2020年ベスト・トラック50



 これまでのベストと同じく、質はもちろん同時代性も備えたものを選んでいます。また、今年より前に発表されていたとしても、2020年リリースのアルバムなりEPに収録なら選考対象としました。おおまかな音の構成は同じでも、ミックスやアレンジが変わってる場合もあるので。Webメディアやブログで評した曲は、曲名にリンクを貼っています。ぜひ読んでください。

 2020年のベスト・トラックについては、〈K-POPおもしろい!〉。 この言葉が妥当だと思います。ひとつの作品としてはイマイチでも、曲単位では興味深いアレンジや歌詞の宝庫。リード曲とそれ以外の差が大きすぎるのはなんだかなと思いつつ、K-POPを多くランクインさせました。

 一方で、K-POPも含めたアジアの音楽に興味深いと感じたり、おもしろいと興奮することも多かったです。特にリピートしたのは、ShelhielのデビューEP「Superstrobe」。彼はマレーシアのアーティストで、Rinse FMにもピックアップされるなど、世界的な注目を集めています。

 アジアの音楽は数年前から積極的に聴いてますが、2020年に入って現地の動きが一気に広く認知されたなという印象です。Dorkも韓国のシンガーソングライターNijuu(니쥬)を大々的にフィーチャーしたりと、グローバルな人気を得たK-POPや88rising周辺の人たちとは毛色が違うアーティストも、以前よりさまざまなところで見かけるようになりました。

 《アジア》といっても、そこにはいろんなシーンや流れがある。このような視点が広がり、特定の音楽だけが《アジア》を象徴するかのような語り口も減っていく。そんな流れが今後は拡大していくんだろうと思っています。


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50 Backroad Gee “Party Popper”

 いま、イギリスでもっとも勢いがあるラッパーのひとりと言っていいだろう。グライムとUKドリルが交雑したトラックを作れる才能は、さまざまな世代のラッパーやリスナーを繋げるのではないか。



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49 GFRIEND(여자친구)“Apple”

 粗々しい音色も目立つビートがおもしろい。メルヘンチックなサウンドスケープにも惹かれた。



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48 ATEEZ(에이티즈)“To The Beat”

 もし、トゥナイトがK-POPグループをプロデュースしたら...。そんな想像を具現化したようなEDMトラップ。強烈なビートがたまらない。



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47 SF9(에스에프나인)“One Love

 フィラデルフィア・ソウルを連想させるストリングスが耳に残るディスコ。ドライブのBGMにした回数は数えきれない。



三浦大知“I'm Here”

46 三浦大知 “I'm Here”

 当然のようにヴォーカルは素晴らしい。歌声を強調したプロダクションも聴きごたえ十分。



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45 Hwa Sa(화사)“I'm Bad Too”

 ファサの多彩なヴォーカリゼーションを楽しめる曲。横ノリで踊れるグルーヴもグッド。



玉名ラーメン“Planet”

44 玉名ラーメン “Planet”

 囁きに近い妖しげなヴォーカルが印象的なエレ・ポップ。リムショットが目立つビートはシカゴ・ハウスを連想させる。



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43 SuperM(슈퍼엠)“Step Up”

 K-POP界のアベンジャーズによる良曲。ヴァースではたおやかなR&Bと思わせておきながら、サビでUKガラージへ雪崩れこむ展開に笑いをこらえきれなかった。



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42 Perko “The Reason”

 デンマークを拠点とするDJ/プロデューサーによるトラック。ダークなサウンドスケープはダブステップの要素が濃厚だ。



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41 Shackleton&Waclaw Zimpel “Ruined Future”

 ダブステップを出自とするシャックルトンが、ポーランドのマルチ・インストゥルメンタリストであるヴァツワフ・ジンペルとコラボ。立体的音像にトリップさせられた。



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40 TeeZandos x Fizzler “Phone Call”

 UKドリル・シーンで活躍するラッパーの2人がコラボ。初期のグライムに近い音色やベース・ラインを使っているのが興味深い。イギリスのラップ・シーンにおける新たな動きのひとつという意味でも必聴だ。



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39 DJ Clea “Gothic Girl”

 サウス・ロンドンの音楽シーンを語るうえで欠かせないレーベル、Churchからリリースされたトラック。大仰な展開に頼らず、音の抜き差しで私たちを踊らせるプロダクションの手腕は確かだ。制作者はスウェーデンのDJ/プロデューサー。



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38 Moon Byul(문별)“Mirror”

