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【備忘録】ステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』(その1)

ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』の備忘録(その1その2その3)に続いて、昨年10月に発売されたステファニー・ケルトン『財政赤字の神話』私が特に多くの人が知った方がいい、と思っている箇所を2回にわたり紹介します(強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような箇所)

断片的な引用ですし、また当然他にも重要な箇所はたくさんあるので、あくまでこれは本書を読むきっかけとしてもらえれば幸いです。また、日本版序文からのものである最初の2つの引用は、今もなお政策担当者に届くべきメッセージだと思います(よって全て強調)。

日本政府は主権通貨(円)の「発行者」であるため、コロナ危機からの景気回復を支える必要な財政支援策をすべて「まかなえる」だろうか、と心配する必要はまったくない。必要だと思う分だけ支出を確約できる。資金が枯渇することはあり得ない。また、必要な支出をまかなうために徴税する、あるいは誰かから日本円を借り入れる必要は一切ない。(p9)
たとえば景気減速への対応として、所得を補う一律給付を実施して支出を下支えすることができる。企業に対し、人件費その他の支出を補助することもできる。失業した人に新たな雇用を保障することもできる。女性の労働参加を支援し、その地位の向上や報酬の改善に向けた取り組みも強化することもできる。社会のセーフティネットを拡充して高齢者への年金給付を増やし、国民全体に老後の生活への安心感を与えることもできる。教育、インターネット環境、病院、公的医療保険に投資することもできる。重要な製造施設を国内に呼び戻し、サプライチェーンを冗長化することもできる。次の感染症流行への備えを固めることもできる。研究機関、持続可能な住宅、電力供給網をはじめさまざまな分野に投資し、すでに進行している気候変動危機への対策に着手することもできる。(p13)
社会の抱えるあらゆる問題は単に財政支出を増やせば解決するなどと、もちろん私は考えてはいない。予算に「財政的」制約がないからといって、政府ができること(そしてすべきこと)に「実物的」制約がないわけではない。どの国の経済にも内なる制限速度がある。それを決めるのは「実物的な生産能力」、すなわち技術の水準、土地、労働者、工場、機械などの生産要素の量と質である。(p19)
必要な資金はいつだって確保できる。重要なのは、資金を何に使うべきか、だ。(p28)
富裕層に課税すべき理由は、資産と所得の配分のバランスをただすため、そして民主主義の健全性を守るためだ。(p29)

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