誰かが誰かのアシカになれたら
7月20日(土)、脚本を書いたFMシアター「アシカを待つあした」が放送された。
このnoteを書いているのは放送後。
でも、大丈夫。聴き逃し配信がある。
逃してしまった人も、もう一度聴きたい人も、らじるらじるでどうぞ。7/27(土)22:50まで。
聴き逃し配信がなかった頃は、聴けるチャンスは一回きりだった。今は何回でも聴いてもらえる。いい時代になった。
放送後、名作noteをたくさん書かれているかわい いねこさんが感想をつぶやかれているのを見つけた。
《誰かが誰かのアシカになれる明日が続いたら。そんな社会であって欲しい》
「誰かが誰かのアシカに」と「そんな社会」。この作品に込めたものを言い当ててもらえたように思った。
福井県で「命の防波堤」として活動されている茂幸雄さんに取材したことを膨らませて脚本を書いたが、茂さんがモデルのヒデさんがすべてを解決する話ではなく、誰かが誰かの支えになる話にしたかった。
自分なんて何もできない。
世の中なんて何もしてくれない。
ないないづくしの人生を「捨てたもんじゃない」と思えたら、うつむいて足元しか見えていなかった視線が上がり、目の前がひらける。息がしやすくなって、まわりの景色や音を感じられるようになる。
たった一言、たった一日、たった一人。ちょっとしたきっかけで光が見えてトンネルを抜けられることがある。
この感じ、どこかで……と記憶をたどり、4年前に書いたnoteを思い出した。
その言葉が誰かの「ひかり」になる。
2020年、コロナ禍が始まった頃の息苦しい日々に射し込む光のように届いた、うれしい報告のことを書いた。誰かを励ますことは励まされることだと教えてくれたのは、NHKのラジオドラマ脚本コンクールが縁で知り合った水上春さん。「アシカを待つあした」の主人公はハル。偶然だけど、つながってる。
誰かが誰かのアシカに。
誰かが誰かのひかりに。
このnoteのタイトル画像のために台本を撮影すると、偶然、光が挿し込む形になった。わたしのラジオドラマ脚本歴で初めて、台本の表紙にイラストが入っているのだが、カーテンの隙間から射し込む光がイラストにかかり、主人公を照らすスポットライトのようになった。
福井に呼ばれた
「嘘と餃子と設計図」以来のFMシアター。制作は福井放送局。地方局での制作は新潟局制作の「佐渡は居よいか住みよいか」以来。
お話をいただいた経緯は発売中の「月刊ドラマ」8月号の近況報告コーナー「ライター掲示板」に書いているが、
銀座にある福井県のアンテナショップ「ふくい291食の國」で地のりを買い、店を出たところでプロデューサーから電話があり、「福井のラジオドラマを書きませんか」。
ご縁を感じてスタートを切れる作品は、うまく行く。
ラジオドラマの豊かさ
最初の打ち合わせが3月、福井でのシナハン(シナリオハンティング)が4月。ひと月かけてプロットを練り、脚本に進んだ。ゴールデンウィーク明けに初稿。打ち合わせと改訂を重ね、ひと月かけて決定稿に。シナハン以外の打ち合わせはリモートだった。
リハーサルと収録は2日にわたって名古屋で。初回の打ち合わせから放送まで4か月近く。50分の作品にこれだけじっくり取り組めるのは、とても贅沢なことだと思う。
リハーサル前夜に大幅に加筆し、リハーサルを経て、さらに加筆。セリフ変更だけでなく、「屋内の設定を海に」など場所の変更もできるのは、ロケ地がないラジオドラマの強み。映像だったら予算やスケジュールの制約があり、直前の変更は難しいが、ラジオドラマは効果音のつけ方で解決できる。
音だけで「ここがどこか」わからせるのは、脚本の自由度を上げてくれると同時に縛りにもなる。「音だけでわからせる」ことができないと、オーディエンスを置いてけぼりにしてしまうからだ。収録中も課題が見つかってはアイデアを出し合った。収録もほぼ順録り(脚本のシーンの順番通り)でライブ感があった。
出演者の皆さんについてもご紹介したいですが、聴き逃し配信後になってしまうといけないので、取り急ぎnoteを公開します。聴いてください!
放送前にclubhouseで開いた告知ルームのreplayも残してます。
7月27日公開、こちらのnoteも。
◯◯◯を待つ◯◯◯
放送の日の昼、ふくい291で買ってきた地のりと梅干しときゅうりで冷や汁にした。
冷や汁と言えば宮崎。
宮崎市にあるストリートピアノの前で半日過ごしてシナハンし、「きみを待つピアノ」を書かせてもらったのも贅沢だった。
と思い出して、気がついた。
「きみを待つピアノ」
「アシカを待つあした」
タイトル、似てる。
ラジオドラマは「待つ」話が似合うのかもしれない。
ちなみに「アシカを待つあした」を「あしたを待つアシカ」と間違えがち。「アシカを待つあした」は「あしたを待つアシカ」でもある。韻を踏んでる「アシカ」と「あした」の話。
これまで書いたラジオドラマ
すべてNHK。作品詳細は追って完成させます!