 ムンビョルのシャープなラップとヴォーカルが素晴らしい失恋ソング。ダブステップの意匠が印象的なビートもおもしろい。



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37 BTS(방탄소년단)“Dynamite”

 今年多かったディスコな音楽のなかでも特に聴かれた曲だろう。シンコペーションが効いたベースにやられた。



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36 B:Thorough “Trance 2000”

 曲名通りトランスである。イントロのシンセで“いつの時代だよ!”と爆笑し、ビートが入ったら踊り狂えばいい。



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35 MONSTA X(몬스타엑스)“Fantasia”

 ヴォーカルがとにかく力強い。ダンスホールの匂いがするビートも悪くない。



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34 Jon Gravy “Summer'94”

 オーストリアのダンス・ミュージック・シーンで活躍する男の曲。太いキックといなたいシンセストリングスは、デトロイト・テクノに通じる叙情性を見いだせる。



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33 (G)I-DLE((여자)아이들)“i'M THE TREND”

 自らのヒット曲や生い立ちを引用したファンソング。無難なノベルティ・ソングかと思いきや、ディスなフレーズや皮肉もある毒々しい歌だった。ますますこのグループを好きになったのは言うまでもない。



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32 New Order “Be A Rebel

 マンチェスターのバンドが発表した新曲。昔からこのバンドは世情と共振していたなと想いださせてくれるエレ・ポップ。



Chara YUKI“ひとりかもねむ”

31 Chara YUKI “ひとりかもねむ”

 ヴォイス遊びが光るハウス。譜割りの気持ちよさが気にいった。



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30 Li Yilei “A Field Of Social Tension”

 中国生まれ、現在はロンドンで活動しているアーティストのデビュー・アルバム『Unabled Forms』に収録。奔放なパンニングや端正なプロダクションが際立つエレクトロニック・ミュージックだ。



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29 BLACKPINK(블랙핑크)“Pretty Savage

 ギターを取りいれたクランク。秀逸な音色選びが際立つミニマルなビートも良い。こういう曲を多く発表できるなら、ブラックピンクはもっと飛躍できるだろう。



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28 Simphiwe Dana “Mama Was A Kitchen Girl”

 南アフリカのシンガーソングライターによる曲。アフロフェミニズムの支持者としても知られるだけあって、歌詞にもその視点が滲んでいる。



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27 Solar(솔라)“Spit It Out”

 ソラ(ママム)が待望のソロ・デビュー。ラテン風の音色を散りばめたハウスという趣で、キャッチーな歌メロが映える。



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26 ELLLL “Fungi Dance”

 ドイツのDJ/プロデューサーによるトラック。多彩なヒット音と秘教的雰囲気を醸すサウンドスケープがおもしろいテクノ。



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25 Haruka Salt & W.Y. Huang “OG Gong”

 SF的雰囲気を醸すシンセが特徴のハウス。徐々にグルーヴの沼にハメてリスナーを飛ばすビートに拍手。



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24 Risso(리소)“Allergy

 3拍目のスネアを強調したビートはもろにUKガラージ。音を詰めこまずにグルーヴを作るプロダクションが光る。



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23 Little Simz “One Life, Might Live”

 イギリスのラッパーが発表したEP「Drop 6」のなかで特に好きな曲。スロウなブレイクビーツとリトル・シムズの落ち着いたラップのケミストリーに笑顔。



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22 Yong Yong(용용)“Balencia”

 最初の硬質なキックが刻まれた瞬間、虜になっていた。今年よく聴いたヒップホップのひとつ。



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21 Honey Dijon “La Femme Fantastique”

 官能的なハウス・ミュージック。肉欲と汗が入りまじる臭気をまとう恍惚のグルーヴにハマった。



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20 Taylor Swift “Mirrorball

 世界的ポップ・スターとして歩んできた自身の道のりを、小さじ一杯の自虐と優れたメロディーで振りかえったような歌に聞こえる。テイラーのディスコグラフィーのなかでも群を抜いて心に刺さった。



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19 fromis_9(프로미스나인)“물고기 (Mulgogi)

 マドンナ“Holiday”に通じるシンセ・ベースの音色とカッティング・ギター。ディスコ要素が漂う曲は、さながら1980年代のポップ・ミュージックにいざなう招待状だ。



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18 Crossy “Fendi”

 言葉を詰めこみがちなグライムラッパーたちのなかでも、特に言葉数が多い曲。余裕のないラップに聞こえるかもしれないが、言いたいことがたくさんある系のラッパーとして楽しめば無問題。



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17 Lady Gaga “Sour Candy”

