脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー)

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脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー)

clubhouseでの朗読どうぞ作品の他メディアでの使用についてはご相談ください。著作権法では「非営利・無料・無報酬での上演について作品の使用許諾は不要」となっていますが、コメントにてお知らせいただけるとありがたいです。 https://lit.link/masakoimai

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最近の記事

部屋が非常に散らかっていますが活気があります

朝食の後、テーブルでスマホを見ていた夫がブハッと笑った。 スマホを「見ていた」と書いたが、夫は音声読み上げ機能を使い、目ではなく耳でスマホを見る。 たった今、吹き出すような面白い話が耳に飛び込んだらしい。 台所で洗い物をしていたわたしには、読み上げ音声は水の音でかき消えていたが、ブハッは聞こえた。 「何?」と洗い物を中断して近づくと、 「これ」と手にしたスマホを差し出された。 ロービジョン仕様に白黒逆転させた画面。上半分が写真で、下半分が文字。カメラに映ったものをA

    • ローマの一番よい三流のホテル

      いちごのリゾットと蜂の羽音(前置き。2か月前、春の初めの3月に下書きに放り込んだnoteなので、5月に読むと、春感にズレがあるかもしれません) 「いちごのリゾットなるものを初めて食べた」と打ちかけて、「リゾット」を「リゾート」と打ち間違えていることに気づいた。いちごのリゾートはまだ食べたことがない。 ローマで修行したシェフによると、いちごのリゾットは現地では珍しくないメニューらしい。日本であまり遭遇しないのは、日本のいちごの糖度が高すぎて、甘くなりすぎてしまうのもあるので

      • イランでは女性の膝の屈伸は卑猥です

        13年前の日記に「膝」が!!clubhouseで2021年5月31日から続いている、わたしの短編小説「膝枕」の朗読と二次創作のリレー(#膝枕リレー)のおかげで、「膝」という単語には反射的に反応してしまう。人呼んで「膝反射」。 古い日記の目次を眺めていたら「イランでは女性の膝の屈伸は卑猥です」というタイトルが目に留まり、膝がピクッと動いた。 日記の日付は2011年08月21日(日)。 13年前。ひ・ざ‼︎ 13という数字に歓喜する未来をまだ知らなかったその夏、大学時代か

        • 千回おめでとう

          今井雅子作「千回おめでとう」 動物たちが仲良く暮らす森のそばに チカちゃんという 人間の女の子が住んでいました。 チカちゃんは 森で遊んで大きくなったので 森の仲間はみんな チカちゃんの友だちでした。 チカちゃんには ふしぎなチカラがありました。 何も言わなくてもチカちゃんには みんなの気持ちがわかるのです。 うれしいときも 悲しいときも困ったときも チカちゃんはまるで自分のことのように よろこんだり嘆いたり悩んだりします。 そして その気持ちにふさわしい食べもので

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        • Clubhouseでの朗読どうぞ
          26本
        • 短編小説「膝枕」と派生作品
          233本
        • 「膝枕リレー」楽屋
          34本
        • noteでご紹介いただきました
          53本
        • 北浜東1丁目看板の読めないBAR
          22本
        • セリフ外国語版「膝枕」
          6本

        記事

          薔薇園の妖怪

          薔薇園の妖怪だったのと彼女は言った。 赤い薔薇だけを集めた庭を歩きながら。 薔薇園の妖怪? 薔薇の陰に隠れて泣いていたの。 植え込みの向こう側で聞いた人がいたかも。 誰かが撮った動画に声が入っていたかも。 声はすれども姿は見えない薔薇園の妖怪。 薔薇がきれいで泣いていたの? あの庭の薔薇がすばらしいのと 誘ってくれたのは彼女だった。 ううん。泣きたくて、ここに来てた。 どうしようもなく辛くなったとき、 うわーって泣いていたの。 春の短い間だけ開かれる薔薇園。 毎年、

          海と母と女

          2010年2月12日公開の映画『バレンタインデー』のパンフレット(劇場用プログラム)に寄せた「愛とは、ワタシってこと。」をnoteに公開している。 語るほどの恋バナのないわたしの何を見込んで、お声がかかったのかと記憶を掘り起こすと、その前に一本、恋愛映画のパンフへの寄稿を依頼されていた。 その映画は2008年9月 27日公開の『最後の初恋』。海辺のホテルで、妻であり母である女が、恋に落ちるという話で、このときは妻であり母であることを見込まれたのかもしれない。 原稿を依頼

          その間にコーヒーは冷めていく

          その間に原稿は冷めていく「一時間後に近くで用があるから、コーヒーでも飲んで時間を潰そうかな」 夫と出かけた帰り、乗り換え駅で夫が言った。 わたしは帰宅してやることがあったので時間潰しにつき合えなかったが、駅前のコーヒーショップまで一緒に行き、テーブルを見つけ、席に着いた夫に返却台はここねと椅子の背中側にある台を叩いて位置を伝え、カウンターへ注文に行った。 夫は緑内障で視野が少しずつ欠けている。視野検査で光をとらえている部分を表す白が陣取りのように黒に塗りつぶされていく。

          交通事故多発のため⬜︎が不足しております

          大学4年のことだったと思う。高校卒業まで住んでいた堺(大阪府堺市)の家に帰ると、リビングのテレビがついていた。 「交通事故多発のためホニャララが不足しています」 ん?とテレビに目をやると、月亭八方の番組だった。空欄のひと文字を当てるクイズが出されていた。 交通事故多発のため ⬜︎が不足しております。 ⬜︎の節約にご協力ください。 フリップボードが大写しになり、へ?と声が出た。 クイズになったその文言を知っていた。答えも知っていた。わたしが書いた標語だったからだ。

