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【備忘録】ランダル・レイ『ミンスキーと<不安定性>の経済学』(その1)

『ミンスキーと<不安定性>の経済学』で私が特に印象に残ったり箇所を抜き出して残しておきます。その中で強調部分は、私が特に重要だと感じたり、目から鱗が落ちたような部分です。長くなるので3回に分けます。

ミンスキーが論じたように、金融危機に対する唯一の賢明な対応は、アーヴィング・フィッシャーが「負債デフレ」と呼んだ、パニックに陥った家計、企業、銀行が保有資産を流動化しようと金融資産を投げ売りするのを防ぐために、FRBが「最後の貸し手」としての役割を果たすことである。(p18)
(前略)ミンスキーは、現代経済の内的ダイナミクスは均衡に向かうものではないと主張した。そのように作用する見えざる手など存在しないのである。たとえ主流派寵愛の「均衡」が達成したとしても、その内的ダイナミクスがわれわれを均衡からはじき飛ばしてしまうのである。システムは安定的ではないのである。そして、もし奇跡的に度重なる幸運に恵まれて、安定的な均衡を達成できたとしたら、安定性が不安定性を生み出すことになる。(p27)
ミンスキーは、ガーレイとショーにならって貨幣創造に幅広く取組み、「誰でも貨幣を創造することができる。問題はそれを受け入れさせることができるかである」と論じた。貨幣は、実は計算貨幣で表示された借用書(IOU)に過ぎないか、ある貨幣が他の貨幣よりも幅広く受け取れるという貨幣ヒエラルキーがあって、そこで財務省と中央銀行によって発行される通貨(currency IOU)が貨幣ピラミッドの頂点に立つ。(p41)
ミンスキーであれば、世界金融危機(引用者注:2007~8年の金融危機のこと)が1930年型の世界大恐慌にならなかった理由は、大きな政府の予算が一気に(1兆ドルもの)巨額赤字となり、大きな銀行(FRB)が空前の規模で準備預金を貸し出したからであると主張しただろう。また、おそらく政府の赤字はさらに大きくすべきであったし、FRBの反応はもっと素早くもっと断固としたものであるべきだったとも主張したであろう。(p47)
ミンスキーは、失業、貧困、不平等を減らすことが金融的な安定性を促進するのに役立つと考えていた。(p48)
ミンスキーによれば、政府は、その予算規模の変動が、民間投資の規模の変動を相殺できるぐらい大きくなければならない。この定義に従えば、政府支出は概ね「投資と同じ、あるいはそれ以上の規模」でなければならないということになる。(p55)
政府支出に関して、生産を増やすことなく総需要を増加させる政策から、総需要と総供給の両方を増やすような政策へ移行することができれば、物価は低くなるだろう。とりわけ、公共インフラ整備と(福祉ではなく)最後の雇い手プログラムによる雇用創出は、需要の増加と同時に供給能力を増加させることでインフレを抑制するだろう。(p58)
ケインズがそうであったように、ミンスキーも(前述したように)呼び水よりも目標を定めた支出を提唱した。失業を減らすことを目指す政策であれば、雇用を創出し、労働者を雇うことが最善の方法である。インフラを改善する最善の方法は、それを達成するためのプロジェクトに労働者を差し向けることである。(p82)
ケインズは、経済が改善するにつれて総需要の増加よりも需要の適正な分配な喫緊の課題になることに言及した際に、その点を改めて指摘している。これらの理由から、ミンスキーは「最後の雇い手」を提唱した。(p83)

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