脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー)

言葉遊びが好きな物書き。clubhouseでの朗読どうぞ作品の他メディアでの使用につい…

脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー)

言葉遊びが好きな物書き。clubhouseでの朗読どうぞ作品の他メディアでの使用についてはご相談ください。 https://lit.link/masakoimai

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最近の記事

パンひとつの値打ちもない芸

「今日すごくショックなことがあって」 バルの隣の席で彼女が切り出した。 「午前中、イベントに呼ばれて紙芝居をしてきたんですけど、投げ銭がたった310円で」 彼女はプロの紙芝居師だ。 ハロウィンが近いので、カボチャ大王が出てくるオリジナル紙芝居をやった。カボチャ大王に送り込まれたモンスターをみんなで声を合わせてやっつけた。盛り上がった。期待した。ところが、カボチャ色のバケツに入れられた投げ銭は、10円が1枚と50円玉が2枚と百円玉が2枚だけだった。あわせて310円。

    • 喫茶「ト書き」のメニューを妄想してみる

      この夏、日本劇作家協会の会員になった。 会報の名前は「ト書き」という。 ト書きとは。 ✔︎脚本は「柱」「セリフ」「ト書き」からなっている ✔︎柱はカメラの位置と照明を指定。セリフは役者がしゃべること(息や表情を指定することも)。それ以外がト書き。 とわたしの脚本講座では教えているが、戯曲では柱を立てずに「ト書き」の中で場所や時間帯を指定するのが一般的なようだ。 歌舞伎台本で《ト義経立ち上がり》のように役者の動きを指定することから、「ト書き」の名がついたらしい。 「

      • 戯曲デジタルアーカイブは宝の山

        戯曲アーカイブとは「戯曲デジタルアーカイブ」を知ったのは2023年だった。 2022年末から2023年の始めにかけて、育成×手話×芸術プログラムのろう・難聴者向け「脚本創作塾」の講師を務めた。その縁で、同じ主催者によるデフアクター養成講座の修了公演を見せてもらった。そのとき事前に「こちらで上演作品の戯曲を読めます」と案内があった。  劇作家名や戯曲名、上演時間、上演人数などで目当ての戯曲を探せる。 あの人の戯曲が読める! 舞台を見たあの作品の戯曲がある! そこは何百

        • トンカツ殺人事件

          「事件現場に刑事が駆けつけると、玄関にトンカツが置いてあった」 凶器はトンカツある日、弁当屋の店先で「激安コッロケ」のPOPを見かけた。 「コロッケ」と脳内補正して意味は取れるが、コロッケのほうがカラッとしておいしそうだ。 SNSでそのことをつぶやくと、「天然うぎな」という看板を見たという書き込みがあった。 開放感のある「な」が濁音の「ぎ」と入れ替わると、活きが悪そうになる。高級感も薄まる気がする。   「うぎな」に呼ばれて、さらなる反応があった。「うさぎ」という名の

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        • noteでご紹介いただきました
          56本
        • 短編小説「膝枕」と派生作品
          242本
        • 日本語という天才と遊ぶ
          32本
        • 知って欲しいこの人のこと
          16本
        • こんなことしてます脚本家
          15本
        • 「膝枕リレー」楽屋
          39本

        記事

          お母さん、ぼくトウダイに行く!

          noteで「今日のあなたに」と入試関係のnoteをおすすめされるようになった。 受験noteってこんなにあったっけ。 増えたのか? 今まで知らなかっただけなのか? 特に東大受験についてのnoteを勧められる。 東大受験noteってこんなにあったっけ。 増えたのか? 今まで知らなかっただけなのか? それとも、このnoteを書いたから? 去年東大で行われた七大戦での応援団演舞演奏会のことを書いたnote。長らく塩漬けにしていて、公開したのが今年の春だった。 トウダイを

          「うんざりがに」を流行らせたい

          「うんざりがに」という言葉を流行らせようとしているが、どうも流行りそうにない。と嘆いたのは2003年のことだった。「うんざりがに普及運動」と題した9月1日の日記の中で。 うんざりがに普及運動きっかけは、猛暑とわたしの弾丸トークのたたみかけに参った21年前の夫が、「もう、うんざりがに!」と悲鳴を上げたこと。 当時夫はオクラを「オクラホマミキサー」、ミョウガを「ミョウガン君」(という同級生がいたらしい)などと呼んでいたので、そのノリでダジャレが飛び出したのだろう。 「うんざ

          もじもじ回文

          放り込むスピードに出すスピードが追いつかず、noteの下書きが189になった。毎日ひとつずつ公開しても半年かかる。 いちばん出口に近いものはどれだろうと探したら、「もじもじ回文」というタイトルが。ひらがなの文字を読み込んだ回文をポストカードっぽくしてみたもの。回文家コジヤジコさんの何かのツイートを見て真似したのか思い立ったのか、ある日Twitterで立て続けに上げた覚えがある。一日だけのおたわむれ。 かわいいわ、「か」ななめな「な」かなりむりな「か」いろいろくろいろ「い」

          想像力という酵母が働くとき

          17年前のメソポタ「想像力という酵母が働くとき」というタイトルの日記を掘り起こした。日付は2007年6月12日となっている。17年前のその日は火曜日だった。 以下、その日記をnoteに転載する。「数日前に言われた言葉」が何だったか覚えていないし、「メソポタ」もこのとき以来使っていなくて忘れていたし、パンもしばらく焼いていない。 ✏︎         ✏︎        ✏︎        ✏︎        ✏︎        ✏︎        ✏︎ 茨城のり子さんの