「放送ライブラリー収蔵作品」とあるものは、横浜にある放送ライブラリーにて聴くことができます。
FMシアター
「タカラジマ」
札幌局制作
1999年7月10日放送
「雪だるまの詩」
札幌局制作
1999年12月11日放送
平成10年度札幌局オーディオドラマ脚本募集入選作
第26回放送文化基金賞ラジオ部門本賞受賞
放送ライブラリー収蔵作品
「夢の波間」
2003年6月14日
出演:柳生博 水原英子 上杉祥三 山野史人
音楽:大河内元規
演出:保科義久
技術:金子泰三
音響効果:久保光男
「昭和八十年のラヂオ少年」
2005年3月19日放送
出演:内山昂輝 田谷隼 加藤武 二木てるみ
増子倭文江 林次樹
音楽:中村勝彦
演出:保科義久
技術:糸林薫
音響効果:西ノ宮金之助
「友子とモコ」
札幌局制作
2009年9月26日放送
第46回ギャラクシー賞奨励賞
放送ライブラリー収蔵作品
出演:奈々葉 木藤玲子 斎藤和子 山野久治 岩尾亮 谷崎尚之 宮田碧 岡田雅夫 中野英一 磯川博
演出:家冨未央
技術:宗片将樹
音響効果:三村俊之
「金魚鉢の教室」
(再)2012年10月20日
平成24年度文化庁芸術祭参加作品
放送ライブラリー収蔵作品
出演:石村みか 磯部勉 西山水木 亀田佳明 大内厚雄 田中雄土 戎怜菜
音楽:小林洋平
演出:藤井靖
技術:小林健一
音響効果:岩崎進
「マー子さん」
2013年11月2日放送
〜大阪下町のスーパーを舞台に、世代を超えた女性たちの人生が交錯〜
原作:柳霧津子
出演:原田樹里 三田和代 徳井優 辻本祐樹 山像かおり 勝平ともこ 枝元萌
音楽:山下康介
演出:藤井靖
技術:若林政人
音響効果:佐々木敦夫
「父の代理人」
平成26年度文化庁芸術祭参加作品
放送ライブラリー収蔵作品
「静かな生活」
2015年
平成27年度文化庁芸術祭参加作品
放送ライブラリー収蔵作品
「きみを待つピアノ」
宮崎局制作
2017年1月28日放送
出演:水崎綾女 蕨野友也 渡邉このみ ほか
音楽:窪田ミナ
制作統括:城光一
技術:赤木隆司
音響効果:佐藤あい
演出:小林直毅
「さくら、ねこ、でんしゃ」
2017年9月30日放送
~何を忘れているのか、それさえも思い出せない時が来ても。~
原作:のらいしれんふう
出演:大林隆介 末次美沙緒 はざまみゆき 佐藤誓 伊原農 照井健仁 枝元萌
音楽:森悠也
演出:藤井靖 技術:坂本英史 音響効果:伊東珠里
「佐渡は居よいか住みよいか」
新潟局制作
2019年1月12日放送
出演:山田愛奈 大渕野々花 鈴木壮麻 石井麗子 岡﨑加奈 加茂智里 金原亜紀 若杉凩 大脇柊馬 佐々木省三 山崎智彦 小野瀬隆 小川俊子
制作統括:長野圭吾
技術:品田龍摩
音響効果:石川恭男
演出:川越めぐみ
「嘘と餃子と設計図」
2022年4月23日放送
~お父さん。餃子、一個一個積み上げて行こ。~
出演: 野々すみ花 山西惇 みやなおこ 上口耕平 原田樹里 野坂弘
音楽: 菅野由弘
技術:今井雄基
音響効果:加藤直正
制作統括と演出:藤井靖
青春アドベンチャー
「不思議屋旅行代理店」
第1話 ランゲルハンス島の謎
第10話 過去に架ける虹
「アクアリウムの夜」(全10回)
脚色
「びりっかすの神さま」(全5回)
脚色
「走れ歌鉄!」(全10回)
2016年
「きりしたん算用記」(全5回)
2017年 脚色
「世界から歌が消える前に」(全5回)
いっちゃがラジオ(宮崎放送局制作の県域番組)
「さすらい駅わすれもの室 センセイという名の鳥」
2005年11月
県内在住の役者・濱﨑けい子さんが朗読
「さすらい駅わすれもの室 とくべつな地図」
2005年12月
地元の高校の演劇部員が上演
目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。