 アーマンド・ヴァン・ヘルデン“Witch Doktor”やジュニア・ヴァスケス“Get Your Hands Off My Man (Sound Factory Mix)”あたりのハウス・クラシックがちらつくサウンド。ヴォーグ・ハウスとハード・ハウスの要素を混ぜたのはおもしろい。ブラックピンクが参加。



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16 Rebel Yell “Anti Club Music

 タイトルとは違い、クラブで映えるダンス・ミュージック。リヴァーブが深くかかった蠱惑的ヴォーカルがクセになる。



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15 Dua lipa “Levitating Feat. Madonna And Missy Elliott(The Blessed Madonna Remix)”

 高揚感のある原曲をブレスド・マドンナがリミックス。妖しげな雰囲気を醸すベース・ラインの反復に触れたら、瞬く間にトリッピーな感覚に包まれる。マドンナ“Hung Up”のMVへ向けたオマージュに思えるMVもグッド。



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14 CHAI “Donuts Mind If I Do”

 アンドウェラズ・ドリームあたりのクラシカルなサイケ・ポップも脳裏に浮かぶサウンド。着実に音楽性の幅を広げていることがわかる曲。



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13 ITZY(있지)“Ting Ting Ting

 スティールパンに似た音色のシンセ・フレーズが際立っている。ポップ・ソングでありながら、クラブのサウンドシステムでも通用する機能的ダンス・ミュージックとしても楽しめる。



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12 BVNDIT(밴디트)“Cool

 チアリーディング的なかけ声が飛びだすキャッチーなバブルガム・ポップ。それでいて、TR-808風のヘヴィーなベースを前面に出したビートなど、攻めた音作りも光る。MVも必見。



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11 Emma-Jean Thackray “UM 음”

 トランペットを中心に、さまざまな楽器を使いこなすUKジャズ・シーンの秀英が発表した曲。豊富なグルーヴと目まぐるしい曲展開に宿る才気を無視するのは難しい。



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10 CIFIKA(씨피카)“Came To Tell”

 メタリックな響きのシンセ・ベースが耳に残るエレ・ポップ。ほんのりインダストリアルの香りがするサウンドスケープにも惹かれた。



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9 Weki Meki(위키미키)“Cool

 一言で表せばユーロ・ダンス。流行に迎合していないおもしろい曲がたくさん生まれるのはK-POPの大きな魅力のひとつ。



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8 GWSN(공원소녀)“Tweaks”

 流麗なヴォーカルとビートの中毒性が魅力のハウス。〈虹〉というキーワードをうまく使った前向きな歌詞は、セクシュアル・マイノリティーのカルチャーから生まれたハウスのルーツを想いださせてくれる。



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7 Shelhiel “Fashion Angel”

 マレーシアのアーティストによる官能的なUKガラージ。音数を抑え、ダークなシンセ・ベースを前面に出したプロダクションが大正解。この曲が収録されたデビューEP「Superstrobe」も、多彩なアレンジを楽しめる内容で良作だった。



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6 Jessie Ware “Spotlight”

 イントロで響きわたるジェシーの甘美な歌声とストリングスでノックアウト。上品で艶やかなエレクトロ・ディスコは筆者の腰を何度も揺らしてくれた。



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5 diniBoy “Identidade”

 ブラジルで良質なグライムを鳴らす男の曲。ゲットー・ハウス的なリズムも取りいれるなど、多彩なビートの引きだしを楽しめる。



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4 Fiona Apple “For Her

 性暴力サヴァイヴァーの言葉が信じてもらえない憤りを歌っている。男性優位な家父長制という社会構造への批判的姿勢が目立つ『Fetch The Bolt Cutters』のなかでも、とりわけ強烈な曲だ。



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3 Jorja Smith “By Any Means” 

 イギリスの偉大なるシンガーは自国に蔓延る不平等との戦いを高らかに宣言した。〈I will fight(私は戦う)〉と歌う声は艶やかでありながら、力強い。



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2 Everglow(에버글로우)“Untouchable

 16分で刻まれるハイハットや心地よい横ノリのグルーヴが印象的なディスコ・ソング。女性賛歌な歌詞も心に響いた。



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1 IU(아이유)“eight(에잇)

 プロデュースとフィーチャリングにBTSのシュガを迎えた名曲。親しみやすいメロディーと譜割りの気持ちよさが飛びぬけている。ソルリ、ハラ、ジョンヒョンといった、この世にいないIUの親友たちに向けたように感じられる歌詞とMVも素晴らしい。







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