          シナトレ5 セリフは道で拾う

          不定期に書いているシナリオ・トレーニング、略してシナトレ。前回はこちら。 頭かしっぽか真ん中か電車に乗る代わりに、ひと駅歩いていたときのこと。 買い物用のコロコロを引いた年配らしき女性が前を歩いていた。 と、わたしの脇をかすめてコロコロの女性に駆け寄る人影があった。女性の前に回り込んだその人も女性だった。歳の頃は60代前半といったところか。 「どこかでお会いしたこと……」 追いついた女性がコロコロの女性に言った。走って息が上がっているせいか、ハキハキと聞こえた。

          安く見られちゃ困るけど気前良くは見られたい

          あるアマチュアテキスタイル作家の軌跡を辿る回顧展について書いたひとつ前のnote「色とりどりの糸の下で─大住正子回顧展」の中で「アマチュアとプロの線引き」に触れた。 これまでのnoteでも度々取り上げている「どこからがプロなのか」。そう言えば、このテーマで下書きに熟成させていたnoteがあった。 フリーランスのフリーって無料のことだと思われてる?という話。 フリーランスの相場仕事のオファーが来て、お金の話になるたびに思う。 こんなとき、マネージャーがいてくれたら。

          安く見られちゃ困るけど気前良くは見られたい

          色とりどりの糸の下で─大住正子回顧展

          記事の最後に回顧展(9.29まで)の案内があります。興味を持たれた方、ぜひ訪ねてみてください。 階段デザイナーのアトリエの名は"matelier"「階段デザイナーです」 初めて会った日、同郷のその人は言った。 「階段デザイナーってお仕事があるのですね」とわたしが言うと、 「そう名乗っているんです」とその人は言った。 「カイダンデザイナー」と音で聞いたとき、「怪談デザイナー?」と早合点し、怪談作家ではなく怪談デザイナーと名乗るのは新しいなと思ったら、カイダン違いだった。

          色とりどりの糸の下で─大住正子回顧展

          ダリみたいなタッパーに需要はあるだろうか

          「みんなのフォトギャラリー」で需要がありそうな写真をカメラロールから見繕って上げるシリーズ。「枝豆に需要はあるだろうか」「同じのいっぱいに需要はあるだろうか」「紙魚に食べられた紙に需要はあるだろうか」 に続いて、第4弾。 虫食いだらけのメモの写真が使われましたという通知が早速2件届いた。 需要、あるみたい。 気を良くして、ライバルが少なそうなレアな写真を探してみる。 これ、どうだろう。 原型が何だかわからないほど崩れているが、元はタッパーだった。フタをしたままチンで

          ダリみたいなタッパーに需要はあるだろうか

          紙魚に食べられた紙に需要はあるだろうか

          「みんなのフォトギャラリー」で需要がありそうな写真をカメラロールから見繕って上げるシリーズ。「枝豆に需要はあるだろうか」「同じのいっぱいに需要はあるだろうか」に続いて、第3弾。 今回は「これは持っている人少ないのでは?」なレアな写真を。 パッと見て、何だかわからない人が多いことにわたしが驚く。 パンチャーで穴を開けたようにも見えるらしい。 「紙魚に食べられたんです」と言っても 「シミ?」とキョトンとされる。 紙の魚と書いて、紙魚。 小さくて、クネクネ動いて、すばし

          紙魚に食べられた紙に需要はあるだろうか

          柳生博さんと「Happiness is......」

          先月放送されたFMシアター「アシカを待つあした」。ラジオドラマと海からの連想で、随分前に作ったFMシアター「夢の波間」のことを思い出していた。 古文書からラジオドラマ放送は2003年6月14日。21年前だ。 大阪に帰省した折、母と話していて思いついた話だ。 古文書(こもんじょ)の研究会に入っていた母が取り組んでいたのが、廻船問屋(海運会社と商社がひとつになったようなもの)の記録だった。 「何月何日に何をどんだけ積んだ船がどこへ向かったか、きっちり記録してあるねん」

          「おかあさんのことをスタッフだとおもえ」と神様に言われている

          「『おかあさんのことをスタッフだとおもえ』とかみさまにいわれている」と娘が言ったのは、小学2年生の春のことだった。 日記によると、わたしの物言いが気に入らなかったらしい。何と言ったかは記していないが、お風呂上がりの出来事だったと書いてある。「早く服を着ないと風邪引くよ」とでも言ったのだろうか。 「そんなこというの、あずかってるこどもにしつれいだよ」 と娘が言い返し、面食らった。 「預かってる子に失礼」とは⁉︎ 「預かってる子じゃなくて、うちの子でしょ」 と、こちらも言

          「おかあさんのことをスタッフだとおもえ」と神様に言われている

          メイク・ア・ウィッシュの大野さん

          「メイク・ア・ウィッシュの大野さん」の名前を立て続けに見た。 1回目は週刊文春で。 2回目は朝日新聞で。 名前を目にした瞬間、「メイク・ア・ウィッシュの大野さん!」と驚きと懐かしさで声が出た。 「メイク・ア・ウィッシュ  オブ  ジャパン(Make a Wish of Japan)の大野寿子さん」とは小さなご縁がある。 アンパンマンとピカチュウとウルトラマンとハム太郎とドラえもんわたしが勤めていた広告代理店マッキャン・エリクソンがメイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパ

          メイク・ア・ウィッシュの大野さん