masaru0505
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財政政策に関する発表資料(一部)の公開
久しぶりの投稿です。
昨年、財政政策に関する私の考えを披露させて頂く機会がありましたので、その際に作成した資料の一部を公開します(本当は昨年中に公開しておけばよかったんですが…)。秋頃に作ったので、データはその頃の最新のものまでが掲載されています。
パワーポイントの資料なので最初はSlide Shareにアップロードとしてみましたが、字がずれたりしてしまったので、pdfにしてResearchG
【備忘録】ウィリアム・ミッチェル/トマス・ファシ『ポスト新自由主義と「国家」の再生:左派が主権を取り戻すとき』(その2)
ウィリアム・ミッチェル/トマス・ファシ『ポスト新自由主義と「国家」の再生:左派が主権を取り戻すとき』で私が重要だと感じた箇所を紹介する2回目です。その1はこちら。なお、その1で書き忘れていましたが、強調は引用者によるものです。
その2は「Ⅱ 二十一世紀のための進歩的な戦略」からの引用です。第8章で現代貨幣理論(MMT)、第9章でジョブ・ギャランティーが簡潔で分かりやすく説明されており、これを読め
統合政府の予算制約式?恒等式でしょ!
統合政府の支出と収入政府の財政収支を、中央銀行からの国庫納付金分を考慮して整理すると、政府と中央銀行が統合された財政収支となる。これは一般的には「統合政府の予算制約式」と呼ばれ、以下の(1)式のように表される(Walsh"Monetary Theory and Policy"(2017)のChapter 4 Money and Public Financeを参考にした)。
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財政支出がいくら必要かを考えてみる
2021年7月6日、内閣府が2021年度の経済指標についての試算を公表しました。実質国内総生産(GDP)の成長率は3.7%と、1月18日の政府経済見通し4.0%から下方修正された試算ながらも、「GDPは2021年中に感染拡大前の水準を回復することが見込まれる」と書かれています。
感染拡大前とはいつのことを指すかは明示されていませんが、それを19年度(20年3月まで)だとすると、内閣府の国民経済計
【備忘録】ステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』(その2)
ステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』で私が特に多くの人が知った方がいい、と思っている箇所を紹介するその2(最終回)です(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)。その1はこちら。
他にも重要な記載がされている箇所はありますが、あまり長くなるのも何ですので、あとは本書をお読み頂ければと思います。名著です。
MMTは税金が重要である理由を少なくとも4つ挙げている、と説
【備忘録】ステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』(その1)
ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』の備忘録(その1、その2、その3)に続いて、昨年10月に発売されたステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』で私が特に多くの人が知った方がいい、と思っている箇所を2回にわたり紹介します(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)。
断片的な引用ですし、また当然他にも重要な箇所はたくさんあるので、あくまでこれは本書を読むきっか
【備忘録】ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』(その3)
『ミンスキーと<不安定性>の経済学』で私が特に印象に残ったり箇所を抜き出して残しておく記事の「その3」です(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)。その1はこちら、その2はあちらです。
今回が最後で「第七章 ミンスキーと金融改革」、「第八章 結論――安定性、民主主義、安全および平等を促進するための改革」の紹介です。
連邦準備制度の政策にとって唯一の普遍的なルールは、
【備忘録】ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』(その2)
『ミンスキーと<不安定性>の経済学』で私が特に印象に残ったり箇所を抜き出して残しておく記事の「その2」です(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)。その1はこちら。
前回は全8章のうちの第3章までの引用でしたが、今回は「第四章 貨幣と銀行業務に対するミンスキーの考え方」、「第五章 貧困と失業に対するミンスキーのアプローチ」、「第六章 ミンスキーと世界金融危機」の紹介で
【備忘録】ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』(その1)
『ミンスキーと<不安定性>の経済学』で私が特に印象に残ったり箇所を抜き出して残しておきます。その中で強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような部分です。長くなるので3回に分けます。
ミンスキーが論じたように、金融危機に対する唯一の賢明な対応は、アーヴィング・フィッシャーが「負債デフレ」と呼んだ、パニックに陥った家計、企業、銀行が保有資産を流動化しようと金融資産を投げ売りするのを
日米の需給ギャップを見てみる
今回は、以下の前回の記事で出てきた「需給ギャップ」のデータを見てみます。
日本の需給ギャップの推計方法
前回の記事でも紹介したアメリカの1.9兆ドルの経済対策について、ポール・クルーグマン氏がアメリカの需給ギャップ(output gap)に触れた後、それ以上の規模の経済対策を行うことが妥当である旨、主張しています。
このように需給ギャップ(=(実際のGDP-潜在GDP)÷潜在GDP)や、その算
なぜ財政支出がもっと必要なのか
以下の前回の記事の最後に、現在の日本に必要なのは「国債を将来世代の負担と捉え、政府債務を累積させないようにするためには増税か財政支出抑制が必要」という考え方を放棄し、財政支出を出し惜しみせずに行うことだ、と書きました。
では、なぜ財政支出を出し惜しみせずに行うことが必要なのか、本記事で私見を書こうと思います。
必要な消費やインフラ投資を行うためのお金が足りていない
私がなぜ財政支出が必要だと考
「新しい経済学」はすでにある
先日、TBSの番組サンデーモーニングで寺島実郎氏が「財政赤字で世界の一番悪い見本が日本。借金というのはあくまで後代負担、つまり子どもや孫に借金を押しつけることになる。新しい経済学とルールが必要」といった主旨の発言をし、Twitterでも話題になっていました(例えばこのツイート)。
発言の前半は、財務省HPに掲載されている「債務の増嵩を伴い、将来世代に膨大な財政負担を先送りしている」という認識に沿