          交通事故多発のため⬜︎が不足しております

          印度象の印象度

          印度象の印象度日本語は面白い。 「象印」をひっくり返すと、「印象」。さらに、「印度象」を並べ替えると、「印象度」になる。 印度象が印象度になるエッセイを書いたことがあった。 NHK FMの土曜夜のオーディオドラマ番組、FMシアターで放送された『雪だるまの詩』が第26回放送文化基金賞のラジオ部門本賞を受賞し、授賞式をきっかけに事務局の方々と親しくなり、機関紙『わ』への寄稿を依頼された。 コピーライターをしながら脚本家デビューした頃で、職業柄、言葉遊びは大好き。極度の近視

          障害者か障がい者か障碍者か

          noteの下書きが142本になった。思いついたら下書きに放り込むのでタイトルだけのものや数行だけのものがほとんどだが、ほぼ出来上がっていて熟成中のものもある。そんな一つがこのnoteで、下書きの日付は2023年9月10日。7か月余り前。熟成を通り越し、もはや塩漬けになっている。 そんなところに石井健介さんのツイート(いまだに「X」「ポスト」と呼べず、青い鳥のいた頃を引きずっている)が目に留まった。 石井さんは、人生の半ばで突然視覚を失った。ある朝目覚めたらほぼ見えなくなっ

          虹を描くお仕事─ノアさんのおくりもの

          幼い頃の娘が、ある日言った。 「ママにあうまえ、おそらにいたの」 言葉を話し始めた頃にそういうことを言う子どもがいると聞いていた。胎内記憶なのか、空想なのか、頭の中にあることを言語化できるようになり、大人が口にしないような不思議なことを言うのだと。 「お空で何してたの?」 その日を楽しみにしていたわたしは、はやる気持ちを抑えて聞いた。すると、娘は言った。 「にじをかくおしごと」 恋ぞつもりてノア膝絵巻虹を 描く お仕事。 大人のわたしが逆立ちして頭をマヨネーズ絞

          虹を描くお仕事─ノアさんのおくりもの

          inclusiveは「風呂敷を開いた状態」を見つけた日

          エージェンシーやらレガシーやら「エージェンシー」というカタカナ言葉が流行っているらしい。セミナーやプレゼンなんかで連発されているらしい。 広告代理店(advertising agency)出身なので、エージェンシーと聞くと「代理店」と訳してしまうが、「若者のエージェンシーが高まる」にあてはめると、意味不明になる。若者の代理店は高まらない。 流行りのagencyは「主体性」という意味で使われているそうだ。 だったら主体性と言えば良いのではという気もするが、主体性とエージ

          inclusiveは「風呂敷を開いた状態」を見つけた日

          千日なんか続けたことある?─膝枕リレー1000日お祝いラップ「ヒザーズ」

          膝枕リレーが200日を迎えたとき、「受信箱入り娘が見た膝枕」を書いた。 300日、400日と節目節目でいろんな人が読んでくれ、それを聞くたびに幸せな物語だなと思う。「受信箱入り娘」である作品(=膝枕)と自分が一体化している。作品を見つけてもらえることは作者を見つけてもらえることなのだと感じる。 200日の4倍の時があれから流れ、間もなく2024年2月24日に膝枕リレーは1000日を迎える。 ひとつの物語から読み手と書き手と聞き手が育ち続けているさまは、「膝枕」の出発点に

          千日なんか続けたことある?─膝枕リレー1000日お祝いラップ「ヒザーズ」

          「ち」に飢えるさみしさ─ドラキュラと赤いチョコレート

          noteに眠ったままの100本を超える下書きのタイトルを見返した。 書きたいこと、書くべきこと。 書くべきでないこと。 公開のタイミングを逃したもの。 バレンタインデーが近くなったら公開しようと思っていた下書きを見つけた。 『ドラキュラとあかいチョコレート』の話。 娘が幼かった頃、保育園の発表会でドラキュラの話を演じた。血の好きなドラキュラに、「ち」のつくものや赤いものをうさぎたちが差し出す。瀬名恵子(せなけいこ)さんの絵本『ドラキュラーだぞ』を劇に仕立てていた。

          「ち」に飢えるさみしさ─ドラキュラと赤いチョコレート

          紛らわしくて燃えやすい─膝枕ナビコ「花火をぶち上げますか?」の巻

          このnoteで公開している作品は、2021年5月31日から朗読と二次創作のリレー(通称「膝枕リレー」)が続いている短編小説「膝枕」の派生作品で、外伝「膝枕ナビコ」シリーズの新作です。 夏に下書きに放り込んだまま冬に。季節感度外視で年の瀬に公開。公開後、ちょこちょこ手を加えてます。 今井雅子作「膝枕」外伝 膝枕ナビコ「花火をぶち上げますか」の巻N「ナビ搭載膝枕ナビコにお預けを食らい続けて1年13か月目の休日の朝。独り身で恋人もなく打ち込める趣味もないナビ主は、ナビコに膝枕し

          紛らわしくて燃えやすい─膝枕ナビコ「花火をぶち上げますか?」の巻

          「膝枕」に回文を入れ込む─回文家が読む膝枕

          このnoteで公開している作品は、2021年5月31日から朗読と二次創作のリレー(通称「膝枕リレー」)が続いている短編小説「膝枕」の派生作品です。 外伝、アレンジ、方言バージョン、外国語バージョン、ルビを振ったものなど加筆分量もさじ加減も作者もさまざまな派生作品たち。ただいま214作品。ヒマなのか、いや、ヒザなのだ。 回文家コジヤジコさんに膝枕営業コロナ禍に回文という楽しみを教えてくれた回文家のコジヤジコさんが回文の絵本『よるよ』を偕成社から出されるということで、日付が回

          「膝枕」に回文を入れ込む─回文家が読む膝枕