やっかいな問題」である「適応課題」として捉える必要がある、という観点は大いに共感できる内容でした。

そして、その続編?が出るということで、アマゾンで速攻ポチって、あっという間に読了。今回も期待に違わず大いに共感できるとともに、とても実践的な内容でした。以下、なるほど、と思った点をいくつかご紹介します。

「1on1」の次は「2on2」?

ちょうど、自身の仕事で1on1の実践を推進していたこともりあり、最初にこの本を手に取った時は、「1on1」との対比手法での「2on2」として捉えていましたが、読み進めるうちに、「組織開発」を進めるための一対話手法としての「2on2」ということを理解できました。なので、改めて対比するものでもないのですが、簡単な違いだけ先にご紹介します。

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1on1は、おそらく「メンバーの成長」のために上長が対話を通じて支援する、という目的で実施されている企業、組織が多いと思いますが、ここで紹介されている「2on2」は、今ある困ったことや、日々モヤモヤしながら何か問題だと感じていることを解決するための一手法です。
2on2の実際のやり方もかなり詳しく紹介頂いていますが、簡単に言うと、4人を2人ずつ、それぞれ話す2人と聞く2人に分けて、他者との会話を聞いて、一歩引いた視点で見ることで、見える風景を変えてそこに生じている問題を捉えなおそう、という手法です。

組織の「慢性疾患」

「多くの人たちは文化や風土等、抽象的な問題には困っていない。何に困っているかわからないから風土や文化の問題だと表現しているだけ」と耳の痛いくだりが。。。
職場での問題は何に困っているか、実はわからないということを起点に、職場の問題は徐々に進行していて、今は大きな問題にはなってないかもだけど、このまま続くと。。。という漠然とした不安を感じている状況や閉塞感を「慢性疾患」と表現しています。
慢性疾患ということは、「合併症」のリスクもあるわけで、緊急度は低いけど、重要度は高い問題という捉え方です。そして、こうした「慢性疾患」を治していくためには「対話」が効果的というお話です。

自分も問題の一部?

2on2のやり方とあわせて、いくつか大切にしたいポイントを紹介していますが、その一つが「自分も問題の一部だと認識する」という観点です。でも、これ結構難しいですよね。何か問題があれば、どうしても、誰かのせいにしたくなるのもよくわかります。なので、そうさせない工夫として、問題と思われる事象を「妖怪」に見立てて名前をつける問題の「外在化」を勧めています。その「妖怪」はどんな時にやってくるか、何を食べるのか、口癖は何か、と言った「生態」洗い出すことで、みんなでそれに楽しみながら立ち向うことができる、というものです。

Whyは聞かない(問わない)

例えば、「部下のモチベーションが低い」という問題を感じているマネージャーがいたとして、「なぜ部下はモチベーションが低いのだろうか」と考えてしまうと、マネージャー自身がどうしても批判的な視点が強くなってしまい、問題を単純化してしまいがちになることを指摘しています。
「モチベーションが低い」という事象の裏には必ず背景があるわけで、それも一つではなく、複雑な理由が絡み合っているので、なぜと聞く(ここでは考える)ことで、そうした複雑な風景に目をむけなくなってしまうので、モチベーションが下がったのは「いつごろか?」とか「どういう時に起きる?」といった投げかけ(考え方)の方が効果的と紹介しています。

その他、詳細は割愛しますが、
・対話はわかりあうのが目的ではない
・自分の喜怒哀楽を大切に
といったポイントも非常に興味深い観点でした。

「2on2」というややキャッチーな名称ではあるものの、全体を通して、ベースになっているのは、「他者と働く」でも強調されていた「人はそれぞれの「ナラティブ(捉え方の枠組み、物語)」がある」ことを理解することの大切さです。
見ている景色が違えば、考え方が違うのとは当然ですし、人それぞれ、様々な歴史があるわけで、そうした「前提」を意識するだけでも、人との関係をより良くしていくことが少し楽になるのではないかと感じさせてくれた本でした。
まさに、ダイバーシティ&インクルージョンの「インクルージョン」を進めて行くためのキモだと思いました。
※宇田川さん、今回もとても素晴らしいインプットをありがとうございました。

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